AIのセグメントがもたらした成果
これまでの統計を使った分析システムでは、人間が重み付けの変数を与えていた。これに対し、AIが搭載されたシステムでは、システム自身が自動的に学習して変数と特徴量を更新する。
もちろん、学習には時間がかかる。ただ、データから自動的に特徴量を抽出し、それをもとに、ユーザが次にどのような行動を取るかの予測までを一瞬で行う。
アクティブコアでは、マーケティング基盤に応用するAIを「ピタゴラス」と呼び、様々な分野で適用を始めている。
たとえば、購買・CVする確率が高い顧客の予測。購入履歴や利用頻度、年代や性別などの属性データ、Web行動履歴など、様々なデータを顧客軸で統合し、AIで分析する。こうして「購入率が高い」と予測される人をセグメントするわけだ。
「あるクライアント企業では、通常のメール開封率は30%から40%だったところ、ピタゴラスでセグメントした顧客層の場合開封率は54.7%となり、コンバージョン率も通常5倍以上に向上しました」(山田氏)
このクライアント企業の場合、コンバージョンしそうな顧客を予測する際、予測に最も影響があったのは、サイト滞在時間とページ閲覧時間だという。Webサイトの効果検証に用いる数値やKPIとして、ページの閲覧回数(PV)を使う企業が多いが、「コンバージョンの予測精度でいえば、『特定ページ群をどのくらいの時間をかけて見ているか』を分析したほうが有効」だと山田氏は説明した。
そのほか、メールの配信時間も「ピタゴラス」を利用して最適化したプロジェクトもある。従来は12時にメールを一斉配信しており、開封率は19.1%だったが、メールの配信時間を個々人に最適化したところ、開封率は29.7%と大きく上がったという。
A/Bテストやレコメンド、幅広い活用が可能
AIによるセグメント作成以外では、メールのA/BテストにAIを活用。通常、A/Bテストといえば、件名やデザインパターンを何種類か用意し、セグメント分けしたユーザに配信を繰り返し効果の向上を目指す。ところがAIを利用すれば、1回のテストで、効果の高いパターンを抽出できるという。
たとえば、メール受信者の20%に対し、「送料無料」という件名のメールAと、「500円OFF」というメールBを送信した。そしてAIが、それぞれのメールの開封率、クリック率を比較し、学習モデルから有意性を自動判定して、本番配信するメールを選び出す。「1回の配信でA/Bテストを簡潔・自動化することができます」と、山田氏は説明する。
また、ディープラーニングによりレコメンドの精度を高めることもできる。通常のレコメンドは、ユーザの直近閲覧履歴やコンバージョン履歴を見て、相関性の高い商品・サービスを選ぶ「協調フィルタリング」を採用することが多い。
一方、ディープラーニングは、同じデータを用いて特徴量を抽出し、類似ユーザの嗜好を洗い出し、その結果を受けてレコメンドを行う。ディープラーニングをレコメンドに適用したところ、マッチング率が大きく伸び、コンバージョン率は20%向上したそうだ。
この時、システムに与えたデータは「性別」「年齢」「商品」「閲覧履歴」「購入履歴」などだ。どの変数がレコメンドの精度に影響を与えたかを調べたところ、閲覧回数や購入回数だけの分析より、「閲覧時間」を加えたほうが精度の向上につながり、さらに「価格」「性別」「年齢」の変数を加えると、さらにレコメンド効果が上がったという。どの変数に、どの程度重みを付けるかは、「AIが自動的に判定している」と山田氏は補足する。