「やってみればわかる」そのインパクト
押久保:取り組みの結果、数値はどれほど変化しましたか?また、実際にやってみての気づきなどもお話しいただけますか?

村岡:具体的な数値で言いますと、ブランドリスクの可能性があるサイトの広告出稿を約20%削減できて、インビュー率(ユーザーが実際に広告を目にした割合)は15%改善。VCPM(Viewable Cost Per Mille)は67%改善、CPCも57%改善できました。
ブランドリフトに関しても、6項目ほど(リーチあたりの態度変容効果、態度変容人数、単価、オンライン広告認知、ブランド認知など)の調査をかけたところ、オープンDSPよりプリビッドやPMPのほうがブランドリフト効果が高いという結果が出ました。
やってみなければわからない世界でしたけど、想像以上の結果が出たので社内の説得もしやすくなりました。先日も、社内のマーケティングマネージャーを呼んでこのプレゼンをしたのですが、やるべきだし、やらない理由はないとの言葉をもらいました。他社さんも1回チャレンジしてみたほうが良いと思います。そうでないと、このインパクトを伝えるのは難しいですね。
山口:ネスレ日本さんには個々の指標の改善にフォーカスするのではなく、総合的に使っていただきながら改善をかけていっていただいたことで、効率の高いメディア、効率の高いインプレッションで配信することによって良い効果が出ることが結果に反映されたと思うのですが、これってメディア側としてもかなり良い話になると思うんです。
今後データを使って広告媒体を判断していく機会が増えれば、クオリティの高いメディアであれば広告出稿が増えるチャンスとなりますから。なので、デマンドとサプライの良い循環を回していけるきっかけになる事例にもなったのではと思いました。
村岡:具体的なメディア名はあげられませんが、確かにパフォーマンスが向上したところのPMPには予算を寄せましたからね。
ID単位の管理でリーチ拡大の可能性も

富田:弊社の他の事例になりますが、ログベースでかつユーザーID単位で管理することでリーチを広げる取り組みを行っています。
DMPや第三者配信のユニークIDを使って、ユーザーの累積接触時間やビューアブルな接触回数を見ていき、最適な域まで達するようにリーチとフリークエンシーを調整するやり方です。それにさらに、ブランドセーフティーの要素を掛け合わせていくと、良い面に配信しながら広告接触時間を重ねていくことが可能になります。
接触時間が長ければ当然コンバージョンやブランド認知度の効果も出てきますが、どんなに接触しても反応しないユーザーに広告を当て続けるのでは無駄になってしまうので、DSPとのAPI連携でそういう人たちへの広告配信を自動的に排除するプログラムを今後は作っていきたいんです。
そうするとDSPがまた新しいユーザーを探しにいき、リーチを広げることもできる。このユーザーID単位での管理というのは、今後先々広がっていく可能性があるのではと思っています。
山口:弊社の事例でも、たとえば一定のお客様のキャンペーンで50秒から100秒、閲覧した時間を蓄積したユーザーが1番コンバージョンに適しているというデータがありながらも、そうした人の割合は2%以下。
51%以上がコンバージョンに達するまでに全然満たない時間しか見ていない反面、100秒以上見ているユーザーにあたっているインプレッションの数ってものすごい比率になるんですね。
特にターゲティングをされる際、そこに落とし穴が存在していたりするので、きちんとユーザーがコンバージョンする閲覧時間を蓄積するように配信していくやり方は弊社でもご好評いただいています。
富田:実際、意図的にコントロールして特定ユーザーに広告を配信していくことをやることで、リーチやコンバージョンのボリューム自体が広がっていったという実績は出ています。ユーザーID単位で管理できると、広告接触回数が少ない人の抽出ができるので、その人たちに対してターゲティング設定をしていけばいい。
ただそれを人手で行うのは限界があるので、自動的にユーザーIDをアップロードするプログラムを電通デジタルで独自で作ってやることで、きめ細かく運用しつつも人手を介さずに自動的に更新していくというのを実現しています。
村岡:良質な面をPMPで囲んでいくと、リーチやルックアライクな人たちばかりになってしまいます。ビジネスである以上新規のお客様も広げていく必要がありますが、質を担保しつつその点をどう解決してこうか悩んでいたので、そのような方法があるなら考えたいです。