濃いアナログ施策“懇親会”で、契約数アップ
次に中村氏は、「たまごリピート」というサービスでEC支援を行っている、テモナ株式会社の事例を紹介した。テモナは既存顧客を分析してペルソナを設定しており「事業を始めた人」「事業がうまくいかない人」「これから通販を始めたい人」「通販がうまくいっていない人」といった成長フェーズにあわせてコミュニケーションを設計して顧客化を推進している。
「なかでも、これから通販を始めたい人のためにセミナーを開催していますが、特徴としては、セミナー後に必ず懇親会まで開催していること。テモナさんはECの成長企業なので、どちらかというとデジタルで効率的に一気にコミュニケーションを取って顧客を増やしていそうですが、実はこういったアナログな取り組みもされています。デジタルとアナログを組み合わせたマーケティングで成長を実現しているんですね」(中村氏)
懇親会に参加した企業の受注率は、高いという。ECを始めるかどうかで迷っている人や、不安で踏み切れない人が、懇親会で膝を交えて話すことで不安が解消されて、契約に至るのではないかと中村氏は考えている。
ターゲット・フェーズ・アクションでマーケティングを見直す
テモナがマーケティングの成長のために重視している要素は、「ターゲット」「フェーズ」「アクション」の3つだという。
まず、「ターゲット」について、テモナは「これからECを始める人」、つまり認知はしていて「興味・関心」「比較・検討」段階の人向けにはセミナーを開催し、ニーズを喚起し、アナログな場で自社とのつながりを感じてもらっている。ここでは契約には至らないので、あらためて「比較・検討」段階の会社には電話でフォローする。
また、既存顧客についても業種や従業員数を分析して定義し、見込み顧客とのギャップを調査している。「これをちゃんとしてらっしゃる企業さんは少ない。でもやらないと、たとえば既存顧客には製造業で500人以上の会社が多いのに、マーケティングしてリードを取ってコミュニケーションしている相手は、中小のサービス業だった、などというズレが発生することがあります」(中村氏)
そして、顧客が購買するかどうかを判断する「論理的理由」と「情緒的理由」をまとめておく。その上で、契約をするかしないかのところで、アナログのアプローチを投入すると有効だと中村氏は語る。
「顧客は、導入したら成果が上がるとわかっていても、踏み切れないことがある。そこには、感情の盛り上がりが足りないという、情緒的な理由があるのです。情緒的な理由の克服にデジタルは弱い。一方、アナログはそういった情緒的なところに働きかけやすく、影響が強く出るのです」(中村氏)
「フェーズ」については、「認知」「興味・関心」「比較・検討」「商談」というパーチェスファネルのもと、ROIが高くなるのは受注に近いフェーズだというのがマーケティングの鉄則だ。たとえ営業との調整が面倒だとしても、商談のサポートにマーケターは力を入れるべきだと中村氏は強調する。
最後は「アクション」だ。まずはデジタルとアナログの特性を再確認して、既に行っているデジタル施策とアナログ施策をつなげるべきだとした。
「アナログもセミナー、懇親会、イベントと、いろいろな手段があります。そういったコミュニケーションをデジタルと組み合わせてもっとやっていくべきです」(中村氏)