SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

MarkeZine Day 2019 Spring

Sansanが解き明かす、カスタマーサクセスからの既存顧客マーケティングの仕組み

マーケティングの3エッセンス

 Sansanはカスタマーサクセスの取り組みをどのように成熟させてきたのか。山田氏は、「マーケティングのエッセンスは『セグメンテーション』『コンテンツ』『デリバリー』の3つにある」と述べ、この3つの視点で既存顧客を対象とするマーケティング施策の内容について解説した。

 まず、セグメンテーションでは「ライフサイクル」「オポチュニティ/ヘルススコア/タッチスコア」「MRR(Monthly Recurring Revenue:月間の売り上げ)」の3つの軸で既存顧客の現状を把握しているという。Sansanでは購入後のライフサイクルを「導入期」「運用期」「活用期」「定着期」の4つに分けている。山田氏は、「1年目に解約される場合は売り方に、2年目以降に解約される場合はカスタマーサクセスに問題があるケースが多い」と述べ、活用期を重視していることを説明した。

 2つ目の軸のオポチュニティとは、アップセルやクロスセルの余地のことを示す。たとえば、社員数100人の会社で契約ID数が30だとすると70のオポチュニティがあると考えられる。ヘルススコアはGainsightで利用状況を「Development」「Engagement」「Adoption」「ROI」という4つの視点でモニタリングしている。たとえば、使われなくなってしまうのは、利用前の推奨設定通りに使っていないからかもしれない。これを利用率や顧客がサービスを使い、投資対効果を出しているかなどを考慮し、総合的に判断している。

 さらに、Gainsight上ではヘルススコアに加え、顧客との距離感を数値化するタッチスコアもモニタリングしている。新規の見込み客との接点がオンラインからオフラインまで幅広いのと同様に、既存顧客との接点もWebアクセスから、動画視聴、オンライン学習システム、オフラインセミナー、イベント参加まで幅広い。さらに顧客ごとの毎月の売り上げデータも加わる。山田氏は「既存顧客向けのコンテンツ提供では、新規顧客向けと比べ多くのデータをセグメンテーションに役立てることができる」と解説した。

サクセスコンテンツとコミュニティマーケティング

 セグメントごとに提供するコンテンツのうち、最も重要なのが事例である。ただし、よくある導入事例ではなく、「Sansanを導入することで会社に対してどのぐらいの価値を提供できているかをテーマとする『サクセス事例』の提供に重きを置いている」と山田氏は語る。

 その理由は、優良顧客に新規顧客を連れてきてもらう際、最も効果的なのが既存顧客のサクセス事例であるためだ。カスタマーサクセスドリブンの購買プロセスは通常のファネル型とは異なり、サクセスできた既存顧客が集まってコミュニティを作り、新規顧客を連れてくるホルン型のものになる。このプロセスでは、コミュニティがリファラル導入を活性化させる重要な役割を果たす。

 Sansanが主催するコミュニティ活動の特徴は、既存顧客を次の3つに分け、それぞれに対して違った機会を提供していることにある。

・A層:プロダクト開発に関与したり、イベントサポートに来てくれたりする支援層
・B層:社内でROIを体現する結果を残したイノベーター層
・C層:Sansanを利用していて、サービスが好きなライト層

 まず人数の少ないA層には年に2回のプロダクト会議に参加してもらう。次にB層には社内のセミナールームを解放し、数十名が集まるディスカッション中心のユーザー会を行う。そして、C層向けには大規模会場を借りて年に2・3回行うユーザーカンファレンスがあるといった具合だ。

 ユーザーカンファレンスに新規顧客を招待すれば、「ちょっと導入を考えてみよう」と刺激を受け、新しいC層が生まれる可能性も高まる。山田氏は「コミュニティ活動は、やりっぱなしにせず、きちんと計画すればリファラル導入に誘導できる」と話し、全体設計の重要性を説いた。逆に、現在コミュニティ向け施策を計画的に展開しているにもかかわらず、効果が見えないと悩んでいるのであれば、自走するまでに時間を要しているだけなのかもしれない。「効果が出るまで、少なくとも1年は続けてみて欲しい」と山田氏は自らの体験に基づきアドバイスした。

次のページ
プロダクトを使うコンテンツデリバリー

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
関連リンク
MarkeZine Day 2019 Spring連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2019/04/10 09:00 https://markezine.jp/article/detail/30728

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング