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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

ポップアップストアで重要なのは世界観と体験の提供

五感を通じておいしい体験を提供

――自社で一貫した世界観を作り上げ、コミュニケーションをしていることがお客様にも良い形で伝わっているんですね。

 これらの世界観は、リアルな売り場へも反映しています。私たちは、販路を広げることよりも、ブランドの世界観をご理解いただいたパートナー企業様とご一緒していく方針です。その分、売り場作りにご協力いただくことが多くなりますが、私たちは製品発表会の実施やPR施策でしっかりと話題を作り、店舗へ集客することに注力しています。その中でも、より深いブランド体験を重視して設計しているのがポップアップストアです。一般の店頭では実施が難しい試食の提供を絶対条件として、会場を選んでいます。

 たとえばチーズトーストの試食では、単純に焼きたてが食べられるだけではなく、その焼き目や香りも含めて体験を設計しています。トースト焼き上げまでの4分間、お客様とコミュニケーションができる大切な時間として、プレゼンテーションをしていきます。また、トースターの画像をプリントしたバーガー袋に入れてお渡しするなど、もらった時の小さい喜びまでこだわるのがバルミューダです。

 その他にも、炊きたての白米と玄米の試食を行う場合は、ご飯の香りも味わっていただきたいので、お箸に匂いがないかといったチェックはかかせません。味だけではない細部までこだわり抜くことで、バルミューダの提供したい体験をお届けします。提供するのも高いパンではなく、スーパーで買えるパンにして、「いつものパンがこんなに変わるの?」と感動していただけるよう工夫しています。

――食べるだけでなく、その前後や五感で感じるすべてが体験だと考えていると。お客様が、各製品の価値を最大限感じられることが、ポップアップストアの役割なのですね。確かに、家電量販店では他社の商品と比較されがちですし、体験で得た感動が薄れてしまうかもしれません。

 もうひとつ、ポップアップストアで大切にしていることは、スタイリングです。スタイリングといっても、製品をきれいに並べるだけにとどまらず、生活の中でどのように使うかをイメージできる空間を作るようにしています。たとえば今回のポップアップストアには「バルミューダと過ごす素敵な週末を体験してほしい」というコンセプトがありました。

 お客様に感じていただきたい体験を私たちのコンセプトのもとで最大化するために必要なイメージを考えます。バルミューダの製品はインテリアの一部であり、お客様の日常をより良くするためのものです。キッチン・リビング・ダイニングと家の中が想像できるようにスタイリングしたり、カラーバリエーションがわかりやすいように陳列したりと、デザインや機能などが良い体験をもたらすことが伝わるよう、クリエイティブチームは相当時間をかけています。

――ポップアップストアの設計は秦泉寺さんが行っているんですか?

 私は企画・コンテンツ・運営などについては考えていますが、ポップアップストアのデザインはクリエイティブチームが、肝心の接客は、バルミューダの社員が協力して行っています。セールスやマーケティング担当者だけでなく、開発やクリエイティブ職、管理部のメンバーまで、社員一丸となって参加してもらいます。

 接客のうまいに越したことはありませんが、それよりも大事なのはバルミューダの思いを伝えること。社員もブランドを形成する一部です。ブランドを背負って店頭に立つことが、お客様との信頼関係につながっていくと考えています。

求められるは認知と好感度

――ポップアップストアには、どのような評価指標を設定していますか。

 ポップアップストアでは、来場者数や売上も見ていますが、それよりもお客様の認知と好感度を重視しています。私たちバルミューダの場合は、認知だけでなく、好感度を高める施策を進めることで売上を向上できると考えており、ポップアップストアは非常に有効な手段だと考えています。お客様が私たちに求めてくださっていることは「バルミューダはなんかおもしろい」という“なんか”の部分だと思っていますし、そこは期待値の現れだと考えています。

 もちろん数字も大事です。ただ、来場者数にフォーカスした集客をすると、本来の目的がおろそかになってしまいます。好感度は目に見えませんが、お客様が楽しむ様子は接客を通して感じることができます。だからこそ、世界観と体験、社員による接客が大事なのです。実際にお客様とつながったことで、好感度を得られることが、ポップアップストアの一番大きな成果だと考えています。

――御社は2017年11月、ブランドショップ「BALMUDA The Kitchen」を松屋銀座にオープンしていますが、これはポップアップストアで一定の成果が得られたからなのでしょうか。

 そうですね。元々お話としてはありましたが、初回のポップアップストアの成功を受けて、オープンに踏み切れたところはあると思います。ブランドストアは常設店舗として、体験を毎日お届けするのはもちろん、製品購入者の方がお手入れの方法やレシピについてご相談できる場としても機能しています。以前製品のお手入れ講座を開催したときも、アフターケアがしっかりしていると喜んでいただけました。

 お客様の困りごとに電話やメールだけでなく、対面でサポートできる場の存在は、信頼と好感度につながっているのではと考えています。また、老舗の松屋銀座にブランドショップがあることは、これまでのコアユーザーである20〜30代よりも上の世代のお客様に対する認知拡大にも効果的でした。新しいブランドストアの出店はまだ考えていませんが、短期間のテスト的な運営を経て、ブランディングの大きな役割を担う存在だと認識し、継続して営業しています。

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ポップアップストアだけの特別な体験を

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:37 https://markezine.jp/article/detail/30883

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