マーケターが知りたいのは「その施策はどれだけの売上をもたらしたのか」
MarkeZine編集部(以下、MZ):先日あるマーケターの方とお会いしたのですが、その方が「今、注目しているキーワードはマーケティングプラットフォーム」とおっしゃっていました。その言葉を聞いて、今年3月のMarkeZine Dayで、「CPA至上主義からの脱却」というテーマでのフロムスクラッチさんの講演を思い出しました。今回は改めて、プライベートマーケティングプラットフォームの概念と、その具体像である「B→Dash」について教えていただきたいと思っています。
安部:この分野はキーワードがたくさんあって難しいですよね(苦笑)。そもそも「マーケティング」という用語自体、ソリューションベンダーが自社の製品に合わせて定義しているので、そこに注意を払う必要があるんです。たとえば、昨年から注目度が高まっている「マーケティングオートメーション」という言葉ですが、このキーワードを標ぼうしているベンダーの製品を見ると、マーケティング業務の一部を「マーケティング」としているんですよ。よくあるのが、「見込み顧客を集め、確度の高いリードを営業に渡す」ことをマーケティングと定義しているケースですね。これに対し、当社の「マーケティング」は広義のマーケティングです。
MZ:具体的には?
安部:マーケターが最も知りたいのは、「どの施策が収益につながっているか」を把握することです。3月のイベントでもお話ししましたが、マーケティング施策の金銭的な部分でいえば、多くのマーケターはCPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)を指標としています。しかし、それぞれの施策が売上や収益にどれだけ貢献したのか、ひいては各施策がどれだけの収益をもたらしたのか、それを把握することは困難です。
弊社が語るマーケティングプラットフォームとは、「アドの選定やリサーチなど施策の入り口部分から、各施策のアトリビューションを明らかにし、最終的なLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)や顧客管理まですべてを1つのプラットフォーム上でオートメーション化するもの」です。マーケターは、マーケティング施策の漠然とした“効果”ではなく、はっきりと売上に直結する施策を知りたい。そうすれば、「このリスティングキーワードにもっと投資をしよう」「この広告は止めよう」などの戦略が立てられます。
MZ:施策の貢献度について、LTVまで含めた形で把握できたら、マーケターの仕事は大きく変わりますね。
安部:そうなんです。しかし多くのマーケターは、売上や収益との相関関係を割り出すために、作業員になっているんですよね。本末転倒です。
プライベートマーケティングプラットフォーム:集客施策から販売促進、顧客管理までデータを一気通貫で一元管理し、それぞれの施策の収益インパクトを可視化するもの。また、「マーケティングオートメーション」「コンテンツマーケティング」「リードナーチャリング」「コンテンツレコメンド」等、マーケターが求めるマーケティングテクノロジー全てをAll in oneで実現するプラットフォーム。マーケティングにおける次の一手の再投資効率を最大化させるマーケティングテクノロジーツール「B→Dash」についての詳細は次回の記事で解説する。
「プライベートマーケティングプラットフォーム」とは
MZ:たとえば、個々のマーケティングツールやCRMなどを連携することで、顧客ごとのキャンペーンの反応やコンバージョン、売上額などを把握することは可能だと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
安部:実際、そういう製品も多いですよね。マーケティング領域に進出してきた大手ITベンダーでさえ、自社製品を補完する他社のソリューションを買収して連携させ、「マーケティングプラットフォーム」といっています。しかし、そもそも「All in oneソリューションとして運用する」という前提で設計されていないため、運用段階になると、なかなか現場になじみにくいんですよ。それに、そもそも他のツール同士を連携させているため、時間や工数、手間はもちろん、コストも膨れ上がります。
一方、当社の「B→Dash」は、初めからAll in oneソリューションで設計されているため、運用しやすく使い勝手もいい。同一プラットフォームでマーケターがやりたいことすべてが完結し、あちこちのマーケティングツールからデータを寄せ集める必要もありません。しかも、経営層やマーケター、現場担当者など、使う人の役職や役割によって、リテラシーも異なれば、見たいデータが異なるのは当然、と考えて設計していますので、あらゆる人にとって最も見やすく分かりやすいUIにカスタマイズできる利便性も備えています。それ故に企業・ユーザーの個別のニーズにも対応できます。だからこそ、B→Dashは「プライベート」マーケティングプラットフォームと位置付けているわけです。
独立した1つのツールで、集客データからLTVデータまでを一気通貫して管理でき、なおかつ「マーケティングオートメーション」「コンテンツマーケティング」「リードナーチャリング」「コンテンツレコメンド」等、マーケターが求めるマーケティングテクノロジー全てをAll in oneで実現できるマーケティングプラットフォームは、今のところ、プライベートマーケティングプラットフォーム「B→Dash」だけです。
なぜ今までマーケティングプラットフォームがなかったのか
