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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

「マーケティングは経営そのもの」これからの時代を生き抜くために必要なマーケターの素養

経営視点を備えたマーケターになるために

――では、その上で必要な素養やスキルは?

 必要な素養としては、4つほどあると思います。まず、今お話しした「最後に勝っている姿」をイメージして、そこから逆算して戦略を立てられるかどうか。

 2つ目は、顧客に選ばれる理由をしっかり把握できているか。その答えは会社の中に既にあるかもしれないですし、なければ価値を開発することも仕事です。マーケターは「顧客に選ばれる理由」を見つける人でもあるので、それを見出して伝わる価値に落とせることは大事な素養です。裏を返せば「我々はなんのために存在しているのか」と、企業価値を再確認することでもあると思います。

 そのためにやるべきはやはり、多くのマーケターの先輩方も言われていますが、顧客と向き合うことです。ネット系サービスだと顧客に会って話を聞いたりしていない場合も実は多いですが、日常的に顧客の声や、まだ使っていない人の声を聞いて深層心理を探ることはとても大事です。僕もラクスルのテレビCMを打ったとき、自分でカスタマーサポートの電話に出て質問や不満を受けていましたし、昨年はテレビCM制作支援の新規事業で年間500件のアポを回り、顧客の声をフィードバックしていきました。近年大きく伸びているネットビジネスだと、スマートニュースやビズリーチは好例だと思います。

 3つ目は、描いた戦略を回せる組織を作れるか。戦略を立て、顧客に選ばれる理由を見つけるのは究極一人でもできますが、その戦略に基づいてPDCAを回すのは、一人ではできません。再現性と拡張性を組織で担保する必要があります。

 そして4つ目、最後にそれらの投資対効果をきっちり見極めて意味のある頻度でKPIをモニタリングし、経営にインパクトを与え続けていけること。この4つを身に付けられたら、目線だけでなく手腕としても、まさに経営陣レベルになれると思います。

可視化にこだわる人だけが生き残れる時代へ

――そこまでできたら、どこでも通用する人材になれそうです。

 そう思います。僕自身はマーケターであり経営側ですが、いち担当者で権限がなかったとしても、自分が任されている範囲のPL、つまり売上とコストとそれらを差し引きした利益を出すことはできます。なので、先ほどお話ししたことは事業部やチーム単位でも実践できるんです。

 もっと言うと、「勝ち」を考えるのは個人のキャリアにも適用できます。自分自身が何年後にどうなれば「勝ち」なのか、自分自身を経営するつもりでプランニングしていけば、自分の価値は上げられるはずです。

 むしろ、そうしないと目線が上がらず、今後は本当にビジネスパーソンとしての生き残りが厳しくなっていくと思います。2008年あたりの不況時、いちばん初めにカットされたのは、PLインパクトを生み出していない施策や、明確に投資回収を説明できない仕事をしている人たちでした。今は持ち直しましたが、次に同等の不況が来たら、もう持ち直せないかもしれない。すると、完全に仕事がなくなる可能性もある。

――厳しいですが的確なご指摘ですね……。この春からマーケティング職に就く人や、田部さんのようなマーケターを目指す人にアドバイスをいただきたいのですが、今おっしゃった点はひとつ、考えなければいけないことだと思いました。

 そうですね。先ほどお話しした4つの素養をまとめると、マーケティングとは「企業を勝たせるための戦略を立て、実行し、成功し続ける仕組み作り」だと定義できますが、これはそのまま個人のキャリア戦略にも当てはまるので、ぜひ考えていただきたいです。個人で経営目線を持てれば、最終的に一人でも戦える人になれます。同時に、そういう人を企業は求めています。

 もうひとつアドバイスをさせていただくと、今後はますます「可視化」できないと話にならない時代になります。そもそもWebマーケティングがここまで急速に広がった要因は可視化できるという点です。オフライン広告は可視化から目を背けてきました。今、広告代理店などの支援側にいる方も感じられているかもしれませんが、事業会社の責任者や経営陣クラスの可視化へのリテラシーは上がっているので、彼らと対等に渡り合えないと仕事ができません。今自分が関わっている仕事=投資に説明責任を持たないといけないということです。そうではない仕事は徐々に価値を失っていくと思います。

 僕自身、マーケターの価値を上げたいと思って「マーケティングは経営そのもの」といったことを発信しています。実際、CMOはC職全体では末席に位置づけられながら、売上の全責任を負っていることも少なくない、非常に重い職です。自分の会社を勝たせること、勝ち続けることがマーケターの価値を上げていくことにつながるので、共感し実践してくれる人が増えると嬉しいです。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:46 https://markezine.jp/article/detail/33036

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