最初のハードルを下げ回遊する全体を設計
――確かにカメラは製品の特性上コミュニティ化がしやすいと思いますが、いずれかの商品を切り口にして他の領域へとシナジーを生む施策はありますか?

はい、それも重視している施策のひとつです。前述の「購入直後の3ヵ月」に通じますが、たとえばこの時期のアプローチでは、領域をまたいだ提案も積極的に行っています。商品への関心をさらに喚起していくためにも、新しい楽しみ方や使い方の提案は非常に有効ですね。PlayStation VRを購入されたら、高音質のヘッドホンはどうかとか、αでも実はBRAVIAの大きなスクリーンで作品を見ると精彩感が違います。こういった、商品をより楽しむ提案はリアルのソニーストアでも体験できるようにしています。
――では、ファン作りやコミュニティマーケティングの将来像をうかがえますか。
たとえばID登録や直営店への来店など、お客様からすると少しハードルが高いかもしれないなと思います。そこで、複数の商品ブランドと多岐にわたる商品群のそれぞれで多様な接触機会を用意し、どこかから一歩入っていただき、体験を通して徐々に距離を縮めていく。同時に、関心が離れて休眠顧客化するのも防ぐようなコミュニケーションを行う。そうした環境づくりが顧客コミュニケーションにおいて最も大事ですし、ひいては商品のカテゴリーをまたいでソニーのファンになっていただくことにつながるので、タッチポイントを有機的に連携させた全体設計が重要だと思います。
リアルとデジタルの連携も、そのひとつですね。ECだけで購入されている方も一定数いて、ある程度の支持があると捉えていますが、そうした方が一度リアルなソニーストアにご来店になると、ソニーの体験価値がぐっと上がります。年代や興味関心など個々のニーズに合わせて継続的にコミュニケーションし、常にお客様とソニーが近い存在であり続けることを目指します。