MZ:おっしゃるとおり、マーケターも施策や広告のCPAだけでなく、本当は売上や収益にどれだけ貢献したかを知りたいと思います。ではなぜ、これまでB→Dashのようなソリューションがなかったのでしょうか。
安部:2つ理由があります。1つは業界の軋轢(あつれき)、1つは技術的な問題です。前者について簡単に説明すれば、広告代理店にとっては、あくまでCPAという指標でお茶を濁していた方が都合がいいからです(苦笑)。大手広告代理店やデジタルエージェンシーは、売上/LTVとCPAの相関関係が明らかになれば面白くないと思いますよ。今まではCPAをいかに低減できるかで運用していたものが、それが実際にどれだけの売上につながったのかが明らかになるわけですから。
そして、なぜ今までB→Dashのようなソリューションがなかったかといえば、実はこうしたプラットフォームを開発するのは技術的に大変難しいからです。これが後者の理由です。先ほど、大手ソリューションベンダーでも、プラットフォームを開発するために買収を重ねてきたという話をしましたが、こうしたAll in oneソリューションを開発するのは非常に大変なんです。売上データ、顧客ごとのLTVデータ、それに集客用ツールのデータ、販促管理データなどを1つのプラットフォームで自在に扱うのは、現在でも技術力が必要なんです。
「すべてのデータの相関関係が見たい」の一言から始まった
MZ:とすると、どのような経緯でB→Dashを開発なさったんでしょうか?
安部:もともと当社は、マーケティンングコンサルティング業を営んでいたんです。マーケティング活動の“上流”にあたる戦略立案から“下流”の施策実行までを支援していました。中立的な立場で現場をマネジメントする専門家、マーケティング領域の顧問の様なイメージが近いかもしれませんが、その様な存在がいない。クライアントもよく分からないので、年度末になると予算消化でリスティング広告に投資するケースも多いんですね。するとCPAが軒並み上がる。代理店は「この時期だから、どこのCPAも上がっています」というのですが、しかしよく見ると「A社は5,000円上がっているけど、B社は2,000円しか上がっていない」など、差は絶対あるんですよね。
当社のコンサルテーションは、現場を分析して課題を抽出し、商談単価などを設定し、その上でリピート顧客を増やすプロセスの戦略を立て、ターゲティングやメッセージを決めていくというもので、その上でどこの代理店にするかを決めるというものです。そうした中、あるクライアントさんからびっくりする依頼が来たんですよ。
MZ:どのような?
安部:そのクライアントさんは、大手企業の分析ツールを利用してWeb分析や顧客管理を行っていました。ある時、クライアントさんが「これらのデータを全部つなげて、アトリビューションやラストコンバージョン、LTV、CPOすべての相関関係を見たい」と言われたんです。こちらも、そのお客さんが何を求めているか理解したので、「早速、出します!」と請け負ったのですが、これがいけなかった(苦笑)。絶対、何かツールがあるはずだと思ったのですが、世界中探してもなかったんです。サイトカタリストとセールスフォースのデータを追跡して追うだけでも大変で、あの時のプロジェクトマネージャーにとっては地獄の日々だったのではないでしょうか。そこで、作業を少しでも楽にするために、自社でツールを開発するしかありませんでした。こうして誕生したのがB→Dashです。
MZ:ということは、市場に出すために開発した製品ではなく、もともとは社内向けだったんですね。
安部:社内の作業を楽にするために生まれたのは確かですが、そもそもはクライアントさんが「CPAで測るコスト効率ではなく、最終的なROIをリアルタイムで見たい」と言ったことがきっかけです。これは究極のニーズありきのソリューション開発ですよね。おかげでB→Dashは、いわゆる「マーケティングプラットフォーム」と呼ばれるソリューションの中で、導入社数がぐんぐん伸びています。先に述べたように、独立した1つのツールで集客データからLTVデータまでを一気通貫して管理でき、マーケターが求めるマーケティングテクノロジー全てをAll in oneで実現できるマーケティングプラットフォームはB→Dashだけなので、このような市場の反応は当然とも言えるかもしれません。
B→Dashがはまる企業、はまらない企業
MZ:導入先について、何か傾向はありますか。たとえばBtoC/BtoBで違いはあるのでしょうか。
安部:どんな業種・業態でも、マーケティングに取り組む企業様であれば全て導入先として、当てはまります。例えて言うなら、減量を目的に行うダイエットにおいて、「ジムトレーニング」や「サプリメント」等の取り組みによる体重変化を測る為に、体重計が必須なのと同じで、「SEO」「リスティング広告」や「メールマーケティング」等のマーケティング施策による収益変化を測る為に、B→Dashは必須なのです。
その上であえて分けるとすれば、業種を「Web to Web」「Web to Real」に分けています。「Web to Web」はWebでビジネスが完結するような業種、たとえばECなどがこれに当たります。「Web to Real」は、Webで集客し、そのお客さんが来店することで売上が発生するような業種。クリニックや社会人向け教室、人材紹介、エステなどがこれに相当します。さらに、その中で「単発商品」か「リピート商品」かで分けている。そしてこれでいうと、「Web to Webで、かつ単発商品」というのは、実はB→Dashとの相性があまり良くないんです。
MZ:その理由は何でしょう?
