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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

培ってきたコミュニティを軸に「イノベーションの場」を創出し続ける

女性登壇者比率を拡大ダイバーシティ強化へ

――今回の公式チャンネル開設も、早かったですよね。でも、どんどん新しい取り組みをされながら、スタッフは10名足らずで驚きました。

 他国のグループ会社も、皆そのくらいなんですよ。各イベントのコンテンツはボードメンバーの方々と練っていきますし、あと運営側としては数名のパートナーさんがいるくらいです。

 皆、マーケティング関連だけでなく関係ない業界のイベントに行ったり、ライブに行ったりして、気づきを共有しています。特にひとりぼっちでアウェーの環境に行くと、問題点や改善点、こんなふうに対応されると乗り気になるんだ、といった発見が多いですね。

 メンバーが少ない分、関係者の皆さんとの関係ができていて進めやすい反面、そぎ落とせるだけそぎ落としているのは、日本のビジネスシーンの“おもてなし”とは違うのだろうなと思うことはあります。たとえばこの数年、いわゆる有人で「お名刺頂戴します」という受付はしていないんです。そのためのバイトさんも入れていません。浮いた予算は、徹底的に参加者還元に投じます。通訳レシーバーの返却に人がいなくても自分で置いてもらえればいい、でも気分転換のコーヒーは切らさないでおきたいよね、とか。

――選択と集中ですね。古市さんが2019年4月に代表に就任されたとき、やはりこんなにお若くして女性で、という点でとても注目を集めたと思います。就任されて初のアドテック東京2019では、女性登壇者3割を目標に掲げられていました。就任後、どのような実感を持たれていたのでしょうか?

 確かに、しばらくは常に「若くて女性ですごいですね」という声かけがついて回って、これはいつまで続くのだろうと思っていましたね。本当は、私みたいなケースが珍しくもない世の中になるべきなんですが。

 代表就任は、本当に頭の片隅にもよぎっていませんでした。2018年、武富(前代表・武富正人氏)の同行くらいのつもりでフランス本社に出張したら、シャルル・ド・ゴール空港で「代表交代を株主に掛け合うから」と。

海外のマーケイベントは登壇者の過半数が女性

――それは、電撃的な打診ですね。

 さすがに、びっくりしました(笑)。やるか、やらないかで言ったら答えは“やる”でしたが、承認されないと思っていたら意外と通りまして、就任してから今1年ほどになります。

 ビジネスイベント業界はとても年齢層が高く、そしてすごく男性社会なんですね。私はそれまで、女だから有利だ・不利だといったことを感じたことがなかったんですが、いざ代表になってみたら「男性社会ってこんなにやりにくいのか」とやっと気づきました。

 女性の登壇者を増やすことは、武富が代表だったときから注力していました。そもそも海外だとマーケティング職自体の女性の割合が高く、マーケティング系のイベントでは女性登壇者が半数以上でも普通です。また、特に米国だと映画やドラマでも俳優の人種の比率に配慮していたりして、ダイバーシティのバランスを見るのは当たり前の思考なんですね。

 逆に、マーケティング領域のイベントで女性登壇者が1割を切っているなんて、グローバルから極めて後れていると危機感を持たないといけないレベルです。そこで、2019年のアドテックでは具体的に「女性登壇者3割」を掲げました。自分が社長に就任してせっかく注目いただいたのだから、女性であることを含めて使えるものは使おうと思って、「3割を目指しているのでぜひ出てください!」とお願いしていきましたし、推薦も強く依頼しました。これ、私が言うのと男性が言うのとでは、受け手の印象がまったく違うと思うんです。全員男性の“ダイバーシティ推進委員会”から、女性の登用を呼びかけられても違和感がありますよね。

――そうですね、モヤモヤしますね。

 マイノリティ側から言うから、説得力があると思って。……実際には28%で惜しかったですが、それでも「3割でもこんなに多く感じるんだね」という声が聞かれました。役員の3割を女性にするのはすぐには難しいと思いますが、こういうところから意識改革ができたらと思っています。男性が男性ばかりの中にいると、それが当たり前すぎて、気づかないんですね。同時に、本当はできるはずなのにマネージャー職に就いていない女性も多いと思うので、そうした潜在層の発掘にもつなげたいです。

 ただ、女性マーケターの方は数が少ない上に、米Advance Women at Workでも語られていたように、そもそも女性は準備万端でないとこうした場に出ない傾向があります。世界各国の選挙で女性候補者の当選率が高いのは、完璧だと思えないと出馬しないからだそうです。

コミュニティづくりの肝は内輪感を出さないこと

――なるほど。すると、出てもらうハードルが高い?

 そうなんです。昨年は若い人の積極参加にも力を入れて、登壇者・参加者とも一定の成果が出たので今年は大丈夫だと思っていますが、女性が登壇する心理的なハードルをいかに下げるかは、今年も重点項目ですね。ベテランの登壇者と話しても、メンバーの多様性があるほうがセッションが良くなるとおっしゃるんです。女性登壇者はおのずと初参加のフレッシュな方が多いので、その方を含め登壇者にプラスになり、セッションも良くなるから参加者還元にもなり、私たちも充実したカンファレンスを提供できて、全員にとっていいことしかない。女性を中心に、ダイバーシティの向上を引き続き進めていきます。

――アドテックに参加すると、相当な規模にもかかわらず、参加者が積極的で盛り上がっている感が印象的です。参加意識の向上やコミュニティ形成について、どういった点を工夫されていますか?

 コミュニティづくりは、すごく意識しています。基本的に当社のイベントには、何かを学びたい、そして新しいサービスや人と出会いたいという2軸が期待されていて、それをお返しすることは参加費をいただく以上は大前提です。その上で、それ以外の偶然性や意外な価値をどれだけ増やせるかが、そのままイベントの価値向上につながると思っています。

 たとえば、隣の人とたまたま挨拶したらすごく話が合ったとか、聴くつもりのなかったセッションをのぞいたら思いがけず役立ったとか。そういう意外な発見を持ち帰っていただきたいという考えでイベントをつくる中で、コミュニティの観点で一番気を付けているのは、内輪感を出さないことです。

 内輪感って、つい出てしまうんですよ。私も以前は、壇上でMCをしながら親しい方に「〇〇さん、昨日はどうでした?」と聞いたりしていました。

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オンラインでいかに偶然性や意外性を生み出すか

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/06/25 13:00 https://markezine.jp/article/detail/33653

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