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ニューロマーケティングでさらに深める顧客理解

アース製薬が脳波×VRで挑んだ感覚の定量化/ニューロマーケティングは顧客の無意識にどこまで迫れるか?

 人の無意識を測定し、商品開発やプロモーションに活かすことができるニューロマーケティング。しかし「どのように活用できるかわからない」「自社で実施するイメージが湧かない」というマーケターも多いのではないだろうか。本記事ではニューロマーケティングとして、脳波とVRを組み合わせ、自社の商品がユーザーの気持ちに与える影響を調査したアース製薬とSOOTHにインタビュー。取り組みとその成果について聞いた。

無意識の可視化で、より説得力のあるプロモーションを

プロジェクトについて

アース製薬は、お部屋用の消臭芳香剤「お部屋のスッキーリ!Sukki-ri! プレシャスソープの香り(以下、お部屋のスッキーリ!)」の消臭効果を調査するため、ニューロマーケティングとVRを組み合わせた実験をSOOTHと共同で実施。対象者が、「消臭芳香剤が部屋のにおいを消臭していること」を無意識的に実感できていることを明らかにした。

アース製薬は、お部屋用の消臭芳香剤「お部屋のスッキーリ!Sukki-ri! プレシャスソープの香り(以下、お部屋のスッキーリ!)」の消臭効果を調査するため、脳波とVRを組み合わせたニューロマーケティングをSOOTHと共同で実施。参加者が「消臭芳香剤が部屋のニオイを消臭していること」を無意識で実感できていると明らかにした。

(左)アース製薬株式会社 マーケティング総合企画本部 マーケティングプランニング部 部長 小野里賢治氏(右)同社 マーケティング総合企画本部 マーケティングプランニング部 リサーチ課 新堂徒夢氏
(左)アース製薬株式会社 マーケティング総合企画本部 マーケティングプランニング部 部長 小野里賢治氏
(右)同社 マーケティング総合企画本部 マーケティングプランニング部 リサーチ課 新堂徒夢氏

――初めに、今回のお取り組みを実施した背景を教えていただけますか。

小野里:2017年9月にチームを発足させたのですが、ニューロマーケティングの本格的な取り組みはこれが初めてでした。当時の上司に「脳波でどんなことがわかるのか、弊社の商品開発やマーケティングに活用できる可能性はあるのか確かめたい」と声をかけられたのがきっかけです。

 実は私も、10年ほど前にニューロマーケティングが注目を集めた頃から興味をもっていました。その頃はソリューションを有している支援会社が少なかったこともあり、実施には至りませんでしたが、既存の定量・定性調査と組み合わせることで、新しい知見が得られるだろうと期待していました。

――調査対象とする商品は、どのように選定したのですか。

新堂:ニューロマーケティングの強みと弊社の商品ラインナップを鑑みて、活用できそうな領域はどこかを考えました。注目したのは「香り」と「脳波」の組み合わせです。

 これまで、香りや消臭に効く成分そのものを化学的、定量的に調査することはできていたのですが、それを人がどのように実感しているのかを確かめるには、官能評価やアンケートといった主観的な評価が中心でした。

 今回対象とした消臭芳香剤「お部屋のスッキーリ!」の評価も、その一つです。この商品は、容器を振らなくても最後の一滴まで消臭効果が続くことを特徴としています。お客様が効果を実感できていることを、脳波の測定を通じて客観的に示すことで、より説得力をもって商品をお勧めできると考えたのです

――調査の結果をビジネスに活かすという点も、重視されたのですね。

新堂:はい。選定にあたっては、様々なブランドの担当者に相談しながら絞り込んでいきました。最初は他のカテゴリーで試してみようというアイデアもあったのですが、調査の難易度や脳波計との相性も考えて、消臭芳香剤を対象とすることにしました。

VRで利用環境を再現して、脳波を測定

――実施した調査の内容を詳しく教えてください。

新堂:調査前には「人はお部屋のニオイを嗅いでいると、嫌な思いをしているのではないか」「そのニオイを消すと、人の心は安らぐのではないか」という仮説を立てていて、それを確かめるために、お部屋のニオイを再現したものと、「お部屋のスッキーリ!」によりお部屋のニオイを消臭したものを嗅いでいただき、その時の脳波を比べることにしました

 具体的には、参加者にVRヘッドマウントディスプレイにてリビングルームの映像を観ていただき、ニオイを呈示したときの脳波を計測しました。

VRと脳波計を用いた調査
VRと脳波計を用いた調査

 また、「お部屋のスッキーリ!」は最後の一滴まで消臭効果が続くことが特徴のため、調査にも開封後35日目の商品を使っています。

――VRで部屋を再現することのメリットは?

新堂:多くの人は「ニオイを嗅いでください」というと、ニオイに集中するために無意識に目を閉じてしまいます。そうするとリラックスした状態に現れるアルファ波が優位に出てしまい、正確な計測ができなくなります。そのためVRを使って目を開けたままにしてもらうことが必要でした。

VRで再現されたリビングルーム
VRで再現されたリビングルーム

 また、商品を実際に利用していただく生活環境を再現するという意味でもVRは適しており、実際にお部屋にいるような感覚の中、ニオイを体験してもらうことができました。

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この記事の著者

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/09/24 07:00 https://markezine.jp/article/detail/31904

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