安部:単発商品なので、1度しか売れない。つまり「CPA=CPO(Cost Per Order)」なんです。通常、顧客一人を獲得するためにいろいろな施策を打つので、最初のCPAは高くなりますよね。単発商品だとリピート買いが見込めないため、最初のCPAが一向に下がりません。それにそういうタイプの商品は、たとえば不動産や車、高級家電品など高額商品が多く、LTVもそれ以上伸びないためです。
MZ:逆に、相性のいいビジネスモデルはありますか?
安部:「Web to Web」でいえば、通販化粧品などは相性がいいですね。最初の集客で無料や格安でサンプル品を配布し、そこからリピートにつなげていく。そのためには、「何回リピートすれば収益増の分岐点になるのか」「3回購入したユーザーと、6回購入したユーザーの違いはあるか」などを分析し、リピーターが何をきっかけに購買したのかを把握することで、リピート顧客の割合を増やしていくことができます。
また、「Web to Real」のビジネスモデルとは相性抜群です。その理由は、「Web to Real」の場合、Webとリアル店舗でデータが分断されているケースがほとんどなので、広告施策と最終売上の相関関係が分かりづらいからです。そこを可視化することで、どの施策の何に反応したのかが分かるようになる。こうして無駄な投資を防ぎ、売上向上につながる顧客を効率的に集客できるわけです。
マーケターは「作業員」から脱却できるか
MZ:先ほど、マーケティングプラットフォームはマーケターを「作業員」から脱却する、ということを話されましたが、本当に脱却できるのでしょうか。ツールがあっても、変わるのは難しいのではないでしょうか。
安部:そうですね、変わるためにはマーケター自身の努力が非常に重要になります。というのは、B→Dashの導入により、マーケターの業務が“無くなる”わけではなく、業務の“中身が変わる”、ということであり、その上でマーケティングの成否はマーケターの皆さんにかかっている、という意味なのです。具体的に言うと、これまでの非生産的な業務、例えば「定例報告の為だけの集計作業」や、「収益とのつながりが不明瞭な、ベンダーや広告代理店からの成果報告ミーティング」等が、「経営陣との戦略ミーティング」や「戦略を実行に落としこむ為のディスカッション」等、収益を生み出していく為に、マーケターが“本来やるべき業務”へと変わります。
そういった意味で、顧客を勝ち取り、競合を駆逐できるか否かは、優れた戦略の立案や遂行が出来るか否かにかかっており、それがマーケターの皆さんのミッションなのです。ただその中で、マーケティングプラットフォームが世の中に急速に普及している近年、きちんと運用に乗らなければ意味がないと考えています。ですので、我々は専任のコンサルタントを置き、導入/運用支援にも力を入れています。
また、この様な話は時代の必然だとも思っています。これから10年後、20年後には、いま人間がやっている仕事の大半が、機械に奪われてしまうといわれていますが、データを集める、CPAを割り出すなどは、真っ先に奪われるでしょう。でも、確実に人間がやらなくてはならない仕事は残ります。広告施策をROIという根本から評価し、その上でさらに効果を出す施策を考えていくのがマーケターであり、それを手伝うために広告代理店がいるのですから。
MZ:これからのマーケターの役割はどう変わっていくのでしょうか。
安部:残念ながら、日本はマーケティング後進国です。CMOの割合も、米国が47%なのに対し、日本は4%です。アップル社などは、まさにマーケティングの会社でしょう。部品は日本から調達していますが、それを組み合わせて「かっこいい」というデザインの製品を作る。で、その「かっこいい」を決めるのは市場の消費者です。つまり消費者の嗜好やニーズを把握し、それに合わせて商品の開発・デザインを行っているんです。今はモノが売れない時代といわれていますが、その中で、多様化する消費者の購買モチベーションを的確につかむキャッチアップの能力が求められています。マーケターの役割は今後、よりそちらに向けられると思います。
MZ:ありがとうございました。プライベートマーケティングプラットフォームのB→Dashについての詳細は、次回の記事で紹介していきます。