R/GAの次のチャレンジは「Interactive Storytelling」
Jay Zasaさんはプレゼンの最後に、「What’s Next for us」として、いまR/GAが取り組んでいる3つのチャレンジを挙げた。
1:Interactive Storytelling
2:Campaign Systems ? Media is Creative
3:Connected Spaces
この3つのチャレンジはどれも野心的でR/GAの先進性とその意識の高さを表していると思うのだが、私が特に共感したのは、「Interactive Storytelling」だ。これは「Data Driven Creative」と言い換えてもいいと思う。
ちなみに、「データ ドリブン クリエイティブ」は小霜オフィスの登録商標だ。小霜オフィスは、博報堂から独立した小霜和也さん(クリエイティブディレクター/コピーライター)が作った会社だ。
小霜さんとは一緒に仕事をしたことがあるのだが、おそらく、彼の目指しているところは、R/GAのいうWhole Ideaを作ってStorytellingを実践し、かつ、データに基づいて、その効果を把握しながら、あるいは、消費者の反応を確認しながら、Storyを変更したり、微調整したりすることだと思う。
Jay Zasaさんが話していることも、ほぼ小霜さんと同じ考えだった。リアルタイムで消費者の反応がわかる時代、つまり、the Connected Ageになればなるほど、このような消費者の声を反映したInteractive Storytellingの実践が重要になるだろう。
電通・博報堂は広告の素人になったのか
また、私にとっては残念なことなのだが、今回のブランドサミットの中で「電通・博報堂が広告の素人になった」という趣旨の話を2回も聞いた。ディナーパーティー中にブランド側の担当者から、それぞれ別々に聞かされた。
私は15年以上に渡って、電通・博報堂と仕事をしてきたし、現在も、私の仕事の半分以上が、総合代理店と協業しているのが実情だ。電通も博報堂も非常に優秀なスタッフを多く抱えていて、デジタル広告についても詳しい人がたくさんいる。もちろん、ブランディングやマーケティングについてのプロも数多くいる。私は、この電通・博報堂との仕事を通して、多くのことを学んできたし、正直にいうと、彼らに育てて頂いたと思っている。だから、「電通・博報堂が広告の素人になった」という話をブランド側から聞くと、まるで自分のことのように悔しい。
「電通・博報堂がネット広告の素人だ」といわれるのは、昔からそうだったし、ネット広告だけの領域ならネット専業代理店もかなり優秀なスタッフがいるので、仕方ないかと思うところもある。しかし、「電通・博報堂が広告の素人になった」といわれると、「いや、そんなことはないよ」と反論したくもなる。ただ、そう言われている背景や理由もあると思う。
まず、デジタル領域については、これだけ多くの媒体があり、多くのツールやサービスが存在しているため、電通・博報堂の営業局のスタッフが全てを把握するのは不可能になった。そのため、例えば、GoogleやTwitter、Facebookなどのメジャーな媒体であっても、細かい点についてブランドから質問されると「持ち帰って確認しますのでしばらくお待ち下さい」となって、その場で対応できないケースが多い。デジタルマーケティングの専門家として仕事をしている私だって、全てを把握できている訳ではない。なので、ある意味、この点については仕方ないところがある。
課題は「マスとデジタルを連携した施策」
ただ、これは大事だと思うのだが、「マスとデジタルを連携した施策」について、その手法や効果、あるいは、その経験値を問われると、まだまだ人材不足だと言わざるを得ない。
ブランド側からすると、「マスとデジタルを連携した施策」についての課題解決を、デジタルしかやっていないネット専業代理店に期待することはできない。そのため、自ずと電通・博報堂の門を叩くことになるのだが、このマスとデジタルを連携したプランニング、コミュニケーション・デザインができる人、あるいは、この両方の領域の特徴をきちんと把握しているクリエイティブ・ディレクターが不足している。まったく存在しない訳ではないが、人材不足は否めない。
その結果、電通・博報堂が頼りない存在になってしまい、「電通・博報堂が広告の素人になった」と感じてしまうのだ。その間隙を縫うように、コンサルティング会社がマーケティング領域に入ってきて、跋扈しつつある。あのマッキンゼーですら、弊社に問い合わせをしてくるぐらい、マーケティングと広告の領域に入ってきている。