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博報堂ヒット習慣メーカーズの中川悠と探る、マーケティングに必要な習慣化の秘訣

あなたは新商品でなく新習慣を提供できていますか?【博報堂中川氏×元P&G米田氏対談】


ヒットが狙える社会の読み方とは?

中川:それが非常に難しいですよね。『カイタイ新書』の中でも、今後来そうな習慣を予測する「Prediction」、習慣を設計する「Addiction」、習慣を広げる「Conversation」を考えるPACフレームを提唱しているのですが、特にPredictionが難しいと思っています。

PACフレーム(クリップ/タップで拡大)

 相手にとっていい、最先端なものであると伝えるには社会の潮流を見て予測することが重要だと思うのですが、米田さんもP&G時代から見ていましたか?

米田:見ていました。今何が起こっていて、何が求められて、これから何が起きるかを常に読み解くようにしていましたし、私が所属していたCMKはそういった役割を担っていました。

中川:それってどのくらいのサイズで見ていましたか。本の中では、ライフスタイルなど広く世の中全般、ビールなどのカテゴリー全般、そして当該商品そのものと3つの視点で見るのが重要としているのですが。

米田:自分の担当している商品やブランドの外側は見たほうがいいと思います。たとえばオーガニック市場を狙うなら、該当する食品・飲料・化粧品などカテゴリーを超えて何が流行っているか調べたほうがいいですし、オーガニックのベネフィットがスローライフならスローライフにおけるトレンドも追ってみます。

ベネフィットを遠回りで伝える「触媒」の重要性

米田:ちなみに、中川さんが本の中で使っていらした「触媒」というのは非常に素敵な言い回しだと思いました。中川さんは、歯磨き粉のミントによって磨いた感じを増加させる機能のことを指していらっしゃいましたが、「触媒」には「ベネフィット」を「エクスペリエンス」にする力があると思うんです。

 たとえば、栄養を取るというベネフィットだけを提供するなら点滴や宇宙食みたいなものでもいいのかもしれません。しかし、ゆっくりじっくり丁寧に料理したものを綺麗なお皿に盛り付けてから食事をするほうが、手間も時間もかかりますが楽しいし満足感が得られますよね。

 同じ効能を得るために遠回りしてでも喜ばれる「エクスペリエンス」とするのが中川さんのおっしゃる「触媒」なのか、と思います。

中川:確かにファッションも「おしゃれは我慢だ」とか言いますもんね。おしゃれするために我慢していることが自分の中のおしゃれ度合いを上げているわけですね。

 そのベネフィットと触媒のバランスは議論するんですか。

米田:はい、非常に重要なことですから、大いに議論します。たとえば、パッケージデザインも「触媒」ですよね。本来、別にどんな入れ物に入っていてもベネフィットは変わらないのに、パッケージデザインの良し悪しで売り上げは大きく変わる。ユーザー満足度に影響するとても重要な要素ですよね。

習慣化は複数のインサイトを捉えること

中川:続いて、習慣の言語化について聞きたいと思います。個人的には、ググる、タピるみたいな習慣を一言で表現するのが重要だと思っています。米田さんと昔一緒にお仕事した際、同じことを大事にしている印象があったのですが、いかがでしょう。

米田:元々手段の1つとして考えてはいましたが、企業から言語化を仕掛けるのはかなり難しいと思います。

中川:商品の動詞化をしたいけど、世の中の人が言ってもらったほうが定着するのかもしれませんね。どちらかと言えば、企業が世の中にある言葉を拾い上げて、企業が拡声器となって広げていくのが上手くいきそうです。

 では、最後に今後のマーケティングの展望についてお聞かせください。

米田:社名にも入っていますが、今後はインサイトが非常に重要になると思っています。インサイトとは、態度変容を起こさせるきっかけだと私は定義しています。今買っていないものを買い始める、今使っていないものを使い始めるなど、態度や行動を変容するためのきっかけ作りのヒントです。

 買ったことがないものを買うという態度変容は「買う」という一度の行動変化ですが、習慣化を起こすには、態度変容を一度だけでなく何度も継続的に行わせる仕組みになります。そのため、複数のインサイトを捉える必要があるのだと考えています。

 しかし、中川さんの本にあるように、習慣化させることを最初から設計していけば、インサイトを捉えることもできると思います。今、コロナの影響で、様々な態度変容が起こっています。これまで習慣化されていたことも大きく変化しています。状況が大きく変化する中、その背景にあるインサイトをいち早く捉えてシフトしていける企業が増えたらいいと思っています。

中川:様々なインサイトを捉える方法として『カイタイ新書』に記載している習慣化のアプローチが使えるという、新たな気づきも得られました。社会の転機は習慣の転機だと思っていて、現に新型コロナウイルスの流行で新たな習慣が生まれたり、これまでの習慣が見直されたりしています。

 ぜひ今回の対談が、新たな習慣化のアイデアを生むきっかけとなれば幸いです。米田さん、本日はありがとうございました。

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この記事の著者

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/07/22 11:28 https://markezine.jp/article/detail/33428

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