充実した搭乗体験に立脚したブランド育成とユーザー拡大
――先ほど、競合の動きも把握できるようにというお話もありましたが、実際に現在マイレージやポイントプログラムによる経済圏が既にいくつも確立しています。その中でこれまで培われた「ANAマイレージクラブ」のブランド力を梃子に、単に“お得”というオファーに引かれるだけではない心理的な態度変容や好意度の醸成を行っていくのは容易ではないと思います。そのあたりはどのようにお考えですか?
そうですね、ポイントビジネスは確かに多いですが、逆にその点は航空事業から生まれたプログラムであることが有利に働いているとも感じています。強い愛着を持ってくださっているお客様、コアなお客様は、ANAの飛行機の搭乗体験がマイレージプログラムの利用に紐付いているからです。数秒のレジ対応で、ごく少額からポイントが貯まるような世界観にのみ立脚しているわけではないので、その点では顧客層の質で差別化できていると思っています。反面、原点にある「ANAの飛行機を利用して良かった」という体験価値を損なわないコミュニケーションやサービス展開をしていかねばと、留意する部分でもあります。
これから、グループ全体の顧客基盤を活かしたノンエア事業を拡大していくにあたって、当然ながら航空マイレージから入った方にはそれこそ少額でマイルが貯まっていく日常的な利用を促し、またそうした接点からの顧客流入も積極的に進めていく考えです。その過程で、航空会社としてのANAのイメージをどの程度意識していただくべきか、どうブランディングしていくのが最適かは模索中ですが、ANAグループならではの機能的価値と情緒的価値を提供したいと考えています。

リアルとデジタルをつなげて相乗効果を図る
――2019年は具現化の年というお話がありました。データベースの完成と本格運用を通して、具体的にどういったことに取り組まれる考えですか?
具体的なことはまだお話しできないのですが、リアルとデジタルをつなげて体験価値を提供していければと思っています。
先ほど申し上げたように、やはり現時点でのANAグループの強みは航空事業になるので、一足飛びにそこから離れて「日常生活の各所でお役に立ちます」というのは、少なくともこの中期経営計画内では現実的ではないと感じています。様々な経済圏ビジネスにおける具体的なポジショニングも、手探りです。であるなら、まず強みを活かそうという考えで、トラベル利用も出張利用も含めて航空事業のお客様に対して日常の接点を増やしていく方向で、進めていく考えです。WebサイトやECなどのデジタルで接点を持った方と引き続きデジタルでコミュニケーションを取り続けるのも、一つの関係構築ですが、やはりリアルな現場のあるビジネスに立脚しているので、双方を行き来していただきながら、関係を深めていきたいですね。