自社メディアを磨いてROIを安定化
外部プラットフォームごとにコンテンツを最適化することで、継続的な集客モデルを構築したリクルートジョブズ。しかし、次なる課題が出てきたという。カスタマーの利用動向が変化し、それに合わせるようにプラットフォームも変化していく。すると、ROIが安定しなくなるのだ。
そこで同社は、自社メディアへの安定した集客手法を開発する必要があるという結論に至った。「リクルートのメディアに集まるのは基本的に目的志向のユーザーで、目的がなければあまり訪れてもらえません」と金井氏。目的に近しい、あるいは目的がいつか出てきそうな人にいかにリーチできるかが課題となるため、SNSやSEOに最適化したコンテンツを制作した。
ただ、これだけでは一時的な流入に終わってしまう。継続的な利用を促すために重要なのは、CRMのオートメーション化だという。パソコン、スマートフォンのWeb、アプリなどとチャネルが多様化している中では、プッシュ施策ひとつをとっても、それぞれのデバイスに対して行わなくてはならない。これを様々なセグメントやシナリオに分けて実施するのは、手動では難しいためだ。
ただ、顧客の関係管理は自動化しても、シナリオはきちんと人間が考えることが重要だとも強調する。新しい仮説を持って人が考えたシナリオを、オートメーションによって実行し、PDCAを回していくことが肝要なのだ。
再投資先を探すために効率化する
リクルートジョブズでは、まずデジタル広告/SEOが進化した後、オフラインプロモーションの可視化によるPDCAが進み、数理による徹底的な効率化が行われた。次にデジタルプラットフォームの最適化による集客開発、そして自社メディアを用いたコンテンツマーケティングとそのCRMのオートメーション化が行われた。

進化の過程において学んだ3つの教訓を、金井氏はこう振り返る。まず一つ目は、最終的なKPIから考えて、目的に応じた「因果のある指標」をきちんと設定すること。特にラストアクションから遠い施策になるほど、思考停止に陥りがちであるため、各施策を進化させていくためには、因果のある指標が不可欠なのだと説く。
二つ目が、プラットフォームごとの特性に合わせ、コンテンツを徹底的に最適化すること。そして三つ目が、自社メディアを磨くことでROIを安定化させることである。
特に変化の激しい時代には、タイミングが遅れたその瞬間に負けることもある。そのため金井氏は「変化に気づくというよりも、変化を予測し、それに先手を打たなくてはならない」と語り、それは効率化によって実現していくものだと述べた。
効率化によって再投資先を探し、そこにいち早く投資してPDCAを回していく。つまり、再投資するために、効率化して余剰を増やしていくという考え方だ。
「大きくPDCAを回した結果、駄目だったらやめればいいし、良ければ続ける。このサイクルをいかにスピーディーにしていくかが重要だと思います」(金井氏)
統合マーケティングというと、指標を一つに統合してみようなどとチャレンジしたくなるものだが、マーケティングを「統合的に」考えるという意味合いのほうが近い、と金井氏は講演を結んだ。