脳波計の入手ハードルは下がっても……調査にはこんな苦労が

(右)同社 Creative/Producer 川瀬毅氏
――ここからは、SOOTHの吉澤さん、川瀬さんにもおうかがいします。実施前の準備で大変だったのは、どのような点でしょうか。
吉澤:私たちは生体反応データを活用したマーケティングを支援していますが、ひと昔前と比べると、脳波計は安価に手に入るようになっています。しかし、それさえあればすぐに調査に取り掛かれるわけではなく、調査設計やその他の機器の準備が必要です。
今回も、先ほど新堂さんがお話したような調査をデザインするのに半年を要し、トライアル実験も二回ほど行いました。
川瀬:会場の選定など、思わぬところでも苦労がありましたね。空間をニオイで満たせる部屋をどう用意するか。換気しなければいけないので空調も必要で、ニオイは温度によって左右されるため、細かい温度管理ができることも欠かせませんでした。
小野里:一定量のニオイを送り続けるための装置も、実はSOOTHさんの手作りです。市販のものを探しても、性能や価格の面で条件に合うものがなく……。既に確立している調査手法ではないからこそ、手探りで進めていく部分は多かったと思います。
得られた結果の「解釈」が、ニューロマーケティングの山場
――調査の結果についても教えてください。
新堂:ニューロマーケティングでは、調査で出てきた脳波を見れば直ちに結果が得られるわけではなく、どの指標を使い、どう解釈するかをしっかりと考察していく必要があります。今回はいくつかの指標について検討した結果、落ち着きつつも、活力をもっている状態を示す「安定度(Meditation)」という指標に着目しました。

新堂:無臭の空気を嗅いだ時の安定度を基準として、お部屋のニオイを嗅いだ時には安定度が下がるのに対し、「お部屋のスッキーリ!」で消臭した場合は安定度が上がることが確認できました。
川瀬:一般的な調査は実施して結果を集計すれば見えてくるのですが、出てきた数値をどう解釈するかというのが、ニューロマーケティングの最も大変なところです。
今回はアンケート調査も同時に実施し、主観的にも「お部屋のスッキーリ!」の消臭効果が心地よい気分につながっていることを確認しました。
ところが、そこで興味深い結果が出てきて。嗅いでいるお部屋のニオイに対して思いつく言葉を選んでいただいたのですが、「不愉快だ」という言葉の次に多かったのが、「落ち着く」というポジティブとも受け取れる言葉だったのです。
――そのアンケート調査について、どのように解釈されたのでしょうか。
吉澤:生活の中で発生するニオイなので、もちろん本当に「落ち着く」と感じられた可能性もありますが、私たち調査の実施者に配慮し、ネガティブでない言葉を選んでくださった方もいらっしゃったのではと推測しています。
アンケートやインタビューといった主観的な調査では、回答者が本音と建前を使い分けてしまうということが指摘されています。そのため今回のように、脳波とアンケートの両方を活用していくことが重要と考えています。