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「顧客情報、正しく使えていますか?」Sansan×Salesforceで実現する一貫した顧客体験

 サブスクリプションモデルの台頭で「いかに長く使い続けてもらうか」という長期的な視点が必要になったことから、近年、最適な「顧客体験(CX)」を提供し続けることが重要なテーマとなっている。そして、一貫したCXの提供に必要とされる「正確な顧客情報」を、常に最新の形で提供しているのが、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」を提供するSansanだ。同社はSalesforceとの連携により、新たな価値を生み出すことに成功した。両者の担当者に、詳細を聞いた。

モノ・サービスの販売が「始まり」に

(写真左から)株式会社セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 プロダクトマーケティングディレクター 田崎 純一郎氏/同 マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャー 秋津 望歩氏/Sansan株式会社 Sansan事業部 プリンシパルデータソリューションアーキテクト 久永 航氏
(写真左から)
株式会社セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 プロダクトマーケティングディレクター 田崎 純一郎氏
同 マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャー 秋津 望歩氏
Sansan株式会社 Sansan事業部 プリンシパルデータソリューションアーキテクト 久永 航氏

――本日は、SansanとSalesforceの連携ソリューションについてお伺いしていきます。まず始めに、BtoBマーケティングの現状と課題感を教えてください。

久永:モノ・サービスの提供形態がサブスクリプション型へ変化していることにより、モノ・サービスの販売は「終わり」ではなくて、「始まり」になりました。「いかに長く使い続けてもらうか」という視点が必要になったことから、近年「顧客体験(CX)」の向上が大きなテーマとなっています。これからは、「契約前からサービス提供後まで正確に顧客情報を把握し、その顧客の状況に合った体験を提供していく」ことが重要になってくるのではないでしょうか。

田崎:一貫した顧客体験を提供していくためには、「マーケティング」「営業」「カスタマーサポート」というように、部署毎で情報が切り離されていることが課題ですね。大事なのは、「お客様の欲しい情報を・欲しいタイミングで届けること」。そのためには、部署間の枠組みを超えた情報共有が必要になってくると思います。

秋津:今の話に加えて、BtoBのマーケティングは営業がクロージングしないと成果が見えないということもあり、メールのクリック数やCVR、イベントの来社数のようなシングルポイントのKPIで考えることが多いことも問題だと思います。「メールを送って、イベントに来てもらい、インサイドセールスがフォローし、案件化し、お客様になる」という一連のファネル、すべてのプロセスをつなげて考えていかないと、根本的な解決にはならないのではないでしょうか。

「すべての顧客接点」からの情報を正しく理解する

――では、一貫した顧客体験を実現するためには、どうすればよいのでしょうか?

久永:一人のお客様が複数チャネルで接点を持った際でも、「同じ企業の・同じ人物である」ことをきちんと把握することが重要だと考えており、当社は「顧客データHub」(2019年2月19日時点では、「SansanCI」という名称でサービスを提供)という顧客データの統合機能の提供を昨年より開始しました。この機能は、複数のシステムに分散する顧客データの名寄せ・共有を支援するサービスです。

 たとえば、展示会にはプライベートのメールアドレスで申し込み、セミナーには会社のアドレスで申し込むなど、接点が違えば同じ人かどうかがわからなくなることがありますが、一貫した体験を提供するためには、すべての顧客接点の情報から「顧客の状況」を理解した上で、効果的なアクションを行うことが不可欠です。

田崎:私たちは営業支援の「Salesforce Sales Cloud」(以下、Sales Cloud)と、BtoBマーケティングの自動化を支援する「Pardot」という二つの製品を提供しており、名刺情報を含む顧客情報に加えて、「その人とどんな話をしたか」というような行動情報も管理しています。この二種類のデータに、「誰もがいつでもアクセスできる」ことが対応の一貫性につながるのではないでしょうか。

 またBtoBの場合は、個人へのアプローチではなく、「法人」という人格に対してアプローチをしていくわけですから、「法人毎のデータ」と「法人を構成する個人のデータ」、その両方のマネジメントを実現することが重要です。それも、全部門が同じデータを見て、最新の情報を共有できるようにしなくてはなりません。

秋津:人、部署、案件のデータは毎日のようにアップデートされています。持っている情報を常に入力するとなると、手作業では大変です。すべてのデータを連携できるソリューションをうまく使い、人間は作業ではなく、アウトプットに集中すべきですね。

Sansan×Salesforceで「真の顧客マスター」を実現

――続いて、連携ソリューションについてお伺いしていきます。まず概要を教えてください。

久永:連携により、Sansanの名刺情報とSalesforceの会社情報や顧客情報を一つにまとめることができるようになります。通常、データマネジメントで最も難しいのが「名寄せ」です。ユーザーがWebフォームから入力した情報は、表記のゆれなどにより正確性も落ちることから、オペレーターが正しく入力した名刺情報とは泣き別れてしまうことがよくあります。

 Sansanの高度な名寄せエンジンを用いて名刺情報と連携させれば、データは常に正規化されたものになりますから、Salesforceにて効果的な打ち手を検討するための「真の顧客マスター」が実現します

田崎:一つの顧客マスターができれば、いつでも誰が何をしたかがわかるようになり、組織にまとまりができるようになるはずです。SalesforceのソリューションはBtoBマーケティングからカスタマーサポートまであるので、部署の連携が進むようになるでしょう。

テクノロジー活用で見えてくる、新しい可能性

――連携によりどのようなことが実現できるのでしょうか?

