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「アドではない。サービスやイノベーションのアイデアを」佐藤カズー氏に聞くデジタルクリエイティブの未来


必要なのはアドに限らない、サービスやイノベーションアイデア

MZ:今回、コードアワードに寄せられた作品群に対して率直に感じたことは何でしょうか?

佐藤:もっと広告業界以外からも作品が集まるべきだと感じます。特に、イノベーションの領域には、新しいサービスや僕らのライバルにもなる存在の登場を期待していました。今後のデジタルのテーマはイノベーションとデータだと考えています。

 データについては、先ほど触れたトレンドコースターなど、データを上手く扱った作品が増えていけば良い。一方、イノベーションのエリアがぜんぜん足りない。スタートアップやインキュベーションをやっている人たちのエントリーが増えて、モノやサービスの発明が寄せられて、アワードを通して世の中に知ってもらうことができればと思いますね。

 個人的には、今回の審査でもアプリなどを触りながら意見を交換するシーンを期待したので、意外とアドばっかりだった印象がありますね。この観点だと、グッド・イノベーションを受賞した東京メトロのアプリ「MEET METRO」は、これまでなかったタイプの作品だったかと思います。このアプリは東京マラソンで、応援者とランナーのマッチングをサポートするためのもの。こういったロングタームで生存できる作品がもっとほしかったですね。

MEET METRO
MEET METRO

MZ:ベスト・イノペーションには「フリー素材アイドル」という作品が選ばれています。この作品のイノベーティブな部分はどこでしょうか?

フリー素材アイドル
フリー素材アイドル

佐藤:この作品はデジタルの開発より、発想が勝っている作品です。広告費0でアイドルの認知を向上させるために、クラウドファンディングを活用して彼女たちをフリー素材にしてしまう。これはサービスや事業にできそうです。

MZ:講評でも「ワンオフの体験コンテンツでなく、リアルで実利のあるデジタルサービス、プロトタイプでもいいのでイノベーションアイデアをもっと見たい」と仰られていますね。その真意はなんでしょうか?

佐藤:多くのアドは瞬間のノイズをマーケットに作って、その後は捨てられるものです。一方、優れたサービスやコンテンツは作り上げたら永遠に続けられます。本質的なデジタルはそこにあると思います。

 これまでは、デジタルの発展期で「このテクノロジーを使って、こんな面白いものができた!」というような、技の見せ合いをしていました。今後は、もっとビジネスやサービスに直結して人を動かすクリエイティブや、長く残るクリエイティブが出てくると良いでしょうね。

 フリー素材アイドルはやろうと思えば、ずっと続けられますよね。衣装や設定を変えたり、二人が年を重ねても続けられそう。アイデアの太さを感じます。

 しかし、一言で「残す」といっても、ブランドの本質に寄っていないと実現できません。企画を考える際に、ブランドにとって正しいか、さらに企画は一発で終わらないか、一年もつかという視点が必要です。そのような作品が増えるとコードアワードも面白くなると思いますね。

施策の実現に必要な「マーケターの視点」とは?

MZ:施策を実現するためには、予算との兼ね合いもあるかと思います。その点はいかにクリアすべきだとお考えですか?

佐藤:一概には言えませんが、複数の施策・メディアに少しずつ予算を投下して面を揃えるのではなく、クリエイティブやキャンペーンが持つストーリーを考え、ストーリーに見合った投下先に集中して予算を投下するという考え方を持ってみると良いかと思います。

 どうしてもTVCMもやりたい、雑誌もやりたい、タイアップもやりたいと考えがちです。例えば、予算に対して「ギリギリTVCMができる」という発想ではなく、「動画の制作費にメディア予算を全部投入して、圧倒的なCMを制作し、YouTube上にあげよう」と考えてみる。すると、何千万、何億の人が能動的に自社のクリエイティブを見に来てくれるわけです。どちらが企業にとって望ましいでしょうか。今はそれを考える時代だと思います。世界ではもうはじまっていますから。

MZ:マーケティングでは組織の分断化が課題になる場面があるのですが、デジタル施策において、組織は関係があると思いますか?

佐藤:予算のアロケーションが部署によって異なる場合、もったいないと感じることがありますね。デジタル施策を行う部署とブランド施策を行う部署の予算が分かれていて、二つをまたぐインテグレーテッドなアイデアを実現できないといった声を聞くこともあります。デジタル施策で成果を出している企業の多くは、大概ブランドチームと連動しており、上手に予算の配分ができているわけです。

 顧客接点は多様化していますが、結局、顧客はどの接点でも一つの企業・ブランドとして認識しています。ですから、企業も同じ方向を向くべきでしょう。部署をまたいだチームを編成してプロジェクトを進められるマーケターが、素晴らしいマーケターだと思います。

難題であるほど、ワクワクする

MZ:最後にカズーさんが注目しているクリエイティブはどのようなものか教えてください

佐藤:例えば、5億円の予算があるとしたら多くの企業はTVCMを打ちたがると思います。そうではなく、この予算を使って全世界から称賛の嵐を呼ぶコンテンツを1本作れ、と言われたらワクワクしますね。もしくは先ほど触れた、10年続くサービスやコンテンツを考えてほしいと言われると燃えるでしょう。これらはすごい難題です。ですが、難題があればあるほどワクワクしますね。

MZ:イノベーティブなアイデアやサービスが、日本でも多く見られる日を待ち遠しく感じます。本日は、ありがとうございました。

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/08/26 18:00 https://markezine.jp/article/detail/22734

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