実証実験を通じて得られた5つの学び
――日本郵便では、リクルートジョブズや富士フイルム以外にも様々な企業と実証実験を行ってきたと聞いています。先述の学びも含めて、実証実験で得られた学びをまとめて教えてください。
実験を通して得られたのは、以下5つの学びです。
1.組み合わせ効果はBtoBもBtoCも同じ
2.DM単体ではなく、組み合わせことで相乗効果が出る
3.DMとメール。先に送るならDM
4.とにかくタイミングを意識すること
5.パーソナライズはシナリオが命
1つ目は、基本的にBtoBもBtoCも効果の出方は同じということ。必ずDMを組み合わせることで効果は出ます。もちろんLTVの観点でROIが合うのか検証する必要はありますが、基本的にはプラスオンの効果が出ます。しかも、多くの場合で数倍近い数値の増加が見られます。
2つ目と3つ目はこれまでの事例で明らかだと思います。そして4つ目は、先ほどコミュニケーションの要素について話しましたが、近時一番重要なのはタイミングです。デジタルマーケティングに関わるとクリエイティブとターゲットばかりに目が行き過ぎるように思います。それよりも、適切なタイミングを模索すべきだということです。
5つ目は、そのままですが、パーソナライズにはシナリオが命です。パーソナライズの方法は商材にもよりますし、手法も様々あります。それでも、シナリオを最初に固めておけば効果の最大化はもちろん、バジェット(予算・経費)の最適化もできます。
これからは「オムニメディア」の時代に
――マーケターが「デジタル×アナログ」の施策に取り組む際に、意識したほうがいいことはありますか。
伝えたいのは、「“事例くれくれ君”になるのはやめましょう」ということです。事例がきっかけに実行されるのであれば構いませんが、そもそも動かなければ何も始まりません。たとえ、すぐにビジネス上の結果が得られなくても、レビューできる環境を作れば必ず知見が得られます。つまり、損はしないので、ビビらずやってみることが必要だと思います。
また、これは釈迦に説法かもしれませんが、データドリブンに施策を進めることがこれからのマーケティングには求められます。その中でも直近で大きな課題として挙がっているのは、オフラインの行動データの蓄積、オフラインとオンラインで得られたデータの統合です。いずれにしても、勘ではなくデータドリブンでなければ統合した施策を行っても意味がありませんので、必ず評価できるような設計を作ることが大事だと考えています。
――今後のマーケティングコミュニケーションの中で、注目しているキーワードはありますか。
「オムニチャネル」というワードを、皆さんよく聞かれると思うのですが、これは別にECと店舗の統合に限った話ではないと私は思っています。オムニチャネルというのは、いつでも・どこでも・好きなものを・好きな時に手に入れられる環境を生活者に提供すること。それの1つの手段がECと店舗の統合だったりするわけですよね。
その考え方はコミュニケーションにも当てはまると思います。販売チャネルだけでなく、メディアもオムニ化して生活者中心で情報を届けるべきです。昨今、広告が邪魔者であるというイメージが強まっていますよね? それは、生活者が欲しくないタイミングで、欲しくない情報を押し付けてしまっているからです。
タッチポイントを全部コミュニケーションの軸で捉えたら良いと思っていて、店舗・店員・棚・パッケージ・テレビCM・DMなど、これらすべては生活者とのタッチポイントです。それらのすべてを統合しようと私が考えたのが「オムニメディア」です。
これを実現するためには、シナリオの設計と、オフラインデータとオンラインデータの統合が重要になってくると思います。
デジタルを中心にパーソナライズの取り組みが進んでいますが、アナログでも自動的にパーソナライズを行うことができるようになっています。「デジタル×アナログ」を統合してシナリオを設計することが本当にできるようになっているので、まずは挑戦してみて欲しいですね。