顧客育成の視点を忘れてはいけない
前回までの内容では、「数値によりビジネス構造を見える化する」「KPIを設定し、PDCAサイクルを構築する」ことが、Data Driven Marketing(データドリブンマーケティング:データをもとにPDCAサイクルを高速回転させ、マーケティングROI最大化を実現するマーケティング手法)を行う上で、最も重要であることを説明してきました。
また、それを踏まえた上で「A/Bテスト」や「行動観察型アクセス解析」などによりサイト内における顧客の行動を把握し、売場・導線・表現・コンテンツ構成などの最適化を図って、コンバージョン率を向上させるなどの手法の紹介をしました。
では、以上の内容を徹底すれば売上増加やROIの向上が図れるのかというと、これだけでは不十分です。なぜなら、店舗を運営する上で最も重要な「顧客を育成する(リピーターを増やす)」ということが不足しているからです。
特にECサイト運営者の傾向として、集客施策や売場の最適化、または特集の実施など「集めて回遊させ、購入に導く」ことに注力し過ぎて、「顧客を育成する(リピーターを増やす)」ことに対する取り組みが、疎かになっているケースが多く見られます。
その結果、いろいろな施策を行っているものの売上が上がらない、ROIが向上しないといった状態に陥っているECサイトが増えてきています。従って、今回は顧客育成の必要性や手法についてお伝えします。
顧客育成に対する必要性が高まっている
ECサイトの顧客分析を行った際に最も多いパターンは、全顧客のうちリピート購入している顧客は2割程度にとどまり、残りの8割は1回しか購入していない顧客が占め、更にその大半の顧客が休眠化(1年以上購入がない状態)してしまっている状態です。
集客コストを投下し、新規客を獲得したにも関わらず8割の顧客が1回きりの購入で終わってしまっては余程単価の高い商品や利益率の高い商品を扱っていない限り、ROIの視点では決して良い状態とは言えません。
さらに、リピート客が少ない状態が続くと売上を維持するために、新規顧客獲得のためのコストを常に投下する状態となります。しかし、仮にこの方法で売上を維持できたとしても、顧客1人あたりの利益が向上しないために、ROIが一向に改善されないという悪循環に陥ります。
従って、1回購入していただいた顧客に2回、3回とリピート購入をしてもらい、顧客1人あたりの購入金額UPを目指すことが重要となります。
また、最近はECサイトの機能面は標準化の傾向にあります。商品検索(絞り込み)、商品一覧ページ、商品詳細ページ、決済フローや会員登録フローなどにおいて、機能不足やユーザビリティの悪さによって購入しづらいというサイトは減少傾向にあります。
つまり、サイト内での購入を阻害するような大きな課題は減少し、それに伴いサイト内改善がもたらす効果のインパクトも小さくなってきている状況と言えるでしょう。
以上の傾向から、今後ECサイト運営者は集客施策やユーザビリティ向上などの「集めて回遊させる」ことで、売上増加やROI向上を目指すだけでは足りません。
1回購入していただいた顧客に「2回、3回とリピート購入してもらう」、つまり顧客育成につながるKPIの設定(現状把握含む)と、育成施策が不可欠になってくるでしょう。