定番の検索連動型広告、他のプロダクトとの併用進む
MarkeZine編集部(以下MZ):今回は、インターネット広告を牽引する存在ともいえる検索連動型広告にあらためて注目しました。検索連動型広告のサービスマネージャーの齋藤さんに、目下広告主がどのように活用しているのか、広く浸透している広告サービスだからこその大きな潮流をうかがいます。齋藤さんは、現職の前はどのような業務を担当されていたのですか?
齋藤:ヤフーに入社以来、ずっと広告ソリューションを担当しております。プレミアム広告をはじめ、広告を運用するツール設計などにもかかわって、今に至ります。現在は、検索連動型広告のプロダクト自体とサービスの両面で、どう展開していくかを計画し推進する立場です。
MZ:インターネット広告の黎明期に登場した検索連動型広告の基本的な仕組みは、MarkeZine読者なら100%知っているとは思うのですが、それ以後も継続的に改善され、定番化してきているという変遷もあります。あらためてその機能と、現在の位置づけを教えていただけますか?
齋藤:特定のキーワードを検索するユーザーに対して、広告主さまがユーザーに対してアプローチする機会を提供するのが検索連動型広告です。シンプルで分かりやすい特徴から、インターネット広告を牽引してきたのだと思います。広告手段が増えてきた今も、やはりユーザーのニーズが顕在化したタイミングでの手法としては、特筆的なプロダクトですね。他のプロダクトと併用する場合も、効果的に利用できると思います。
地域ターゲティングにより地元の商圏へのアプローチも可能
MZ:一定の影響力は変わらない、という状況でしょうか?
齋藤:ええ、顕在化したニーズを捉えるという点は、以前も今も広告主さまの要望に応えるものだと思います。加えて、インターネットの状況に合わせてプロダクトも進化させてきました。デバイスが多様化する中で、たとえばマルチデバイス配信や、あるいはスマートフォンを利用しているユーザーに、よりアピールできるような広告テキストを、スマートフォンにのみに配信する機能などをリリースしてきました。
MZ:昨今の変化としては、スマートフォンの浸透による掲載面の多様化が大きいのですね。
齋藤:そうですね。あとは、これまでもずっと可能ではあったのですが、地域や曜日、時間によるターゲティングができるので、より効果的かつ効率的なアプローチを可能にしています。インターネット=日本全国へ、のような印象がありますが、地域ターゲティングを使うことで、地元の中小企業が商圏を絞ってアプローチすることも可能です。
MZ:以前は、インターネット広告といえばディスプレイ広告か検索連動型広告で、顕在化ニーズを捉えるなら検索連動型広告の一択だったと思います。そこへリターゲティングやアドネットワークなども加わった現在、利用の傾向などはどうなっていますか?
齋藤:もちろん、リターゲティングは顕在ユーザーへのアプローチとして効果的です。ただ、だからといって検索連動型広告の「検索したタイミングで捉える」というタイミングの有効性が薄まるわけではありません。利用が減ったわけではなく、併用のケースが増えていますね。
テレビCMと連動させるケースが一般化
MZ:併用が増えているということは、企業の予算投下としては安定的という状況でしょうか?
齋藤:そうですね、さすがに成長が著しかったころのパーセンテージで伸びているわけではありませんが、以前と変わらず一定のボリュームは占めています。弊社が調べたところによると、中堅・中小企業でインターネット広告を現在出稿している企業の約4割はヤフーの検索連動型広告の出稿経験があり、そのうち25%が現在出稿中であるという結果が出ています。
MZ:検索連動型広告は、顕在ニーズの獲得という相性の良さから、ダイレクト系の企業の活用から市場が広がりました。最近は、ブランド系の企業の出稿もかなり増えていますが、そうした活用業種の拡大などについてはいかがですか?
齋藤:ダイレクト系企業以外で、すでに現時点で日本の広告宣伝費の上位1,000社の企業にはほぼ使っていただいています。テレビCMの出稿時期と連動するケースも多いですね。
MZ:他のインターネット広告メニューとの併用だけでなく、マス広告との併用も一般化しているのですね。
齋藤:ええ。マス広告では、テレビCMはこの数年で広告費がさほど変化していませんが、紙メディアやチラシ、OOHなどで使われていた広告費が検索連動型広告へ移っているケースもあると思います。
中堅中小企業ではチラシやDMとの併用・移行も
MZ:なるほど。どういう意図で、チラシなどから検索連動型広告へ切り替えているのでしょうか?
