エバンジェリストとコネクタは組織内で活動する存在
企業や団体などの組織内外において、マーケティング目的で個人が表に立つ存在としては、主に「コネクタ」「エバンジェリスト」「アンバサダー」「コミュニティマネージャー」の4つが挙げられます。それぞれの定義について、代表的な人物や事例とともにご紹介していきます。
まず、「エバンジェリスト」です。IT業界では、マイクロソフトのエバンジェリストである西脇資哲さんや澤円さん、元アマゾンデータサービスジャパンの玉川憲さんがよく知られる存在です。役割としては複雑な技術や業界のトレンドをユーザーに向けてわかりやすく解説し、結果的に自社の技術力や提供する価値の啓発を図ります。
参考:「プレゼンはクール&セクシーに!」日本屈指のエバンジェリスト西脇氏インタビュー
私がSansanで担当してきた「コネクタ」と呼ばれる役割は、エバンジェリストに近いものですが、人を媒介にして社外とのリレーションシップを構築し、時には情報を発信し、ある時は情報収集の機能も担います。関係構築する対象は、メディアだけではなく業界団体、顧客、専門家、行政など、様々なステークホルダーで、より良い関係を築いていくことが主な任務です。

組織外で役割を担うアンバサダーとコミュニティマネージャー
コネクタとエバンジェリストは、主に組織内で擁立します。一方で外部の人にその役割をお願いする手法もあります。たとえば、ネスレのネスカフェは、「アンバサダー」を通じ一般の人を巻き込んだプロモーション事例としてご存知の方も多いと思います。「アンバサダー」は、直訳すると「大使」です。意味としては「熱烈なファン=純粋に企業のブランドや商品を応援する顧客」となります。この場合、製品やサービスの良さを伝える人は組織外にいて、特定の商品やブランドに強い愛情を持って自発的に情報を発信してくれる人たちです。彼らを「公認応援団」として製品の発信に協力してもらいます。芸能人などの有名人がブランド大使として任命されることもありますが、最近はいかに熱意を持って良さを伝えてくれるファンを擁立するかが求められています。一般消費者・ユーザーの目線でサービスの良さを語る方がリアルだからです。
最近になり注目を集めているのは、コミュニティマーケティングで、「熱烈なファン」を集め、サービスの良さを発信してもらう手法です。「アンバサダー」施策と似ていますが、コミュニティとして運営する点が特徴的です。これらをまとめるコミュニティマネージャーが重要で、コミュニティマネージャーは社内から擁立される場合と、社外、つまりユーザーの中から選出される場合があります。
参考:SNS活用やインフルエンサーマーケティングだけじゃない!コミュニティマーケティングってなんだろう
また、マネージャー自身が熱烈なファンである場合と、あくまでもコミュニティを支える黒子として徹するケースがあります。AWS(Amazon Web Services)のマーケティングを統括していた小島英揮さんが仕掛けたのは、後者のやり方です。
参考:自走化して日本組織までできちゃった!アマゾン ウェブ サービスのコミュニティ運営事例
この他、インフルエンサーといった存在も影響力を高めています。自身のブログやSNS、メディアへの露出などで、世間や他の消費者の購買意思決定に大きな影響を与える人たちです。最近ではYoutuberなど動画メディアを使ったインフルエンサーが数多く登場しています。
参考:若い女性は広告より"インフルエンサー"を信頼/YouTuber活用の施策、浸透度は?【WOMJ調査】
いずれにしても、「個人の視点・立場」からサービスや製品の良さを発信することで、「自分ごと」の目線で情報を受け止めてもらうことが重要になります。そして、企業からすると、製品の種類や訴求したいターゲット層によってこれらの手法を使い分けることが求められます。
この連載では、中でも社内から起用することで実現しやすいエバンジェリストについて説明していきます。