情報過多の時代、どう届けるかが最大の課題
MZ:揺るぎないイメージを保ちつつOne to Oneを実現するのは、難しくはないですか?
沖野:簡単ではないですが、ラグジュアリーブランドを購入される方はその要望も千差万別なので、一般的な消費材よりも一人ひとりの興味関心や好みに寄り添う必要があると感じています。
そこで大事になるのが、コンテンツです。レクサスのブランドの下に、バラエティに富んだコンテンツをそろえ、興味関心に応じて提供することで、ブランドエンゲージメントを高めたいと考えています。
そうすると、コンテンツが莫大に必要になるので、適したコンテンツをグローバルでシェアすることも、我々にとって重要になってきています。まだ量的に十分とはいえないので、今後さらに充実させたいですね。
MZ:なるほど。そうなると、コンテンツへの接触の仕方も大きく変わっている今、どういった課題を感じられていますか?
沖野:まさに、コンテンツのデリバリーですね。情報過多の時代において、どうやってブランドのメッセージを届けるかが一番の課題です。
今、生活者は否応なくたくさんのメディアに接触して忙しくなり、情報の取得にストレスを感じている部分もあると思います。自社サイトやSNSなどを通して、ファンとのコミュニケーションは取りやすくなっているものの、まだファンでない人に振り向いてもらうのは、ますます難しくなっています。
ユーザーの関心領域から入るantenna*でのアプローチ
MZ:レクサスは万人向けのブランドではないので、オーナーになれる方は限られていると思います。そのあたりのバランスをどうお考えですか?
沖野:我々は高級車の中では比較的ターゲットが広い、“マス・ラグジュアリーブランド”だと捉えています。実際には購入されない方々からも、素敵なブランドだとしっかり認めてもらう必要がある。せっかくオーナーになったのに、周囲に「レクサスって知らなかった」といわれたら申し訳ないですから。
そのため、オーナーになりそうな可能性の高い方にリーチし、フィロソフィーを正確に伝えるのが大事なのはいうまでもありませんが、周囲のマスの方々に対するブランディングも同じくらい重要です。ただ、後者にはメッセージをぐっと薄めないと伝わらないので、同じコミュニケーションではうまくいかないですね。
MZ:すると、それぞれメディアにも向き不向きがありますか?
沖野:そうですね。フィロソフィーまで感じ取っていただける深いメッセージ訴求は、やはり自社サイトが得意とするところです。一方で、まだレクサスに興味がない人にレクサスの話をしても逆効果になってしまうので、マス広告なら一瞬で「あ、素敵」と感じてもらう以上のことは詰め込みません。
Webなら、ユーザーの関心領域に寄り添うアプローチを心がけています。たとえばantenna*でのPR企画は、そういうイメージですね。