マルチスクリーンへの最適なアプローチが課題

有園:アメリカは視聴の仕方が複雑だから、プログラマティックTVが有効に機能している?
近藤:そう思いますね。日本のように基本的にNHKと民放キー局5局が全国をカバーしているという状況なら、テレビの出稿を自動化するより、むしろテレビとデジタルの最適な組み合わせを考えるべきだと思いますね。
有園:確かに、そうかもしれませんね。今の話は、テレビのコンテンツやテレビCM素材がオンラインにも流れていく前提で話されていますか?
近藤:そうですね。
有園:そうすると、日本でも地上波とオンデマンド、AbemaTVのようなインターネットテレビも出てきている中で、すべてに同じテレビCMの素材を入れてリーチを最大化したいときは、やはりすべてを俯瞰的に見られるツールがないと難しいですよね。
近藤:それは、必要だと思います。メディア環境は違いますが、共通しているのはデジタルが主流になる中で予算を最大限有効に活用してマーケティング効果を上げることなので。ただ日本では、TubeMogulのプログラマティックTVのプランニングシステムが、アメリカの広告主や広告会社に使われているのと同じようには当てはまらないかな、と。
今の課題は、マルチデバイス、マルチスクリーンになっている状況をきっちり読み解いて、どうアプローチすべきかを突き詰めることではないかと思っています。
テレビのプレーヤーとも障壁なく仕事ができる環境に
有園:なるほど。そうなると、各所で以前からいわれていることですが、前提として共通で使える効果測定指標が必要になりますね。
近藤:そうですね。アメリカではニールセンが、テレビ視聴とデジタル視聴の両方を通してオーディエンスのデモグラフィック属性やメディア接触状況を把握し、横断的な効果測定も可能にしています。
日本ではまだそこまでできていませんが、つい先日、米ニールセンと日本のビデオリサーチが提携を発表したので、近い将来に共通指標が使える形につながるといいとは思いますね(参考)。
有園:そうですね。テレビ番組が同時配信でネットでも見られるようになったり、ネットテレビのサービスも増えたりして、ユーザーにとってメディア環境がさらに充実しても、それを有効に活用した広告ビジネスが両輪として回らなければ定着しないと思うので。
また、マーケティングを効率化するという点でも、いずれはテレビとデジタルを横断した自動配信が可能になる時代が来るかもしれないですよね。マーケターがもっとクリエイティビティに時間を割くことができれば、モノが売れる仕組みがもっと生まれて、ひいては経済の活性化につながると思っているんです。
近藤:同感ですね。ずっと広告主や広告会社の側に立ってビジネスをしてきた我々としては、テレビもデジタル化する社会の一員になりつつある今、その環境に対応した使いやすいシステムを提供しつつ、テレビに関わるプレーヤーの方々とも何の障壁もなく一緒に仕事ができる環境を目指したいと思っています。