マーケティング部門とIT部門の消えゆく垣根
今回のAzureとの連携は、「施策の効果を上げるため、高度なデータ分析を行いたい」というマーケターのニーズに応えるもの。だが上原氏は、「マーケターだけではなく、実はIT部門にとっても大きなメリットがあるのです」と語る。
近年のデジタルマーケティングの進化により、マーケティングとITの境界はあいまいになってきている。だがこれはテクノロジー観点から見た話であり、実際の企業の中ではどうかといえば、マーケティング部門とIT部門の融合は進んでいない。
Web広告の出稿や効果測定、アクセス解析であれば、マーケティング部門の範疇で収まっていたが、基幹システムデータやクラウド環境にあるビジネスデータまで含めた分析を求める場合、IT部門の協力は不可欠となる。だがこれまでは、両者の間に「どんな目的で、何をどうすれば良いか」を話し合う共通言語がなかったのだ。
Marketing Cloudは、CMOやマーケターなどマーケティングに携わる人を中心に支持されてきた。実際、国内外の著名企業でも活用されており、その高度なソリューションには定評がある。一方マイクロソフトは、データベースやシステム基盤、業務アプリケーションなど、CIOやIT部門を通じてビジネスを支援してきた。Azureも、ビジネスクラウド環境として数々のSI企業やITベンダーからの協力の下、事業会社での活用が進んでいる。マーケターに強いアドビと、IT部門の信頼があるマイクロソフトが連携することで、マーケターのニーズとIT側の要件を固めた、強固なデジタルマーケティング・プラットフォームが実現するという。
クリエイティブを含めた広告戦略も展開可能に
アドビがデジタルマーケティングプラットフォーム実現のアライアンス先として、マイクロソフトを選択した理由は何なのだろうか。
上原氏は「マーケティングに携わる人は多種多様になっています。そんなさまざまな立場からのニーズを実現するため、Marketing Cloudはオープン性を重視しており、エコシステムとしていろいろなソリューションをいかにプラグインしていくかを考えています。この点においてAzureは、それ自体が柔軟性あるクラウド基盤であることに加え、分析コンポーネントや連携のためのAPIコンポーネントが充実しており、強固なプラットフォーム構築が可能になります」と語る。
実は、アドビとマイクロソフトのアライアンスはこれが初めてではない。マイクロソフトが提供するタブレット・Surfaceに特化したクリエイティブ・ソリューション「Adobe Creative Cloud」(以下、Creative Cloud)をリリースし、クリエイターの創作活動支援を共同で展開した実績がある。こうした背景を踏まえ、上原氏は次のように説明する。
「ご存じのとおり、もともとアドビはクリエイター向けソリューションで定評があり、映画や広告業界で活躍するデザイナーやフォトグラファーを支援してきました。そうして制作したコンテンツを企業がマーケティングに活用する中、『マーケティング効果を分析したい』ということで、マーケティング分野にソリューションを拡大してきたのです。今回のAzureとの連携も、クリエイティブ分野で培った両社のアライアンスをマーケティング分野に適用したい、ということから実現しました」(上原氏)