齋藤:そうですね、まだ、切り替えよりは併用が多いのは事実です。特に、中堅規模の広告主さまにおいては、チラシやダイレクトメール、電話帳への広告出稿との併用率が比較的高いです。その上で、今後これらの予算をどうするかのアンケートをとったところ、既存のメディアの予算を検索連動型広告へ移行させるという意見が目立ちました。
MZ:その意見は特にどういう企業で多いのか、傾向はありますか?
齋藤:担当者の年齢層に左右されますね。やはり中堅規模の企業で担当者の年齢層が高いと、昔からの慣習で電話帳に出稿し続けているといった場合も少なくないのです。リテラシーの問題は、まだ残っていますね。一方で、担当者の年齢が比較的若いと自分自身にインターネット広告が身近ですし、既存の方法でリーチしづらくなっていることを感じて、ではインターネットへという流れになっています。
MZ:スマートフォンへのシフトが進んでいるのは共通認識だと思いますが、特に検索連動型広告の活用ではどんな変化がありますか?
齋藤:肌身離さず携帯するデバイスなので、よりリアルなユーザーの検索タイミングを捉えられるようになってきています。特にこの3年ほどは、スマートフォンでコンバージョンまで到達するユーザーの割合が右肩上がりになっています。ここに注目しています。
スマホによって動的なコンバージョン把握が進む
MZ:たしかに、以前は「スマートフォンで検索して買うのはパソコン」という行動が主流でしたが、今やスマートフォンですべてを完結するというのが主流になりつつありますね。
齋藤:そうなんです。だから、コンバージョンが測りやすくなったことは大きいですね。もうひとつ、スマートフォンは活動中のタイミングで検索するので、そのまま来店などの実際の行動をコンバージョンとして捉えることも物理的には可能です。これを可視化していくのはこれからですが、パソコンだけでは把握しづらかったさまざまなコンバージョンが分かりつつあります。
出稿企業の傾向としては、若い人向けの商材なら当然スマートフォンですし、リアルタイム性の高い飲食店や価格帯の低い商品の場合もスマートフォン、一方で不動産などの高額商材はまだパソコンへの出稿が中心です。親和性の高い業種で、スマートフォンでのコンバージョンの把握が進みそうです。
MZ:若年層向けだと、LPやフォームなどのスマホ最適化はかなり浸透しています。ナショナルクライアントだと、今でもリーチではテレビCMの獲得効率が圧倒的でも、10代だけ抜けてしまうといった話も聞くので、検索連動型広告の使い方にも影響がありそうですね。
齋藤:たしかに、テレビを見ない層にとってのファーストスクリーンはスマホになりますね。なので、若年層をスマートフォンで捉えたいというニーズはナショナルクライアントを含めて大きいと思いますし、実際に多くお話をいただいています。
“運用型”広告というハードルを下げ、新規利用を促進
MZ:スマートフォンの拡大は、若年層に限らず今後も確実だと思いますが、ヤフーとしては検索連動型広告を中心に今後の展望をどうお考えですか?
齋藤:広告主さまへの調査では、「2-3年後の検索連動型広告の予算が増える」と回答した企業が半数を超えていました。すでに定番化したプロダクトですが、これからさらにインターネット広告を活用したい企業や、先ほどの若年層の話のようにニーズはあるけれど使いこなせていない企業も少なくないと思います。そういった企業にも利用しやすくするのが、第一の課題です。
ヤフーでは、すでにコールセンターをはじめサポート体制は充実していますが、それでも利用にハードルがある企業に、もっと簡単に使えるメニューを用意する、などを考えています。出稿未経験だと「運用型広告」という点でそもそも負担があるので、用語や管理画面も含めて導入のハードルを下げたいと思います。
MZ:たしかに、冒頭でお話しいただいた地域ターゲティングなどを考えると、中堅中小企業でまだ使っていない企業が導入するケースはありそうですね。
齋藤:そう思います。ターゲティングの精度が高くなるほどリーチも取れますし、競合ワードの問題も商圏を絞ればクリアしやすいので、中小企業ほど、うまくいけばかなり狙い通りのユーザーにリーチできます。そのあたりの理解促進も合わせて、より使いやすいプロダクトとサービス開発に今後も努めたいと思います。