MMMは正解ではなく、意思決定の材料
佐藤氏:弊社には年に1回とか四半期に1回とかいったペースで、定期的にMMMの分析を依頼されるクライアントがいます。
ですが、その結果からガラッと予算などを変えるとなると、部署の壁などがあって難しい。というのも、各施策の効果を可視化するわけですから、部署間で成果の取り合いが起こる可能性もあるわけです。こういった場合に、第三者的な立場で提案ができる広告代理店が必要とされる面もあると思っているのですが、MMMの活用について、この辺はどうするべきだとお考えですか?
小川氏:そうですね。「MMMを実施しました、そこから割り出された予算の最適値を忠実に再現したことによって、売上が2倍になりました」という事例を聞きたいと思われるかたは多いです。ですが、実際はそのような例はなかなか見られません。どちらかというと、MMMの結果を見て、広告投資分配の細かな調整をする段階だと思います。
例えば、媒体Aに1億使っていたが、理論上は1000万が正解ですとわかった。「じゃあ、少し投資を減らして5,000万にしようか」、といったチューニングするケースがあります。物事を大きく変えるというよりは、少しずつ変えていく。もしくは、MMMから出た数値をもとにKPIなどの見方を変えている企業が多いのではないでしょうか。
佐藤氏:弊社のクライアントでも、テレビCMの枠を買い付ける際に、どの商材に・どの枠で何GRP割り当てていくかを考える部署が、割り当ての理由を説明するためにMMMを活用しています。MMMによって、各商材の担当者と認識のすり合わせができるようになっている。
MMMが目指す究極の姿は、予算の投資配分を最適化して、ROIの最大化を実現するものだと思います。ですが個人的には、MMMは正解を出すというよりも、意思決定をするための共通言語として役割を果たすものではないかと思います。
以前ある人から聞いた話で、なるほどなと思ったことなのですが、統計的あるいは数理モデル的に最大化すること=ブレイクスルーではないのですよね。というのも、これらの数値はあくまで過去のデータの延長線上に未来を捉えています。
しかし実際には、もしかしたら、これまでにない突き抜けたクリエイティブが出てくるかもしれません。ですから、あくまで意思決定をどれだけ科学的にするかを担うのが、MMMの役割になってくると感じます。実際にmQEDでもこのような使われ方が始まり、知見が蓄積され始めていると感じます。
「競合アトリビューション」でクリエイティブチャレンジを促進
小川氏:MMMによる知見蓄積という面では、弊社もmQEDを活用して「競合アトリビューション」というサービスを準備しており、商標出願もしました。
これは、広告統計(ビデオリサーチ社調べ)と、SimilarWebPROやGoogleキーワードプランナーなどの競合サイトのアクセスや検索を推測するツールから得た時系列データをmQEDで解析することで、競合各社のTVCMや新聞広告といったマス広告によるネットへの影響などの広告評価を推測するものです。通常のアトリビューションでは、ネット広告の評価しかできませんが、MMM(≒統合アトリビューション)を他社の分析にも応用する「競合アトリビューション」では自社に加え、競合のマス広告のネットへの影響をCPAやCPCとして推測します。
佐藤氏:競合他社のマス広告がどれぐらいCVを生んでいるのかは気になるものですね。具体的にはどのように、サービスを提供なさるのですか?
小川氏:有料サービスではなく、マス広告とネット広告などをトータルにお任せいただき、MMMを取り入れていただく企業へのサービス情報として提供する予定です。
決裁権をお持ちの方はMMMの詳しい手法や、システム独自の統計理論よりも、他社の動向が気になるものだと思います。弊社はMMMを応用した「競合アトリビューション」によってその点もフォローすることで、より明確なプロモーション戦略の指針を提供します。
日本企業は、過去の慣例でなんとなくTVCMやweb広告費の予算組みをしている場合が多いです。そして、新しいプラットフォームへの期待感を持ちつつも、広告効果が明確でないため、チャレンジされない場合が多い。
私は適切なチャレンジをすれば、成功できると考えています。というのも私自身、LINEや動画広告などが「これから伸びるかもしれない!?」といった時期にチャレンジングなご提案をしたことがあります。そして、取り組んで下さったクライアントは全て良い結果を残している。
佐藤氏:そうなんですね。例えばどのような例がありますか?
小川氏:LINEが媒体化する以前から、LINEスタンプを活用するご提案をして、媒体化当初にそれを実施しました。結果を見ると、ブランド検索数が増加するとともに、売上が昨対110%以上向上しています。また、金融業界のクライアントへYouTubeに特化した動画広告を制作する提案もしたのですが、某媒体の2013年の日本国内の動画広告で最もスキップ率の低い広告になった模様です。さらにブランド検索数も、それによるコンバージョン数も大幅にベースアップしました。
きちんと計画をしてチャレンジをすれば、これまでにない成果が出る可能性が十分にあるのです。けれど、なかなか踏み出せない。その際に、競合や類似の施策を行っている企業のマス広告や動画広告やソーシャルメディアなどによるCVやブランド検索流入をそれぞれCPAやCPCとして定量化する「競合アトリビューション」で分かりやすくお伝えできればと考えています。
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