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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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定期誌『MarkeZine』特集

デジタルマーケティングの視点でテレビCMを捉え、データでハックする

テレビCMに期待するのは圧倒的なリーチと記憶に残す力

――テレビCMでリーチできる数は減ってきている中で、投資額に変化はありましたか?

金井:タウンワークにおいては、いわゆるネットのパフォーマンス広告を効率化しながら、テレビCMをはじめとしたブランドプロモーションに再投資をしています。

 ただ、求人情報メディアであるタウンワークは、若者からシニアの方まで、ユーザー層が非常に広いメディアです。リーチすべきターゲット層が広いので、ネット広告だけでユーザーにリーチするには足りないこともあり、リーチ力のあるテレビCMに投資したほうが良いと判断しました。テレビCMとネット広告の予算配分に関しては、効果検証を積み重ねながら予算を柔軟に変更することで最適化していきました。

徳光:マス広告とネット広告の予算配分自動化という話がよくありますが、個人的には完全なる自動化はまだ難しいと考えています。当たり前ですが、広告効果にはそのときのブランドのコンディションや同業他社の動き、カスタマーの状態、世の中の論調など様々な変数が関わってきます。それらをすべて加味することはかなり難しく、そのときの状況と過去の検証からの学びを踏まえて都度判断するのが、今のところはベストだと感じています。無論、完全自動化できるのが理想だと思いますが。

――テレビCMの効果で重視しているのは、認知度の向上でしょうか?

金井:ベースとなる認知はやはり大事ですね。具体的なKPIに関しては申し上げにくいのですが、ネットビジネスを展開している以上、最重要なのはやはり最終的なアクションです。様々なファクトやデータを組み合わせた検証の上でアクションに寄与するKPIを考えて設定しています。

――テレビCMの効果に関しては、アンケート調査などで確認されているのでしょうか?

徳光:週単位でアンケート調査を実施しています。元々は月次でとっていたのですが、複数の施策を実施した月だと施策単位の検証がしづらいという課題がありました。週単位での調査に切り替えてからは、その結果をもとに週単位で戦略・戦術を検討できるので、よりスピーディーにPDCAを回せるようになりました。ここでも、テレビCMをデジタルマーケティングにおける施策の1つとして捉えている考え方が反映されていると思います。

デジタルマーケティングの見地から捉える テレビCMの施策の在り方

――デジタル施策はデータが多いこともあり、比較的にPDCAが回しやすいと思うのですが、テレビCM施策は一度メディアプランニングを組んでしまうと、チューニングするのは難しそうです。テレビCMを実施するにあたり、デジタル施策と比較してどのような違いを感じましたか?

金井:タウンワークでネットマーケティングと組み合わせて本格的にテレビCMを活用し始めたのは2012年頃でした。元々デジタルマーケティングをメインに担当していたので、取り組み始めて比較すると多くの「なぜ」は確かにありました。

 まず、デジタルの場合は全数データですが、テレビCMの場合はサンプルデータしか取れません。この時点で、少しセンシティブな表現ですが、テレビCMのデータには事実を把握するためのデータに不足があるとも言えます。

 また、データ取得のスピード、PDCAのサイクルにも大きな時間的な開きがあります。ネットだとリアルタイムで取れますが、テレビCMの場合は数週間から1ヵ月ぐらいかかることが通常です。

 そして、テレビは広告枠に関する取引に関してもデータ取引を主とするネットと比較すると枠の取引の形態が主となっています。ルールが厳密に敷かれているのは、影響が非常に大きいプラットフォームだからこそですが、国内のテレビも米国のように枠取引からデータ取引に進化していくと、よりその価値が評価される構造になる部分も多いと思いますし、取りうる広告手段も多様化して進化するのではないでしょうか。

徳光:データだけで判断し、効率化できない領域が多いことも、これまでテレビCMに関するデータが少なかった理由の一つだと思います。ただ、普通に考えても、テレビCMへの投資額は小さくないのに、データで合理的に判断できないのはデジタルマーケティングと比較すると違和感はあります。ですので、とにかく利用できそうなデータはすべて集めて、データを軸に判断できるようにはしています。

金井:テレビCMを始めた2012年頃はまだデータがほとんど出回っていなかったのですが、大体2014年頃から徐々にテレビ関連のマーケティングデータが出てきたように思います。データを活用することによって、視聴者の方々により良い広告をテレビを通じてお届けできるようになったのではないかと感じています。

デジタルマーケティングと捉えてデータでテレビをハックする

――テレビのマーケティングデータが登場して、いよいよデータドリブンな施策ができるようになったと。

徳光:そうですね。データを見ていて気づいたのが、メディアプランニングの重要性です。どの期間に・どの枠で・どの程度の出稿量でテレビCMを流すことができるかによって、施策の効果は大きく左右されるので、相当なこだわりを持ってプランニングを行っています。

 メディアプランニングには、通常の視聴率に加えて、様々なデータを組み合わせてモデルを作って活用しています。視聴率だけでなく、いわゆる昨今話題となっている「視聴質」データもクリエイティブのみならずメディアプランニングや効果測定に活用しています。

――データを駆使したことで、実際どのような成果を得られたのでしょうか。

金井:いろいろなデータを集めて、過去10年にさかのぼって分析したこともあります。その中で、テレビCMのバイイング手法についてもかなり研究はしました。その結果、投資額としては効率化しながらもKPIを二桁%改善したことがあります。一つひとつの項目を検証してプランニングを一から見直して設計し、徹底的にモニタリングしながらとにかくデータを活用してPDCAを回しました。これはデジタルマーケティングのPDCA手法を持ち込んだからこその改善だと思っています。

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データの存在が組織構造を変える

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この記事の著者

水落 絵理香(ミズオチ エリカ)

フリーライター。CMSの新規営業、マーケティング系メディアのライター・編集を経て独立。関心領域はWebマーケティング、サイバーセキュリティ、AI・VR・ARなどの最新テクノロジー。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/05/24 13:30 https://markezine.jp/article/detail/31038

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