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リゾームマーケティングの時代

Googleは情報/データを喰らう怪物だ データの世紀、AI時代における新しい経済構造

ベーシックインカムを自己責任でマネージメント

 『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書 2018)、『AIとBIはいかに人間を変えるのか』(幻冬舎 2018)など、いくつかの文献を漁ってみたが、私の調べた範囲では、説得力のある財源はなかった。

 たとえば、財源候補は、所得税、消費税、相続税、固定資産税、資源税、炭素税、付加価値税、ロボット税など、主に、国民負担率を引き上げる話だった。

 唯一、財政ファイナンス的なヘリコプター・マネー(※)について、駒澤大学経済学部准教授・井上智洋氏が論じている。これは可能性があると思う。ハイパー・インフレーションのリスクだけ懸念されるが、それは制度的な歯止めをかけて、インフレターゲットを設けて運用すればいいと思うからだ。

※あたかもヘリコプターから現金をばらまくように、中央銀行あるいは政府が、対価を取らずに大量の貨幣を市中に供給する政策(出典:コトバンク)。

 ただし、いずれにしろ、中央集権的な権限を使う発想になっている。つまり、この連載で論じている、リゾーム化する社会においては、ピラミッド型の中央集権的な政策以外の方法があるはずなのだ。

 中央の政府が税金を集めて再配分する。あるいは、中央銀行がヘリコプター・マネーを実施して貨幣発行益を国民に配当する。それもいいかもしれない。だが、しかし、リゾーム化した社会においては、分散した自律的な個人がネットワークにつながり、ベーシックインカムを自己責任でマネージメントできる方法もあっていいと考える。

 ベーシックインカムの財源は、『21世紀の資本』(みすず書房 2014)でトマ・ピケティが論じた格差の原因に切り込まなくてはならない、と私は思う。

 ピケティは、資本の収益率は、通常、経済成長率全体よりも大きいので、資本家はどんどん金持ちになる一方で、労働者の所得はあまりに伸びないと論じた。

 かつ、人工知能など破壊的なテクノロジーで、労働者の仕事が奪われていくと、この格差は拡大する一方だ。そして、中央集権的な税金で財源を集めても、それは国民所得のうちの国民負担率上昇やパイの配分比率を変更する話に過ぎない。

 ピケティの論に従えば、全体の経済成長率は資本の収益率よりも小さい。経済成長としての国民所得を分け合っても、資本の成長率には、どうしたって、敵わない。

 要するに、ベーシックインカムは、資本収益率の果実を、一般の労働者に配分するのがいいと思う。中央集権的な税金だけが財源ではあるまい。

 なぜなら、Googleなどの成長を続けるIT企業はグローバルな存在であり、国際的な租税法の枠組みの中で、日本に法人税を支払っていないことが多い。すなわち、Googleの成長の果実は、普通の日本企業と同じようには、日本の税収になっていない。かつ、Googleの検索サービスは無料なので、その価値は貨幣換算されておらずGDPに算入されていない(念の為、広告料で算入されているという話もあるので指摘しておく)。

 さらに、そもそも、「失われた20年」という時代、経済成長率は低かった。その低成長の財布に依存して、ベーシックインカムを賄うという発想ではなくて、他の考えがあってもいい。

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マイデータは貨幣価値を発生させる

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/11/19 15:00 https://markezine.jp/article/detail/29688

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