ミスタードーナツがTwitter活用でぶつかった3つの壁
最後のセッションに登壇したのは、ダスキンのミスタードーナツ事業本部 販売企画部 広告広報室 室長の叶英之氏。同氏はミスタードーナツのTwitter活用事例について明らかにした。
全国に約1,000店舗を構えるミスタードーナツでは、SNSが出てきてから、様々なメディアと取り組みを行ってきた。Twitterに関しても2010年からアカウント運用を開始し、フォロワー数は94.5万人(2019年9月時点)となっている。
「SNSが登場するまではテレビCMと新聞の折り込みチラシが大きな情報伝達手段でしたが、ドーナツだけで約50種類、さらに飲茶メニューやキャンペーンなど、マスメディアだけでは情報を伝えきれない状況でした。その伝えきれない情報を伝達するのに役立っているのがTwitterです」(叶氏)
叶氏によれば、現在は平均で1日に3~5ツイート、1週間で30程度のペースで投稿が行われているという。そんなダスキンだが、Twitter活用にはいくつかのフェーズがあったという。アカウントを開設した当初は「とにかくフォロワーを増やしたい、話題にしたい」と他社事例などを参考にキャンペーンを実施してきた。
しかし、2011年の東日本大震災を機に、ファンとのつながり、双方向の関係性を重視するような取り組みに変化。商品を訴求するような内容の投稿数を減らし、返信を増やすことで、フォロワーとの関係性を深めていった。叶氏は「現在はフォロワー数が増えたのでほとんど行っていませんが、当時は投稿の7割ほどには返信していました」と振り返った。
このように運用方針を変えていく中、叶氏が次の3つの壁を乗り越える必要があることに気づいたという。
壁1:情報精度の担保
間違った情報を出せば、間違わないための仕組み作りが必要になり、どんどん作業が大変になる
壁2:担当者のリテラシーが大切
リテラシーの高さはメディア活用に必要。色々な新しいアイデアが生まれるかの大きなポイント
壁3:効果が見えない
本当にお客様が情報をきっかけに店舗に来てくれているのか、売りにつながっているかが見えにくい
この壁を超える方法を探しながら、日々投稿していくが、次第に投稿内容もマンネリ化してきていたという。
予告期・販売期・認知に分けて効果を計測
Twitter活用に陰りが見える中、一筋の光が差してきた。それは「misdo meets」という共同開発企画である。最高水準の素材と技術を持ったブランドとの共同開発をコンセプトに、宇治茶専門店「祇園辻利」や人気パティシエである鎧塚俊彦氏などと共同開発していずれも話題を生んできた。
企画が始まるにあたりダスキンでは、目標と成果を明確にすることで運用に対するモチベーションを高めようと考えた。具体的には、予告期のツイート数・発売期のツイート数・認知率を計測して、相関を見ることにしたという。
そしてこのmisdo meetsの中でも、Twitterを活用して最も話題を作れたのが「堂島ロール」と共同開発した「堂島ローナツ」だ。
発売の10日ほど前より商品開発責任者のコメントつきティザー動画、発売3日前にプレスリリース、7月5日の発売日に堂島ローナツコレクションの説明動画と、徐々にコンテンツを放出していった。
加えてカンバセーショナルカードも活用したところ、発売前から急激にツイート数が増加。広告掲載期間中のツイート数6万3,000件になるなど、Twitterが話題化に大きく貢献した。
このときのツイートの内訳は、リツイート40%、引用ツイート11%、オリジナルツイート49%の比率となったが、「オリジナルツイートの中身にこそTwitterの価値がある」と叶氏は話す。
「色々な感じ方、捉え方をした人がツイートしていきます。それがいわゆる「自分ゴト化」されたということだと感じています。ドーナツは『今日食べなきゃいけない』理由があまりない食べ物で、自分ゴト化されないと購買につながっていかない。だからこそ、Twitterは自分ゴト化から始めることができ、我々のビジネスにとって有益なメディアだと思っています」(叶氏)
今後の展開については、「マスメディアで全世代への情報発信をしつつ、TwitterをはじめとしたSNSで狙った世代にアプローチを行っていく」と語った叶氏。
そして「色々なメディアが出現しては、各社様々なサービスを開発している。目まぐるしく変わっていくSNSと向き合っていくには、常にアンテナを張って変化に対応していく姿勢と、常に新しいことにチャレンジしていく姿勢を持ち続けることが、メディアを上手く活用していく心がけと思っています」と述べ、セッションを終えた。