BtoC領域でMA活用が進む3つの理由
競争力強化に加え、BtoC領域でMAの活用が進む理由は3つある。
第一に、顧客情報を一元化すること。通常顧客情報は、店舗や営業マンなどに分散されていることが多い。また、メールやLINEなどの個別アカウントと顧客情報を紐付ける必要もある。加藤氏によると、こうした情報の紐付けは、現在のテクノロジーを使えばそれほど難しくはないようだ。こうして顧客情報を一元化すれば、より最適なメッセージをより良いチャネルで送ることができる。
第二に、カスタマージャーニーを自動化すること。特にカスタマージャーニー内のチャネルの多様化を踏まえ、顧客との接点を自動化できるメリットは大きい。例えばビーコンを通じて近くにいる顧客にプッシュ通知を送ったり、またはソーシャルメディアやメールでメッセージを送信したりなど、コミュニケーションの展開を自動化できる。
第三に、マルチチャネルへの対応強化のためだ。プッシュ通知やショートメール、メールなどのほか、製品やソーシャルメディアを通じたコミュニケーションを設計することで、より顧客とのエンゲージメントを強化できる。コミュニケーション環境がBtoCのMAに適してきたという状況変化も大きい。そのため、冒頭に述べたような企業側が思い描くカスタマージャーニーと現実とのギャップとを埋めやすくなっている。
加藤氏は、「この3つ理由があるからこそ、BtoCでMAの活用が進んでいるのです」と語る。では、実際に、先進的なBtoC企業はMAを活用してどのような施策を行っているのだろうか。
LINEを活用したOne to One戦略を展開する資生堂
資生堂では、「Salesforce Marketing Cloud(以下、Marketing Cloud)」とLINEを活用し、最適なOne to Oneメッセージを送るとともに、よりフレンドリーなコミュニケーションを自動化することで効果を上げている。そのプラットフォームとなったのが、資生堂が展開しているWebサービス「ワタシプラス」だ。ワタシプラスはオンラインでの買い物のほか、化粧法や美容法に関してのさまざまな質問や悩みに対し、ベテランのビューティーアドバイザーが答えるといった多様なサービスを展開している。IDを登録すると、店舗での購入履歴と合わせてポイントが加算されるのも消費者にとって大きなメリットだ。
資生堂では第一ステップとして、今まで保持していた顧客の属性データとWebの行動履歴を紐付けることから開始。これにより、どこの誰がどんな商品を購入しているかを統合して見えるようにした。例えば同じシャンプーを継続して買い続けている顧客に対しては、メールもしくはLINEで「そろそろ買い替えの時期ですよ」とメッセージを送る。これにより資生堂製品を継続的に購入するロイヤルカスタマーを育てていく狙いだ。
そんな同社がコミュニケーションチャネルとして重視しているのがLINE。Marketing CloudはLINEに対応し、数百万人の顧客に対して効果的なセグメント別メッセージを送ることができる。例えばセグメント別に商品オファーを変えたり、あるいはスケジュールを決めて全員にクーポンを配布したりすることも可能。動画などリッチなコンテンツを配信できるのもメリットだ。
One to One戦略への人工知能活用
ところで、LINEを利用したOne to Oneコミュニケーションというと、他にはどのようなことができるだろうか? Marketing Cloudでは、例えばユーザーが企業のLINE アカウントに「今年の秋の流行色って何だろう」とメッセージを送ると、「XXさんならどんな色でも似合うと思うけど、オレンジがいいんじゃないかな」といった具合に質問に即した答えを自動で返すことが可能だという。このコミュニケーションを支えているのが、AIサーバーだ。これは、言語解析や自動応答機能を持つ人工知能。Marketing Cloudと連携しており、LINEに送られたメッセージについてAIサーバーがその意味を解し、最適な回答を送信できるようになっている。
このAIサーバーとの連携は、オートメーション化に大きく貢献できる部分だ。例えば商品が破損した時、LINEで症状を知らせるとAIサーバーがマニュアルから該当箇所を参照して自動応答するといった使い方もできる。これが結果としてOne to Oneコミュニケーションとなり、顧客とのエンゲージメントを高め、ロイヤルカスタマーへと導くカスタマージャーニーになるわけだ。
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