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リゾームマーケティングの時代

NHK電波返上とコロナ不況の影響 電通「2019年日本の広告費」に潜む「UXインテリジェンス」の課題

コロナ不況で電波返上が加速する

 「もうテレビ局は終わったのか?」 悲痛な、しかし、幽かな声で、肩を落とす人たちもいる。なぜなら、「2030年 日本の広告費」では、今の「地上波テレビ」の項目は消えているかもしれないからだ。

 このコロナ不況はしばらく続く。ワクチンが開発できなければ、2021年のオリンピックは中止になるといわれている。世界恐慌クラスの不況に突入したという意見が多い。そうであれば、2030年ごろまで続く。1929年から10年近く、世界恐慌は続いているのだ。

 2034年のBBCの電波返上は、今回のコロナの影響で早まる可能性がある。2030年、あるいは、もっと早くなるのではないかという意見もきいた。

 もともと国家戦略としては、米国や中国のIT大手企業に対抗する為に、できるだけ早く社会をIoT化して経済効率と潜在成長力を高めたいのだ。

 だから、BBCの電波返上もできるだけ早く実施したい。だが、ボトルネックは、ネット回線がすべての世帯、すべての個人に普及しているのが望ましいという条件だった。BBCは公共性を求められるのだ。地上波に依存している世帯があれば、BBCの番組をネットでは届けられない。つまり、地上波依存から脱却すること、それを視聴者とBBCの両方が実現する必要がある。

 この地上波依存からの脱却は、コロナの影響で早まる。遠隔授業、遠隔医療、遠隔介護。コロナウイルスが遠隔サービスの必要性を高めた。

 総務省の資料によると、日本では13歳から59歳のネット利用率は90%を超えている。その一方で、普及の促進が必要なのは、6歳から12歳の小学生、そして、60歳以上の高齢者だった。コロナウイルス対策で、遠隔授業が加速し小学生の利用率はほぼ100%になる。高齢者も遠隔医療と遠隔介護で、90%近くになってくるだろう。

 コロナの影響で、電波返上のボトルネックが消滅し、BBCが電波を返上しやすくなる。そして、NHKも後を追うように返上する。

 そのとき、電通「日本の広告費」から「地上波テレビ」の項目自体が消えることになる。なぜなら、民放局も電波返上を要求されるからだ。さらに、コロナ不況の直撃で地方局の統廃合が進む。そもそも、人口が減少し過疎化が進んだ地域は、地方局が統廃合される可能性があった。今回のコロナ不況はその速度を速めることになる。

 統廃合と電波返上。その結果、2030年、電通「日本の広告費」には、「ネットテレビ」の項目はあっても、「地上波テレビ」の項目は不要になる。もちろん、2030年というのは、ひとつの目処だ。

 「地上波テレビ」から「ネットテレビ」への転換が早いテレビ局は生き残り、遅れれば遅れるほど、統廃合の対象になる。なぜなら、電波の不要不急の利用は認められなくなる。「5G回線でできるなら、そっちを使ってください」と。だから、「Society5.0」という国家戦略を理解して、できるだけ早く、他のエッセンシャル産業に電波帯域を譲り渡したほうがいい。

 なぜ、日本には、BBCのような具体的なプランがないのか? 「もはや既得権益維持が目的ですよね」という人もいる。電通とテレビ局が自分たちの利権維持の為に、電波を返上したくない、と。

 仮にその意見が正しいとしても、私の知る限り、その利権も消滅していく。このままだと、それほど儲からないビジネスに徐々になっていく。番組の質の悪化と売上縮小の悪循環が加速し、コロナ不況の下り坂を、ただ、転がっていくだけだ。

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Googleは量子力学的、マスメディアはニュートン力学的だ

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2020/05/15 08:00 https://markezine.jp/article/detail/33334

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