久永:Sansanには会社全体での人脈情報が一元化されるので、今までは見えなかったターゲット企業の役員との接点や購入のキーパーソンなどの情報を、Salesforce側で共有できるようになります。

 Sansanのデータはオペレーターが正しく入力したきれいなデータですから、営業の入力負荷を軽減することができますし、名刺にある個人に付随した人事異動の情報も相互に引き継ぐことが可能になります。

秋津:Sansanには、これまで営業はじめ様々な接点から集めた顧客情報が集約されていると思います。Salesforceとの連携による最大の利点は、それが実際に「どのぐらい案件につながったか」を可視化できる点ではないでしょうか。人力で分析することもできるかもしれませんが、手間も時間もかかります。こうした分析は、テクノロジーの活用で解決をしてほしいです。

田崎:Salesforceのソリューションは、いわば「箱」です。Sansanさんと連携することで、この「箱」にあるデータを常に最新の状態にすることができると思っています。

 先日もある企業に説明していた際、営業担当者がデータをきちんと入力するかを心配する声を聞きました。名刺は会社の資産に相当するものです。だとすると、担当者個人が独り占めしたり、入力を怠ったりするのは一種の業務上「横領」にあたるのではないでしょうか。……これは極論かもしれませんが(笑)、この問題を解決するには、「面倒なデータ入力を簡単にする」ことが一番ですよね。Sansanさんとの連携で、Salesforceの真価が発揮できるようになると思います。

SansanとSalesforceの使い分けは?

――SansanとSalesforceを組み合わせて使う企業は、今後増えてきそうですね。いちユーザー企業として、SansanではSalesforceをどう使い込んでいるのでしょうか。これから検討する企業にとって参考になりそうです。

秋津:Salesforceのお客様でもSansanで名刺を管理する企業は増えています。提供企業であるSansanがSalesforceとどう連携し、使い分けているか気になる人は多いのではないでしょうか。

久永:顧客情報を見るときはほぼSalesforceですね。単に連絡先を知りたい場合や、ターゲットアカウントとした法人の誰に会えているか、どんな接点があるかなど、営業活動に関わっていない人の情報を見る時はSansanを見ています。

秋津:接点情報はSansan、詳しい案件や契約の情報はSalesforceと使い分けているのですね。攻め先をターゲティングする場合は、どちらを使うのですか?

久永:顧客の誰に会えているか、全社でどんな接点があるのかなどの人脈情報や、顧客企業や人物に関するニュース、連絡先などはSansanを見ています。契約や案件の状況など、顧客を俯瞰した情報を見る時はSalesforceで見ることが多いですね。Sansanのターゲティングは人物と企業をクロスして行うのですが、企業属性情報はSalesforce側から見られるようになっているので、そのやり方が便利なのです。

秋津:その後の受注や売上など、KPIはSalesforceで分析をしていくという形ですね。

久永:KPIでは、獲得したリードが受注にどの程度貢献したかを重視しています。どんなにリードの数を増やしても受注につながらないと意味がありません。ですから、各部門が部門を横断した指標を持ち、PDCAを回しています。さらに、私たちのサービスは継続してもらうことが重要なので、1年で解約されるような場合は、受注のとり方が悪くないかを見直すようにしています。

より「リアルな顧客理解」の仕組み作りに向けて

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

久永:実はSansanとSalesforceの二つを連携させる前は、人脈情報と案件情報が分類している状況でした。お客様の状況を正確に知るには、これら2つの情報が一元化されていることが必須であり、別のデータベースで管理していたポストセールスのデータも併せてSalesforceへ一元化を行ったのです。

 データベースが別だった頃は、実際はコンタクトや契約があるお客様であるにもかかわらず、リードとして認識されているデータが残っていたのですが、一元化により、何らかの顧客接点をもっているデータはすべてSalesforceの取引先に紐づいている状態に変わりました。今後は売上や取引データと連携させ、よりお客様をリアルにかつ俯瞰的に把握できるような仕組みを作ることを目指していきたいと考えています。

田崎:先日2月中旬にインサイドセールス向けの新機能や、PardotのAI機能をリリースしました。こうしたアップデートも活用して、情報取得から契約締結までの一連の流れを強化していき、クライアント企業の成果をサポートしていきたいです。

秋津:2018年は営業が使うAIソリューションのリリースが中心でしたが、今年はPardotでもAI機能が充実する予定です。ただし、AIを活用するためにはAIが学習するためのデータがないとスタートラインに立てません。メールをクリックしたか、メールからどれだけ案件につながったかは今でも把握できますが、最終的にどれだけリピートにつながったかのインサイトを得るには、プロセス全体を学習するデータが必要です。もっと言うと、学習データは最新かつきれいなデータでなければ間違った学習をしてしまいます。

 なので、AIを使い始めるためには、データを貯めることから取り組んでもらいたいと思います。そのために私たちパートナーがいるのですから、この二つの連携で「きれいな最新のデータ」を貯めるところから一緒にやっていきたいですね。

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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MarkeZine(マーケジン)
2019/02/19 10:00 https://markezine.jp/article/detail/30192