経営と“握って”いないマーケターは、つらい
――その“正しく”とは、どういう意味合いなのでしょうか?

マーケティングが本当に真価を発揮できる、といった意味でしょうか。単なる小手先の手法をオペレーション的にこなすのではなく、会社にとって必要なメッセージを社内外に伝えるドライバーになる、ということですね。
マーケティングの社内での見られ方って、少し難しいところがありますよね。広告を多く出したりしていると特に、お金を使う部門だと思われている。でも本当はお金を使うためなんかじゃなく、皆、メッセージを伝えたいと思って、そのメッセージが会社にとって必要だと思っているから様々な活動をしているんです。
そうしたマーケティング活動によって、メッセージが伝わると、会社の認知が変わったと実感することがあります。社内外から実際にそう言われ、会社に対するマーケットの評価が変わり、社内の文化も変わっていく、それこそがマーケティングの目指すところです。社内ではいろいろな立場がありますから、意見も様々で当たり前ですが、肝心なのは会社としてのメッセージを伝えるための活動であると経営が理解し、その成果を経営がしっかり評価してくれることです。
私の経験からですが、経営と“握って”いないマーケターはつらい。いい仕事ができません。マーケティングが経営の横にいるのか、そうでないかは、本当に大違いです。
事業戦略と呼応するコミュニケーション設計
――なるほど。マーケティングやPRの効果測定はとても難しいですが、それも含めて経営と同じ方向を向いている、そうあるべき機能だと経営がわかっていることが大事なのですね。
私はそう信じています。効果測定がしづらいからこそ、昨今ではデジタルの指標に流れて結果的に小さい評価になっていたり、マーケター自身が予算消化のオペレーション業務に甘んじていたりもします。そうではなく、事業戦略と呼応したコミュニケーション設計を担う部門なんです。
――事業戦略と密接なマーケティングがいかに重要か、よくわかりました。CNS社ではこれから、エンタープライズマーケティング本部がそれを体現する部門になっていく、ということですね。
自分でハードルを上げてしまいましたね(笑)。でも、そうしていくつもりです。
入社してから工場や現場を回って、モノづくりへのこだわりや、営業の顧客へのコミットメントの強さを目の当たりにして、私自身が「すごい!」と驚いてしまいました。その現場が今、IoTやAIなどのテクノロジーを使って変わろうとしているのはとても興味深いです。
見えないところで社会のインフラを支えている、でもそのことは世の中にほとんど知られていません。最近だと、羽田空港に導入された顔認証ゲートも当社の技術です。そのデザインには家電で培ったノウハウが活きている、実はパナソニックならではの製品なんです。
これから超高齢社会で人手が足りなくなり、機械化が進むと、私たちが担う役割は大きくなると思います。その中で、社内にあるコンテンツをマーケットや世の中に発信し、ビジネスに貢献しながら、同時に従業員にはこの会社に勤めていることを誇りに感じられるようにしていきたいですね。ひいては、日本のBtoB事業のマーケティングの事例になったら嬉しいです。
