インサイドセールス設立当初にぶつかった壁と乗り越え方
――それぞれインサイドセールス組織が非常にうまく機能しているというお話ですが、成功する前にはやはりハードルもあったと思います。そのあたりのエピソードについてはいかがでしょうか。
小林:最も大きなハードルは、「商談件数は作れても、それがどれくらい受注につながるかわからない」ということでした。スタート直後から安定した商談数は作れていたのですが、そうかといって営業の人数が倍になるわけでもなく、受注するまでにはやはり時間もかかっていたのです。
そこで、営業とインサイドセールスを含むマーケティングチームの中で、効率化に目を向けるようになったことが一番のポイントでした。最初はデータの入力についても、営業側は「すぐ受注できるわけじゃないから」と後ろ向きだったので、私が残業して入力したり、データに残らない商談時のエピソードや相手先の方の情報などをスプレッドシートに記入したりしていましたが、こういうものが蓄積されると、あとで見直して分析・仮説立案ができるようになります。そこで仮説を立てて営業活動をしてみたところ、非常に良い結果が出て、「まずはデータ入力することが大事だ」というカルチャーが芽生えました。
こうした中、営業側から「失注した案件について、その要因を分析したい」というリクエストが出て来るようになったのです。たとえ一度はロストしても、その案件はインサイドセールスが温め、営業側は受注に集中することで、より効率的に動けるようになりました。
水谷:当社はインサイドセールスと営業の間で、営業現場の温度感を共有することが課題でした。うちは関西にも営業拠点がありますが、人数が少ないため支援が必要な状態で、それがインサイドセールスを立ち上げた一因でもあります。ただ、東京にいるインサイドセールスと、関西の営業部隊との間は物理的な距離があるため、お客様の生の声や温度感などは伝えにくく、この課題解決に苦労しました。先ほども説明しましたが、インサイドセールスと営業は目標を共有しており、案件化した後もインサイドセールスが商談を伴走していくので、温度感の共有は大切です。ですが、メールやチャットでコミュニケーションが取れても、温度感などは文字だけではなかなか伝わりません。
そのためWebミーティングや、出張した時に1on1で綿密に情報共有するなど、できるだけ対面コミュニケーションで連携・共有するように心がけました。

インサイドセールスの未来とは
――最後に、両社のインサイドセールスについて、これからの方向性について教えてください。
小林:うちは「再現性のある成功」というミッションを掲げているのですが、ミッションを明らかにすることで「来月も同じ成功を達成するために、今月の成功を振り返ってみよう」という流れが生まれました。キャリアパスとして目指すところは、「仕組みを作ることができる人間」です。振り返りと再現性を実践することで、マーケティングに行ったら「より効果を出す仕組みを作る」、営業に行けば「より売れる仕組みを作る」というように、新しい仕組みを創出できる人材として活躍してもらいたいですし、そうしたキャリアパス作りを目指しています。
水谷:うちはジョブローテーションを推奨しています。小林さんがおっしゃったように、インサイドセールスを経験すると「人とデータを回して仕事を進める」というスキルが付くと思うので、そのスキルを活かせるように、様々な人と人、あるいは部門の間に入って活躍できる人材になってほしいですね。
インサイドセールスを経験すると、「このキャリアを追求したい」という人間が出て来ると思います。うちの場合はインサイドセールスから必ず営業を経験するルートになっていますが、今年(2018年)4月から新たにインサイドセールス内にリサーチ部隊を設け、いわゆる「営業」とは違うキャリアパス作りを試験的に進めることにしました。この一方には、案件化を進めるテレアポ部隊がいます。とりあえずこの両輪で進めながら、新たな道を模索しようと思っています。
――インサイドセールスは、常に進化を続けているわけですね。本日はありがとうございました。