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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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定期誌『MarkeZine』特集

デジタルマーケティングの視点でテレビCMを捉え、データでハックする

データの存在が組織構造を変える

――全企業に共通する正攻法はなく、各企業で検証を重ねながら独自のベストプラクティスを作っていかなければいけないのですね。

金井:そうですね。ビジネスモデル、そのドメインの特徴など、前提となるルールや構造を捉えてから設計することが重要だと思っています。そのためには、データやファクトをできる限り集めておくことが必要で、実際、かなり細かいことをしています。デジタルマーケティングだとローデータから見るのが当たり前だと思いますが、テレビCMでも同様にローデータを取得し、分析するようにしています。

 たとえば、とある番組でのテレビCM出稿を継続するかどうか、判断に迷うときがありました。視聴率はほぼ一定ですが、新規ユーザーがとれているのかがわからなかったのです。

 私たちは新規ユーザーにリーチし続けられるかどうかを重視していたので、ずっと同じ視聴者が観ている枠に出稿を続けても意味がありません。

 そこで、ローデータを取得し、ID単位で視聴者が入れ替わっているかどうかを分析しました。その結果、一定数のユーザーが入れ替わっていたので出稿を継続した例もあります。

徳光:やはり、テレビCM施策は数億円単位の投資であり、「これまでやっていたから今後もとりあえず継続する」といった曖昧な判断はできません。

 本当にこれだけの投資をする意味があるのかを明確に説明できる状態にする必要があり、その拠り所になるのはやはりデータです。また金額の大きさだけではなく、施策を実施する根拠をデータとして固めておくことで、施策実施後に得られる学びの多さが変わってきます。

――であれば、テレビのマーケティングデータを購入することに対して、社内から渋るような意見はなかったのでしょうか。

金井:そうですね。ありがたいことに渋るということはありませんでした。むしろ待っていた、いよいよ手に入るという感じでした。テレビCMの施策を10%効率化できるだけでも、かなりインパクトは大きいですから。また、データドリブンな施策を走らせることで、脱属人化できるという視点も重要です。

 これは私見ですが、いわゆる宣伝の領域は経験を積んだ専門性がとても重要だったと思うのです。ただ、昨今はデータがかなり整ってきました。そうすると、経験がなくてもファクトから精度の高い仮説を築けるようになり、経験という専門性は平準化されていくと思います。そうなると、データを扱えるマーケターが活躍しやすくなるのだと思います。

 昨今、事業会社においてテレビCMに関わる方がデジタルマーケティングの知見を持つケースが少しずつ増えているように思います。この流れは進んでいくのではないでしょうか。

 データの存在は、組織構造にも変化を及ぼします。以前は割と宣伝とマーケティングを分けた組織構造がポピュラーだった気がしますが、最近ではその垣根はなくなり融合してきていると思います。リクルートもその流れにあると言えます。

データだけに頼りすぎはNG クリエイティブには論理も大事

――広告代理店が担う役割は、どのように変化していくのでしょうか?

徳光:たとえば、私たちとしてはコンテンツのプロデュース力に期待しています。広告代理店は世の中の様々なコンテンツを集め、まとめて提供することができます。タレントのキャスティングもそうですし、クリエイティブを作り上げる力は広告主だけでは難しいと思います。

 プランニングに関してはデータドリブンを徹底していますが、クリエイティブは数理だけで考えると失敗します。常に新しいアイデアを取り入れられるように、必要要件を論理で整理することも重要だと思っています。

 新しい発想を常に取り入れることを重要視しているという意味では、人によるクリエイティブジャンプの力を信じています。

金井:クリエイティブまでデータドリブンで最適化しすぎると、たとえば、データでA/Bテストのように成功したものだけを取り上げていきますよね。そうなると、クリエイティブは同じようなものができあがってしまうことになります。

 相手が人である以上、それではリーチしても記憶に残ることは難しい。常に、その時代や趨勢に合わせて新しい発想を取り入れていくことが重要なのではないでしょうか。クリエイティブは人が生み出すものであり、その生み出すためのサポートツールがデータではないかと思っています。

 新しいクリエイティブを作る際も、論理的に説明できるかどうかを重視しています。なぜこのクリエイティブがこの構成になっているのかを論理的に説明できて初めて、クリエイティブディレクションができるのではないかと考えています。

徳光:クリエイティブは論理、プランニングは数理だとよく社内では言っています。昨年は年間で7本クリエイティブを制作しましたが、実は細かな演出1つひとつが、データをもとに議論して論理で構築されたものでした。

 具体的には、起用させていただくタレントの方を選定する際にも、データだけではなく、企画の役柄に対するキャラクターフィットも重視しましたね。テレビにおいてはタレントの影響力が強いので、その人の本来持っている魅力と、そのテレビCM企画の役割における相性は大事だと捉えています。

金井:やはり、クリエイティブを作るには制作力、キャスティング力などいろんな要素が必要です。それらをワンストップでプロデュースできることは総合広告代理店にしかない強みではないかと思います。

徳光:他業界の傾向など、僕らが持ちえない情報を持たれていますしね。それらの情報を可能な範囲で共有していただいて、新たな気づきをいただけると良い関係でともに進化していけるのではないでしょうか。

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この記事の著者

水落 絵理香(ミズオチ エリカ)

フリーライター。CMSの新規営業、マーケティング系メディアのライター・編集を経て独立。関心領域はWebマーケティング、サイバーセキュリティ、AI・VR・ARなどの最新テクノロジー。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/05/24 13:30 https://markezine.jp/article/detail/31038

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