有効期間と検索回数の細かなセグメントが可能に
MarkeZine編集部(以下MZ):MarkeZine編集部(以下MZ):今回は、実際にYDNを広告主のマーケティングに活用しているサイバーエージェント波田様に参加いただきました。アップデートされたサーチターゲティングの機能活用をうかがっていきます。はじめに、役割を教えていただけますか?
波田:私が所属する部署は、Yahoo!プロモーション広告をはじめとした運用型広告プロダクトを扱い、広告主様のマーケティング課題を解決していくSEMコンサルタント組織です。その中でSEMコンサルタントを務めています。
山本:弊社では、私がサイバーエージェント様の広告営業担当をさせていただいています。担当領域としてスポンサードサーチとYDNを中心に扱っており、波田様たちが所属されている部署と連携することが多く、2016年8月のサーチターゲティングのアップデートについても連携して進めました。大矢はYDNの機能開発に携わる部署に所属し、2016年8月のアップデートも担当していました。
MZ:では、改めてそのアップデートのポイントをお教えください。
大矢:YDNのサーチターゲティング機能で広告主や代理店の皆様から要望の多かった、有効期間(リーセンシー)と検索回数(フリークエンシー)で細かくセグメントできるようにしたのが、最新のアップデートの概要です。
サーチターゲティングのカスタマイズ性が向上
MZ:YDNの複数の機能の中でも、検索という強いインテントを捉えて後々までディスプレイ広告でアプローチできるサーチターゲティング機能は、これまでもかなり効果が見込める施策だったと前回の記事でうかがいました。
大矢:そうですね。だからこそ広告主や代理店の皆様の期待も高く、「過去30日間に一度でも検索したユーザー層」といった大きな括りだけでなく「直近の7日以内に3回以上検索したユーザー層」などの細かい設定をしたいという要望は以前からありました。
セグメントが細かくなるとリーチも絞られるため、今回のアップデートの前に、サーチターゲティングのマッチングロジックの変更を行っています。2語以上の検索時に完全一致の場合しかターゲティングしなかったものを、いずれかのワードでもターゲティングできる語句一致のロジックに変えました。その上で、有効期間は過去1日以内、3日以内、7日以内、14日以内、30日以内から、検索回数は1回以上、2回以上、3回以上から選択可能としました。
MZ:サイバーエージェント様は、代理店の立場で先のような要望を伝えてきた側だと思いますが、今回のアップデートに関して率直にいかがですか?
波田:以前のサーチターゲティング機能も、サイトリターゲティング同様にかなり活用していたのですが、やはりサイトリターゲティングに比べるとカスタマイズに少し不自由がありました。検索の有効期間と回数は、当然ですがユーザーのモチベーションと強い相関があると思っていました。そこで入札差配をつけられたら、予算配分の最適化ができるので、代理店としてずっと要望していました。実際に予想を超える高い効果が得られています。
また、スポンサードサーチにおいて、ビッグワードになるとCPCが高くなる傾向があり、その中で戦い続けるのはなかなか難しいという背景がありました。
サーチターゲティングですと比較的低CPCで配信できるので、より多くのユーザーに効率よくアプローチできるのではという期待をしていました。
前後比でCTR、獲得件数を軒並み改善
MZ:そうなのですね。では、実際に活用してみた感想を伺えればと思っています。まず、どのような広告主への適用をすすめていますか?
波田:広告主の中には、集客のポートフォリオが検索とサイトリターゲティングに偏っているケースが多く見受けられます。今後の集客拡大には、いわば「サイトリターゲティング偏重からの脱却」が大きなテーマとなっておりました。
MZ:なるほど、サイトリターゲティング偏重からの脱却が課題だというのはよく聞きます。その具体的な解として、今回のアップデートが合致したと。
波田:はい。サイトリターゲティングの次に活用するケースが多い機能がサーチターゲティングだったので、そこをより細かく運用できるのは、集客の効率化にも、サイトリターゲティング以外での獲得件数の拡大にもなると考えました。期待値は高かったですが、やってみると確かに検索してから間を空けないアプローチほど効果が高く出ていて、手応えがありました。
アップデートした機能の実装前後の実績を比較したところ、CTR、CVR、獲得件数は軒並み改善しています。直近での取り組みなので、まだ入札差配の調整をしきれておらず、CPAが高くなってしまうケースもございますが、今後のアロケーション最適化によってかなり落とせると思います。
MZ:なるほど、いずれにしても予想通りの成果が出ていますね。
波田:ブランドキーワードに対して、検索してからの有効期間を1日以内、7日以内、30日以内と区切って配信すると、CVRにもきれいな相関が見られました。
これに応じて入札差配をつけることで、これまで30日以内という区切りでしか配信できなかったものを、最も確度の高い「検索してから1日以内」のユーザー層への配信を最大化できたため、CTRや獲得件数の改善につながりました。
MZ:ヤフーとしては、これらの結果を得ていかがでしょうか?
