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MarkeZine Day 2016 OSAKA(AD)

顧客に寄り添い、LTVを高める~マルケトがMAで目指す「エンゲージメントマーケティング」の世界

 2016年11月10日(木)に開催された「MarkeZine Day 2016 OSAKA」に、グローバルでマーケティングオートメーション(以下、MA)を提供するマルケトが登場。セッションでは、「LTVを高めるエンゲージメントマーケティング」と題し、マルケトで代表取締役社長を務める福田 康隆が同社MAが担う本質的な役割について講演を行った。

顧客との長期的な関係構築に不可欠なアプローチ方法とは

 福田氏はセッションの冒頭、イギリスの週刊新聞『The Economist』とマルケトとの共同調査より、「経営層の8割が組織の構造改革を求めている」というデータを紹介した。

 「8割が求めている組織の構造改革」を念頭に置きながら、次に同調査の別データ「マーケティング部門に必要な3つの変革」を説明した。

 1つ目が「ビジネスの成功をサポートする部門への変革」、2つ目が「プロフィットセンターへの変革」、つまり予算ありきのコストセンターという扱いから脱却することの必要性、3つ目が「カスタマーエクスペリエンスを主導する部門への変革」という中身で構成されている。

 とりわけ福田氏がもっとも力点を置いて説明したのが「カスタマーエクスペリエンスを主導する部門への変革」の部分だ。企業が成長するほど組織がサイロ化する傾向があるので、組織全体が一貫して顧客を見られなくなる。結果として良い顧客体験が提供できないという循環を回避すべきだ、と訴えた。

株式会社マルケト 代表取締役社長 福田康隆氏

 また福田氏は、3つの変革の実行には顧客一人ひとりとの長期的な関係構築が不可欠だとし、その状態へのアプローチが「エンゲージメントマーケティング」であると説明した。

 「エンゲージメントマーケティングという言葉は、何十年も前から存在する言葉です。ただし、概念でしかなかったのが、MAの出現で、現代にかけて初めて誰もが実行可能になったのです」(福田氏)

専業ベンダーとしてMAの先陣を切る

 次に、福田氏はMAそのものの歴史を振り返りながら、マルケトのMAについて話を進めた。

 MA自体の歴史は古く、1992年の後にオラクルが買収する企業UNICAまで遡る。ただし1990年代は一部の技術者と開発者向けで、2000年代に入り、ITに詳しくないマーケターが現場主導で使えるソリューションとしてMAが台頭しはじめる。その中で2006年、マルケトがアメリカ・シリコンバレーにて創業した。

 「マルケトは独立系専業ベンダーであり、事業をMAに集中しています。また、グローバルの大手企業からスモールビジネス向けの企業まで、企業規模を問わず対応しています。2016年現在で5,000社、日本市場では350社、関西地区だと40社のお客様と取引があります。

 IDCやガートナーといった世界的な調査会社の評価では、MAのリーダーポジションを示されています。専業の強みを活かして、MAに求められる集客チャネルをはじめ幅広い役割についてフォローし、約600社のマーケティングソリューションとも連携。MAのエコシステムを確立できている点も、マルケトの強みです」(福田氏)

 顧客事例の紹介では、多種多様な企業が並び、イベントが開催された関西地区でもパナソニックや村田製作所、ヤンマーなど国内外に名前を轟かせる企業名が連なっている。

マルケトのMAを通じて、MAのコンセプトを理解する

 話は変わり、福田氏は業種やビジネスモデルによる細かな違いが出てくるという前提を踏まえながら、顧客一人ひとりに最適な情報を、最適なチャネルで提供するMAの仕組みを解説した。

 同社ではまず顧客の状態を、「匿名」「見込み客」「顧客」「ロイヤル顧客」と分類。さらに分類した顧客に合ったアプローチを進め、顧客の行動データを収集する。

 「MAと聞くとオンライン限定の施策と考える方がいますが、DMやコールセンター、営業、店舗といったオフライン接点の情報も集約していきます。そうすることで、顧客のライフサイクルをデータで把握することができます。

 顧客の属性、行動、頻度という3要素を掛け合わせたセグメンテーションができれば、顧客のLTV(Life Time Value)に寄り添うことができる。これがMAによるエンゲージメントマーケティングの一例です」(福田氏)

売上、生産性両面の向上を実現する

 次に福田氏は、MAが提供できる3つの価値を挙げた。

1.新規顧客獲得

2.顧客LTV最大化

3.マーケティングROIの向上

 新規顧客獲得では下記図にある、イベントを活用した見込み顧客獲得から、ホットリードの営業への送客までという「5つのマーケティングシナリオ」を用意。そのシナリオにあった施策をMAで最適化することにより、リードや受注件数を拡大する。

 セッション内では、上記の考え方をベースに成果を出した、新車および中古車の販売会社であるIDOM(旧ガリバーインターナショナル)の事例を引き合いに、わかりやすく解説。IDOMは、MAを通じてシナリオを実行して後追いメールの配信施策を実施し、成約率が約2倍にアップしたという。

