SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第99号(2024年3月号)
特集「人と組織を強くするマーケターのリスキリング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

Salesforceで実現するDX最前線(AD)

「隣にいて成長し合えれば“内製化”」 新生銀行×電通デジタルに見るSalesforce導入

 セールスフォース・ドットコムは2019年4月、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の支援体制を強化する目的で、パートナー企業の拡充を目指す新たなプログラム「DXアクセラレーション」を発表。本連載では、マーケティング市場におけるSalesforceビジネス拡大の背景とSalesforceパートナーになるメリットについてひも解いていく。今回は、パートナーである電通デジタルと、導入企業の新生銀行における取り組みを対談形式でお届け。事業会社、支援会社、そしてソリューション提供会社の連携が成功する秘訣を探った。

社内のハブとなる部門がSalesforce Marketing Cloud導入を主管

――今回は、3年半前にSalesforce製品を導入し始めたという新生銀行の松永さんと、それを支援されているセールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)のパートナー企業である電通デジタルの中津さんに登場いただきました。まずは現在の役割と、Salesforce製品へのかかわりについてうかがえますか?

松永:新生銀行のリテール営業推進部で、CRMを担当しています。Salesforce製品を導入する前は、10年ほどマーケティング部門にいました。製品導入をきっかけに、導入・運用を含めた活用推進チームを担当しています。リテール営業推進部自体は、営業やマーケティングに関する業務を主体としています。他方、CRM活用にあたってはコールセンター、バックオフィスも含めて顧客に関する部門同士をつなぐ、社内のハブのような役割を果たしています

新生銀行 リテール営業推進部 CRM担当 営業推進役 松永美生氏/電通グループ 電通ジャパンネットワーク CEOオフィス ディレクター 中津久美子氏
新生銀行 リテール営業推進部 CRM担当 営業推進役 松永美生氏(左)
電通グループ 電通ジャパンネットワーク CEOオフィス ディレクター 中津久美子氏(右)
(取材当時:電通デジタル 執行役員 データ/テクノロジー部門長)

中津:私は電通デジタルで、執行役員かつデータテクノロジー部門長を務めています。当社では「クライアント企業のマーケティングの成功にコミットする」ことをミッションに掲げていて、各種データを利活用したデジタルマーケティングを推進しています。私の部署では、そのためのデータやコンテンツ基盤に関する設計・開発・運用を行っており、Salesforce製品に関しても導入・運用支援まで手掛けています。

――まず中津さんにうかがいますが、セールスフォースのパートナーとしての御社の強みはどういった点でしょうか?

中津:当社は、デジタルマーケティング全体の構想策定から施策の実施運用、クリエーティブ提供までを一気通貫で担えることが特徴です。同時に、新規獲得から既存顧客のLTV向上まで柔軟なプランニングも可能なので、守備範囲の広さと奥の深さを担保していると自負しています。

パートナーになることで“デジタルマーケティングの底力”が向上

――なぜ、セールスフォースのパートナーになったのですか?

中津:電通デジタルの前身企業の時代も含めて十数年にわたりCRMに取り組み、増えていくコンタクトポイントを活用しながら、一人ひとりのエンドユーザーに、最適なメッセージを最適なタイミングで発信していくことに注力してきました。ただ、手作業では当然限界があり、2010年ごろからシステムを使ったOne to Oneの実現を模索していました。

 マーケティングオートメーション(以下、MA)という概念が日本に上陸したのが、2013~4年ごろだったと思います。私たちがやりたいと思っていたOne to Oneのマーケティングを実現できるツールのひとつに「Salesforce Marketing Cloud」(以下、Marketing Cloud)があり、当時はこのソリューションで解決できる幅の広さ、機能性の高さからパートナーとして参画させていただくことにしました。

――当時は、ということは、あとからわかったことなどもあるのですか?

