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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

“コト”軸でLTVを高める ソニーが描くファン化の設計

地域で存在感増すソニーストアの役割

――なるほど。オフラインの場だと、いかがでしょうか?

 大きいのは、全国5ヵ所で展開しているショールーム兼直営店の「ソニーストア」です。2000年に直営ECサイトをオープンし、少し遅れましたが、リアルならではの商品を触って体験し、そのまま直接購入することのできる場として2006年に開業しました。今は東京、名古屋、大阪、福岡と、今年4月にオープンした札幌を加えて5店です。

ソニーストア
ソニーストア

 ここでは販売もしますが、プライオリティが高いのは、納得できるまで商品を触っていただくことです。もちろん量販店でも商品体験はできますが、たとえば高音質を気の済むまで体験していただくには視聴環境が大切です。ソニーストアではハイチェアーのカウンターも用意して、座ってじっくり試していただけます。また、通常、新商品は発売後にしか実機を見られませんが、ソニーストアでは商品発表の翌日に新商品を展示するので、コアなファンの方々はその日に来てくださいますね。そうしたガジェット好きの方、ハイアマチュア層からの情報発信も、とても重要です。

 また、その地域で活動するプロカメラマンによる作品紹介や、ソニーミュージックと連携したアーティストのインストアライブなどのイベントも積極的に行っています。地域の量販店とも、たとえばそこでカメラを買った方に、ソニーストアでの無料体験会に参加していただくなど、連携して関係を築いています。こうした形で、地域におけるソニーの存在感を高めるのに役立っていると思います。

――この、オンラインとオフラインの取り組みは連携しているのですか?

 そうですね、その点もとても重視しています。前述の、タッチポイントへの接触というのは、オフラインもオンラインも含みます。今のお客様は、様々な情報のタッチポイントを行き来しているので、回遊できる環境を整備するというイメージですね。

 具体的にはユニクロさんや無印良品さんと同じような仕組みですが、My Sonyというアプリをインストールしていただき、お客様にID登録を促しています。リアルのソニーストアではMy Sonyアプリでチェックインしていただき、興味のある情報やイベント情報をタイムリーにプッシュして来店を促しています。まだ、アプリやデジタル情報に抵抗がある方もいるので、プラスチックの会員カードも併用していますが、いずれ統合していく考えです。

αを軸に広がるファンコミュニティ

――ファン同士をつなげてコミュニティ化を図る取り組みなどはあるのでしょうか。

 はい、顕著なのはやはりαですね。カメラはまさしく、買ってから楽しく学んでいくことで顧客体験が充実していく特性があるので、前述のプロカメラマンを講師に招いたセミナーなどを通じて、参加者同士でコミュニティも生まれます。そもそも地域にカメラサークルはたくさんあるので、その方々にスペースを提供するなどして、αファンの集いの場にもしています。

 αは別途、オンラインに「αcafe」というコミュニティサイトを設けて、ここで毎月テーマを決めて作品投稿を受け付けたり、選出作品をソニーストアで展示したりといったオン・オフの連携を常時行っています。これはこれで、会員登録をすれば投稿できるので、写真起点のソニーへの入り口といった位置づけでもあります。

コミュニティサイト「αcafe」
コミュニティサイト「αcafe

――そうなんですね。カメラは確かに、リアルな拠点を中心に活気あるコミュニティが生まれるのが想像できます。ただ、冒頭でLTVの向上に注目というお話がありましたが、こうしたオフラインの場がどれだけLTVに貢献したかといった指標をとるのは難しいと思うのですが。

 まさにそうで、ソニーストアだけの単独の成果を測るのは難しいですし、利益追求の場ではないのですが、でも、実際にストアの売上は伸びており、ソニー全体の業績に貢献をしていると捉えています。

 ソニーストアでは、どこで買っていただいてもいいというスタンスです。複数の施策でID登録を促し、“ソニーのメンバー”になっていただいて、継続的に適切な情報を提供することを重視しています。買っていただいた後のコミュニケーションこそ大事にして、ソニー商品がある生活が充実するように努め、また何かを買っていただければ、という考えですね。

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最初のハードルを下げ回遊する全体を設計

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この記事の著者

市川 明徳(編集部)(イチカワ アキノリ)

MarkeZine編集部 副編集長
大学卒業後、編集プロダクションに入社。漫画を活用した広告・書籍のクリエイティブ統括、シナリオライティングにあたり、漫画技術書のベスト&ロングセラーを多数手がける。2015年、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。漫画記事や独自取材記事など幅広いアウトプットを行っている。
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※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/06/07 10:52 https://markezine.jp/article/detail/27640

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