 良い成果につながった要因は、検討前期と検討後期で消費者のインサイトを分析した点にある。特に、検討後期にあたる実車確認から購入までの1カ月、つまり購入へのモチベーションが高い時期に後追いでメールマガジンを配信して、成約に向けたインサイトを促進。大きな成果へと結びつけた。

 顧客LTVの最大化については、会員向けサービスを提供する企業がわかりやすい例となる。無料登録から有料登録に切り替えるタイミングや、クレジットカード番号などのセンシティブ情報を登録するといったフェーズは壁になりやすい。利用しなくなってしまった休眠顧客への対応も必要になる。

 そこで、登録したばかりのユーザー向けに会員サービスの活用支援をするコンテンツや、無料会員には有料会員になるメリットを説明したコンテンツを用意。一定期間サービスを利用していない会員に対しては、メールやチャットサービスでフォローを続けたり、コールセンターや内勤営業部隊との連携で顧客サポートをはかったりすることで、顧客離れや会員退会を食い止め、ロイヤル顧客化への軌道に乗せていく。

 マーケティングROIの向上については、MAはマーケターが使いやすい、操作しやすいという観点で作られていることを示している。つまり、マーケターが顧客のことを専念して考えられる環境を提供できることで「生産性の向上」につながっているということだ。

マルケトの自社活用を通じて、MAの使いどころを知る

 セッションの最後にかけては、マルケトの自社活用を事例モデルにしながら、MAを通じての体制、テクノロジーの使いどころを紹介。マルケトという企業の前提として、ITサービスを行う会社であり、ターゲットは10名規模の企業から数万名が在籍するグローバル企業まで、数カ月かけて検討する商材を提供しているという点を共有し、福田氏の話が進められた。

 特徴的なのは、8つの層に分かれたファネルだろう。自社のデータベース上にない、つまり匿名の状態(Anonymous)から商談成立した状態(Customer)までがMA上できちんと管理され、それぞれで定義されたステージに合わせたコミュニケーションがMAを通じて行われることになる。そして、ファネルの各層にマーケティング、インサイドセールス、営業に役割が分担され、役割にあったツールを用意している。

 福田氏は続けて、コンバージョンの手前にあたるファネルをTOFU、MOFU の2段階に分け、踏み込んだ説明を始めた。TOFU(Top of the funnel)と呼ばれるゾーンでは、主に見込み客をどう次のステージへと引き上げていくかに対応する。特にここで重要となるのが、リード獲得時の情報に基づくスコアリングである。

 マルケトのMAでは、「獲得リードソースによる重みづけ(電話、インターネットでの問い合わせ、広告経由など)」「役職による重みづけ(マーケター、営業、IT部門、経営層)」「プログラムステータスによる重みづけ(自社イベントの参加状況など)」という3つの重みづけを掛け合わせて、各顧客にスコアの高低を付けて管理する。

外部リソースとして、マルケトをうまく利用してほしい

 TOFUからよりコンバージョンに近いフェーズがMOFU(Middle of the funnel)である。

MQLはマーケティングクオリファイリードのこと

 

 「MOFUは、価格情報を2度見にきているなど、検討フェーズのレベルが高い顧客です。ここで、エンゲージメントプログラムを実行します。エンゲージメントプログラムは、One to Oneマーケティングのように100人に100通りを用意するのはなく、BtoBかBtoCか、スタートアップかといった大きい集団に対し施策を行っていきます。

 たとえば、顧客の状態(ファネル)に応じて配信メールの送付タイミングを変えるだけでも、事態は改善されます。他にも、一度送ったメールは同じ相手に送らない自動制御機能を活用するなど、今まで現場のマーケターが苦労してきた点を自動でMAが最適化します」(福田氏)

 マルケトでは、MOFUのゾーンでスコアリングを行うとき、3要素を重視する。それは、「顧客の興味(行動情報)」と「自社との相性(属性情報)」、「今の温度感(活動頻度)」だ。これら3要素を掛け合わせることで、より実態に近い顧客のスコアを算出する。

 行動や属性など、元来は定量化できなかったものを数値化することで、顧客との適切な距離を勘案したコミュニケーションを実現する。たとえば、朝型のユーザーと夜型のユーザー別に管理できるため、送るメールの中身とタイミングの工夫がさらにできる。

 福田氏は最後に「決して、すぐMAを導入すべきとは思いません」と自社のスタンスを表明し、その理由を次のように語った。 

 「まず皆さまが取り組む事業を因数分解することを推奨しています。たとえば、売上がどのような関係性で成り立っている事業なのか。多くのケースでは、Web以外にも店舗や営業、代理店などマルチチャネルで複雑な要因が絡んでいます。それらを明らかにしながら、本当に皆さまにとってMAの導入が適切であるかどうか。根本的なところから話を進めることができると、とても有意義になるかと思います」(福田氏)

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この記事の著者

遠藤 義浩(エンドウ ヨシヒロ)

 フリーランスの編集者/ライター。奈良県生まれ、東京都在住。雑誌『Web Designing』(マイナビ出版)の常駐編集者などを経てフリーに。Web、デジタルマーケティング分野の媒体での編集/執筆、オウンドメディアのコンテンツ制作などに携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2016/12/19 08:00 https://markezine.jp/article/detail/25726