新たな注力市場スマートフォン広告
Googleが現在、最も注力している領域の一つが、モバイル、特にスマートフォン広告市場である。
同社のモバイルへの取り組みとして、真っ先に挙げられるのは2007年に公表された「Android」の開発だ。Androidは複合的な要素が多いため、一概に言うのは難しいが、少なくともスマートフォン端末の普及をiPhoneと並んで後押しして、モバイルからのインターネットアクセスを世界的に増加させることに貢献し、その広告としての価値を高めたことは間違いないだろう。
また、同社は2009年末に世界最大級のモバイルアドネットワーク「AdMob」の買収を公表した。これにより、モバイルインターネット広告、そしてアプリケーション内広告どちらにおいても、大きなアドバンテージを手に入れることに成功した。
スマートフォン広告は、ユーザーの新たなメディア接触時間の創出という面だけでなく、飲食店や小売店など地域に根差したビジネスを行っている広告主の獲得という面でも大きな意味を持つだろう。外出先での情報収集などスマートフォンならではの特性は、今までインターネット広告と縁遠かった企業にとっても、集客などの機会創出が見込める広告手段となり相性が良いと考えられる。昨年末、GoogleによるGroupon買収の噂が報道されるなど、同社にとって地域広告市場は現在、開拓を進めている注力領域のようだ。
さらに、Googleは現在、NFC(Near-Field Communication:近距離無線通信)技術を利用した事業に着手したとも報道されている。NFCチップを搭載したスマートフォンによる決済を可能にし、それが端末として普及することで、インターネットとリアル店舗を決済によって結びつけ、そこに新しい広告モデルを作り出すことが期待される。
米国での報道によると同社のモバイル広告収入は、直近で全体の1割にも及ばない水準であるとのことだが、今後のこの領域で中長期的な成長を継続するために必要な準備は整ったと言えるだろう。
Googleのビジネスの本質は「情報流通」と「広告流通」
ここまでGoogleの広告ビジネスをざっと振り返ってきた。今さら言うまでもないが、Googleのビジネスは、「情報流通と広告流通」という言葉に集約されるのであろう。
Googleのサービスは、検索サービスを筆頭に、Android Marketにおけるコンテンツプラットフォームビジネス、Google Editionによる電子書籍ビジネスなど、その切り口は異なれども、いずれも情報(≒コンテンツ)の流通を活性化させ、それと同時に広告流通を活性化させるという役割をこれまで果たしてきたように見える。
Googleのサービスは今後もより多様化していくだろう。そのため、特定のサービスを取り上げても、そのビジネスモデルが一見どのようなものかが見えにくくなることもありうる。だが、その本質はこれまでも、そして今後も変わらないのであろう。
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