人工知能は経済主体という考え方
「人工知能は、情報/データを消費する経済主体である」と私は考えている。人工知能は、一般的に、電力を消費して生産性を高める機械だという認識だ。しかし、私は、人工知能は、生産もするが消費もする経済主体であると定義したい。そうしないと、「Disruptive Technology (破壊的技術)」である人工知能は、本当に、社会を破壊するかもしれない。
その理由の一つは、人口減少社会の到来によって労働者が減ると同時に、当然、消費者も減るからだ。人工知能やロボットは、労働者が減った場合に、それを補完する労働力になり得る。しかし、人工的な生産力だけ上がっても、生身の消費者が減っていけば経済は停滞する。だから、人工知能にも消費者になって欲しいのだ。
また、人工知能やロボットによって職を失う人たちが増えすぎると、社会全体の有効な所得が減少し、社会的な購買力が低下する。その結果、やはり消費が低迷することになる。そのような事態へのソリューションとして人工知能に、生産者だけでなく、消費者の役割も担ってもらいたいのだ。
9月3日に電通グループが設立した情報銀行「株式会社マイデータ・インテリジェンス」のプロジェクトに、私はこの2年弱関わってきた(参考記事)。
この情報銀行こそが、人工知能を「生産も消費もする経済主体」に変換する重要な社会的機関になり得る。そして、人工知能に情報/データを消費させることは、今注目されつつある「ベーシックインカム」機能を情報銀行が果たし得るとも考えている。本稿では、その理由を紹介したい。
まずは、情報/データの重要性を再確認しよう。ちょうど10月28日から、「データの世紀 混沌の新ルール」という連載が日本経済新聞で始まった。
既に記事を読んだ人も多いだろう。「今後、データが石油になる」「データは新しい通貨だ」など、情報/データの重要性は、以前から指摘されていた。ここにきてやっと、多くの人がその価値に気づき始めた。