ITの巨人Googleは成るべくしてなった

しかし、20年も前の創業時から、その重要性を見抜き、ビジネスを拡大させてきたのが、ITの巨人、Googleである。Googleのミッションは、IT業界ではあまりにも有名だが、改めて確認したい。
「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること(出典)」
このミッションは、私自身、Google在籍当時、日常的に意識していた。私の感覚では、Googleの社員の多くがこのミッションに共感していたと思う。そして、私の場合、Google Japan の営業戦略を担当したことも一因だと思うが、このミッションやビジネスモデルについて、業務の中で繰り返し考えることが多かった。
Googleのビジネスモデルの主軸は、AdWordsと呼ばれていた広告ビジネスである(最近「Google広告」に名称変更した)。このビジネスモデルが、非常によくできていて、莫大な利益を生んでいることは周知の事実だ。
Googleは文字通り、世界中のWebサイトの情報を収集している。そして、それを、世界中の人がアクセスした際に、使いやすく整理して表示する。その情報の一部として、広告も表示する。それも、ユーザーの役に立つと思われる広告を優先して表示する。
そして、そこに集まってくる膨大な数のユーザーの履歴を収集し、できる限り適切な情報を各ユーザーに表示しようと努力する。一人ひとりに、できるだけ有益な情報を提供したい。そのため、各利用者の個別の行動履歴をベースにして提供する情報を、それぞれ個別に微調整して表示している。
これを私なりに、既存のマス広告の代表のテレビと比較して、図にしてみた。

この比較図の詳細な解説は次の連載で書く予定だが、今日は要点だけ説明したい。
まず、テレビの場合、人間が編成した番組コンテンツを軸に、その本編の前後や中間の枠に人間の手売りの広告を挿入する。視聴者の視聴ログなどは使っていない。
一方で、Googleは、「媒体」「広告主」「ユーザー」の情報/データを収集・分析し、ほぼリアルタイムで表示画面を動的に調整しながら、三者のニーズをできるだけ満たそうとする。ここでは、情報/データが命であり、それがGoogleの競争力の源泉だ。
ある意味で、Googleは「情報/データを喰らう怪物」だ。私は在籍当時から、Googleのことを情報/データを食べながら、どんどん大きくなっていく巨大な怪物のように感じていた。もちろんそれは、素晴らしいサービスを無料で提供してくれる。ただ、その破壊的な影響力は、社会の中で徐々に軋轢も生み出すようになっていた。
その怪物の頭脳は、人工知能だ。人工知能は、大量の情報/データを捕食し、どんどん賢くなっていく。そして、生産力を高め、我々の生活をますます豊かにしてくれている。