大矢:率直に、すごく嬉しいですね。もちろん、リリース前に社内のロジックテストを繰り返して、ある程度の成果が上がることは検証していましたが、やはり業種や個々の広告主によって数値は変わってくるので。
山本:私は以前からこのアップデートのニーズを最前線で聞いていましたので、まずは想定どおりの効果を出せてよかったと思っています。今後様々な業種での活用事例作りにも積極的に取り組んでいきたいです。
スポンサードサーチとの併用で効果を高める
MZ:運用について、たとえばどのようにCPAを下げるお考えですか?
波田:たとえばビッグワードでも、効率の良し悪しやインプレッションの大小などの実績が分かるので、さらにリストを分けたりその中で有効期間を切ったりしていくことで、より確度の高いユーザー層を検出していきます。
以前、サーチキーワードからユーザーの深度を想定して、クリエイティブを出し分けてみたことがあります。結局クリエイティブの工数対効果が見合うかになってきますが、一度試してみたいですね。
MZ:スポンサードサーチとの併用は、実践してみていかがでしたか?
波田:もともとスポンサードサーチで獲得があったキーワードをサーチターゲティングでのキーワード選定基準に反映しているので、そこは随時追加しています。サイトリターゲティングを配信するユーザーはサーチターゲティングでは除外して、重複しないようにしているので、低コストでリーチを補完して、結果的に拡大できていると思います。
サーチターゲティングで効果の高いキーワードの傾向は、スポンサードサーチの実績の傾向と似ていたりするので、今後はその実績も参考にしていきます。
MZ:今回の活用ノウハウは、業種に関わらず横展開できそうでしょうか?
大矢:もちろん応用可能です。ただ、たとえば検討期間が長い不動産や自動車だと、有効期間が短いほど効果が高いともいえないかもしれません。また「検索キーワードが示すニーズの変化」にもある通り、心境に合わせユーザーの検索ワードには変化が現れます。そのプロセスも分析した上でキーワード選定できると理想的ですね。
導入を進め、広告主へ還元
MZ:そこまでできると、業種によるパターン化や広告主ごとの最適化も進みそうですね。では最後に、それぞれのお立場で今後の展望をお聞かせください。
波田:前述のサイトリターゲティング偏重のケースは少なくないので、今後はさらなる横展開を推進していきます。
また、検索連動型広告はどうしてもユーザーが絞られるので、効果が出やすい事例でサーチターゲティングとの相乗効果を検証しながら、ノウハウを蓄積したいです。
ヤフー様への期待としてですが、現状の広告アカウント構造を維持したまま細かな入札差配を自動で行うような機能があれば、広告主への導入もさらに進むと思っています。
他にも、ユーザーの重複を完全に除外できるとありがたいです。現状は機能上、7日以内に検索したユーザー層に1日以内に検索したユーザー層も含まれてしまうので、これを完全に1日以内、2日~7日以内としっかりセグメントを切り分けられると、入札の最適化もユーザーのモチベーションの正当評価もより進められると思います。
山本:このアップデートは、本当にかゆいところに手が届く内容です。スポンサードサーチやYDNのサイトリターゲティングとの併用で獲得件数の最大化が図れるので、広告主や代理店への啓発に力を入れていきたいです。
大矢:波田様からもご指摘があった点も含め、これからも広告主や代理店の皆様の要望を受け止め、実直に機能改善に取り組んでいきます。