中津:そうですね、実際に参画させていただいて大きなメリットを実感しているのは、私たち自身が非常に高度化でき、成長できていることです。「One to Oneのアプローチは絶対に効くはず、やってみたい、でも手作業だと無理」と私たちがジレンマを感じていた部分が解消されただけでなく、パートナーとして十分なトレーニングやサポートを提供いただき、SI企業ではなかった私たちがMarketing Cloud導入に関して国内最大手と言われるまでになれました。セールスフォースさんとの約5年間に亘るパートナーシップを通じて、デジタルマーケティングの底力が大きく向上したと思います

――底力、というとすごみがありますね。

中津:正直、スパルタな面もあります(笑)。セールスフォースさんとの関係性には、常に緊張感がありますが、叱咤激励もいただいていて、ありがたいですね。

セールスフォース・ドットコムでは現在、ビジョンに共感し、併走していただけるパートナー企業を募集しています。詳しい情報は以下よりご確認ください。

セールスフォース・ドットコムのパートナープログラム

「全チャネルを横断する」明確なビジョンがあった

――では改めて松永さん、Marketing Cloud導入にはどのような背景があったのでしょうか?

松永:私も長らくマーケティングに携わる中で、「手作業では無理」というジレンマを常に感じていました。当社の場合、5年ほど前までは、営業担当がいるお客様に対して、オンラインの別の部署から営業活動に全く連動しない商品案内のメールをお送りしていることがありました。こうしたことは非効率、かつ何よりお客様にとってプラスではないと、現場もマネジメントも認識している一方、一気通貫する仕組みがないから仕方ないと考えていたのが実情でした。

――難しいところですよね。

松永:そうですね。その一方で、金融業界の大きな潮流として、2008年のリーマンショック以降、高金利商品を提供して新規顧客を獲得するといったプロモーションが難しくなりました。そのようななかで、一人のお客さまとどのようにすれば長くお付き合いができるのかという観点から、CRMの重要性はますます高まっていきました

 当社では、個々に最適化したアプローチができるツールが登場してきたこと、システム投資が可能になったタイミングも合わさって、ツールを活用したCRMを推進しようと本腰を入れて動き始めました。いまから3年半前のことです。

――どのようなプロセスで、導入を進められたのですか?

松永:「全チャネルを横断した、一気通貫でコミュニケーションできる仕組みを作りたい」というビジョンは、当初から明確でした。そこから逆算すると、CRMツールやMAツールなど、各ツールを横断できている状況を目指すことが適切だと考えました。そこで、当時、金融庁の定める基準なども満たしているSalesforce製品に絞り込み、まずは「Salesforce Service Cloud」(以下、Service Cloud)を導入しました。

2ソリューション連携の着地点を見据えて導入

――CRMツールのService Cloudを導入してから、Marketing Cloudを導入したのですね。

松永:まずは、Marketing Cloudの 導入支援として、電通デジタルさんに関わっていただきました。それがちょうど1年半前です。当時は、Marketing Cloud導入のスキルを持つパートナーさんは少なかったと記憶しています。当社の場合、「既に走らせているService Cloudと連携させたい」「スピードも大事なので実装は4ヵ月をメドにしたい」「そのためにこんなスキルの方にいつ・何名来てもらいたい」など、要望は多岐にわたりました。電通デジタルさんはご苦労されたかと思います(笑)。

――ハードですね(笑)。同じSalesforceの製品とはいえ、ツール連携を前提に支援するのは難易度が高いのではと思いますが、受けられた理由は?

中津:確かに簡単ではないですが、社内にService CloudとMarketing Cloudそれぞれに詳しい者がいたので、社内で話せば連携に際する難しさも乗り越えられると考えました。でも実際、松永さんが話された「着地点が明確だったこと」が本当に4ヵ月で運用を開始できた大きな理由だと思います。このスピードは当社の事例でも、セールスフォースさんに聞いてもなかなかないことだそうです。

――着地点が明確だったから、無駄がなかった?

