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日本郵便の実証実験プロジェクトから見る「デジタル×アナログ」の未来と活用

2019/02/25 10:00

 「デジタル×アナログ」の組み合わせこそ、コミュニケーション設計には重要であると考え、様々な形でこの難問に挑んできた日本郵便。同社は3年前からプロジェクトを推進し、様々な企業と連携し実証実験を行い、PR活動や産学協働の試みを通じて様々な発見や学びを繰り返してきた。本連載では全3回にわたり、プロジェクトを振り返りつつ、これからの「デジタル×アナログ」への期待について明らかにしたい。初回は、発足当時からプロジェクトに参画するイーリスコミュニケーションズの鈴木睦夫氏に語っていただく。

「デジタル×アナログ」が実行されない理由

――これまで、日本郵便は「デジタル×アナログ」の実証実験などを通じて、その効果の高さを伝えてきました。少しずつデジタル×アナログの重要性は広告主の間で浸透しているように思うのですが、鈴木さんから見ていかがでしょうか。

 確かに浸透は進んでいます。日本郵便として「デジタル×アナログ」の重要性を説き始めたのが2015年頃ですが、当時はちょうどMA、DMPという言葉がバズワードとなっているタイミングで、デジタルマーケティングの勢いもすごかった。周りのマーケターがデジタルの世界に閉じていく中で、デジタルとアナログの融合について発信していく必要性を強く感じていました。

イーリスコミュニケーションズ株式会社 Co-Founder/エグゼクティブプロデューサー鈴木 睦夫氏
イーリスコミュニケーションズ株式会社 Co-Founder/エグゼクティブプロデューサー鈴木 睦夫氏

 しかし現在では、オフラインとオンラインの施策をどう統合していくかはマーケティング業界全体の大きな課題と言い切っても過言でないほど議題に挙がりますよね。統合しなければならないという認識が広がったのだと思います。

――やらないといけないのはわかっているが、実行には移せていない、というのが課題になっているのでしょうか。

 そうですね。その要因には、実行に移したくても移せない環境の問題が大きいと思います。現在、多くの企業ではデジタルとアナログの部門は分断されています。そのため人材や知見、予算といったものすべてがサイロ化しているのです。

 その中で双方を統合した知見を持ち、統合したコミュニケーションを考えられる人や会社というのは本当に限られている。そのような背景もあり、「デジタル×アナログ」の施策が実行できていないと考えています。

コミュニケーションを分解して検証

――そのような状況の中、鈴木さんは「デジタル×アナログ」最適解を導くべく、様々な企業と成功事例を作ってきたと聞いています。その事例をいくつか紹介してもらえますか。

 たとえば、リクルートジョブズさんとの事例は、「デジタル×アナログ」におけるPDCAを回す方法を知るのに良い例なのでご紹介します。デジタルとアナログを組み合わせていく上で、重要なのは各要素でPDCAを回すことです。

 そこでリクルートジョブズさんとは、コミュニケーションを「ビークル/ターゲット/タイミング/クリエイティブ/オファー」の5つに分解しました。その内4つの要素は固定して1つを可変させることで、PDCAを回しました。

 最初に行ったのはビークル(伝達手段)に関するテストです。ダイレクトメール(以下DM)やEメールなどのビークルを評価するものです。他の要素は固定して、ビークルだけ変えて検証したところ、「DM×メール」の組み合わせが1番高い効果を得られたとの結果が出ました。

 続いて検証したのはターゲットについてです。ここでは、「ホットリード(見込み度が高い顧客)/コールドリード(見込み度が低い顧客)」のそれぞれの効果を測りました。ここでわかったのは、どちらのリードでも反応が良かった点です。つまり、コミュニケーションの仕方を変えれば、コールドリードと思われていたリードから案件につながる可能性があることを示しました。

 3つ目に行ったのはクリエイティブに関するテストです。他の要素を固定してDMのクリエイティブを「普通紙/上質紙」に変えてコミュニケーションを試みたところ、特に変化はありませんでした。

 ここでわかったのは、クリエイティブも重要だが、それ以上にタイミングが大事だということ。普通紙でもタイミングが良ければ良い反応が得られます、逆も然りですが。

 そして、5つのコミュニケーション要素の中で、ターゲットとタイミングは技術の進歩によりある程度のコントロールができます。しかし、多くの方は「ターゲティングに関することは細かに設計しているが、タイミングはそこまで……」となっているのではないでしょうか。実はタイミングも非常に設計には重要であることが、この事例からは明らかになりました。


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