中津:一般的には、要件定義のフェーズで「あれもやりたい」等々膨らむことが多いですし、現行システムに合わせたカスタマイズの要望も多いんです。そうした相談が一切なく、Marketing Cloudの機能自体もよく理解され、この順番で試していこうという構想もお持ちだったので、とてもスムーズでした。当社も最初からメッセージ配信に留まらず、Webサイトやコールセンターを含めた横断的なコミュニケーションシナリオの構築を図っていくことができました。

セールスフォース・ドットコムでは現在、ビジョンに共感し、併走していただけるパートナー企業を募集しています。詳しい情報は以下よりご確認ください。

セールスフォース・ドットコムのパートナープログラム

隣にいてサポートを得られるのは“内製化”と同じ

――では、現状の実感や成果をうかがえますか?

松永:ひとつは、当然ながら、オートメーション化よる工数の削減が挙げられます。また、一概にCRMの活用といっても数値目標を立てずに概念的に臨む場合もあると思います。当社では、営業とマーケティングに寄与させることを当初から見据え、効果を計測できるように設計していました。その点においてもプラスの成果をつかめています。キャンペーン分析のように短期的に成果を追うものではありませんが、月毎・半年毎の単位ではようやく向上の幅や傾向が見えるようになってきました。

――松永さんの部署は、社内の各部署のハブのような存在とのことでしたが、社内的な変化などはありますか?

松永:私どもの部署は、“カスタマーエクスペリエンス部”のような冠がありません。あくまで各ビジネス部門をサポートしていく立ち位置です。Service Cloud導入時では、実際に使用する店頭やコールセンターなど現場の社員とは異なり、本部の人間はまだこうしたツール活用の利点を実感できていませんでした。Marketing Cloud導入を機に、パートナーさんから直接のサポートをいただくようになりました。それから、徐々に習熟していきツール活用のメリットを体感することによって、取組姿勢も積極的になってきたという変化を感じています

――パートナー企業の存在も大きいのですね。

松永:はい、私たちのチームも本当によく勉強させてもらっています。社員には異動もあり新しい人も入ってきますが、パートナー企業の方から常々社内で教えていただきながら、ときには一緒に食事もしています。また、金融業界や会社特有の事情も理解いただいており、このような関係性はもはや内製化と同じであると考えています。

エンドユーザーの体験の向上を目指して

――中津さんは、今回のプロジェクトを振り返っていかがですか?

中津:たった1年半前のことですが、当時は2製品連携の事例が当社にも日本自体にも少なく、チャレンジでしたね。それを非常にデータポリシーの厳しい金融業界で実現するので、データ管理には細心の注意を払いました。無事に軌道に乗せることができ、手応えを感じています。

 冒頭でお話ししたように、当社はシステムを導入して終わりではなく、継続してクライアント企業様のマーケティングの成功にコミットすることを目指しており、フェーズごとに必要な人材要件や支援内容に柔軟に対応しながら長く伴走したい考えがあります

 実際、今回のプロジェクトに入っているメンバーたちも、楽しむといったら語弊があるかもしれませんが、新生銀行さんに長く関わることを喜んで、成果を上げていくことに心血を注いでいます。内製と同じという言葉は、信頼関係の表れだと私自身も思うので、とてもうれしいですね。

――ともに走られている様子がよくわかりました、ありがとうございます。最後に、今後の期待や抱負をうかがえますか?

松永:まだ機能を十分に使いこなせていないので、的確に優先順位をつけて成果を高めたいですね。また、MAはまだ立ち上がりの分野であり、事業会社とパートナー、そしてセールスフォースさんの3者がさらに連携して知恵を出し合えば、まだつかめていない課題解決の糸口も見つかると思います

中津:私たちが常に忘れてはいけないと思っているのは、MAは最終的にエンドユーザーの顧客体験を向上させるものであるべき、ということです。テクノロジーの発展に比べると、生活者の感じ方や体験はそこまでドラスティックに変わっていないと思うので、クライアント企業のみなさまに伴走させていただきながら、その先の“人の心の機微”に寄り添っていきたいです

セールスフォース・ドットコムでは現在、ビジョンに共感し、併走していただけるパートナー企業を募集しています。詳しい情報は以下よりご確認ください。

セールスフォース・ドットコムのパートナープログラム

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
関連リンク
この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2020/02/03 10:00 https://markezine.jp/article/detail/32700