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時流に即した指名KW強化でアプリDL数2倍!集英社×セプテーニのApple Search Ads活用

 アプリを手掛ける企業においては、必須の取り組みである「Apple Search Ads(以下、ASA)」。本記事では、漫画誌アプリ「少年ジャンプ+」がシーズナリティに合わせた指名キーワードの強化により、インストールを大幅に向上させた事例を紹介する。同アプリを手掛ける集英社と、取り組みを行うセプテーニの2社に運用ノウハウをうかがった。

アプリのニーズの高まりに合わせASAを強化

――はじめに、皆様の担当業務についてご紹介ください。

木根渕:集英社の木根渕です。私は、Webやアプリ上で漫画コンテンツを展開している少年ジャンプ+のアプリサービスの宣伝を中心に、担当しています。

原田:Septeni Japanの原田です。当社では、広告主のデジタルマーケティング支援に向けた包括的な戦略設計やサービスの提供を行っており、私は、今回集英社様の担当営業として、アプリのサービス拡大をねらった具体的な施策設計や改善アクションのご提案をさせていただきました。

安立:Septeni Japanの安立です。アプリ案件をメインとした広告運用コンサルティングを担当しています。ASAに関しては社内の媒体責任者を務めており、媒体社との連携や戦略設計を横断でサポートしたりしています。

集英社 少年ジャンプ+ 木根渕氏<br>Septeni Japan 原田涼氏<br>Septeni Japan 安立和真氏
集英社 少年ジャンプ+ 木根渕未来氏
Septeni Japan 原田涼氏
Septeni Japan 安立和真氏

――早速ですが、少年ジャンプ+の特徴について教えてください。またどのようなプロモーションを展開されているのでしょうか。

木根渕:少年ジャンプ+は、毎日更新されるオリジナル連載作品が「初回全話無料」で読めることが最大の特徴です(※初回全話無料はアプリのみ)。週刊少年ジャンプの電子版配信や人気作の限定無料公開も行っています。

 プロモーションに関しては、獲得したい成果を数値化し、年間やクール単位で目標を立てて行っています。具体的には、広告会社の方と協力しながら、インストールの獲得をメインに月々の出稿枠に応じて取り組んでいます。

――現在ASAへの出稿を強化されているそうですが、その経緯について教えてください。

木根渕:新型コロナウイルス感染拡大により、生活者が自宅で過ごす時間が増えてきた今年2月末、弊社の検索ボリューム増加を見込んだタイミングで、ASAでの指名キーワードの出稿を強化しました。

 実はこれまで、“ジャンプ”や“ジャンププラス”の指名キーワードに広告出稿はしていませんでした。というのも、これらのワードで検索してくれるユーザーに対しては、認知はとれていると考えていたんです。名称が浸透していない新規のサービスであればともかく、ジャンプというワードを認識、検索してきたユーザーに広告を打つ必要はないのではないかと。そのため、作品名などのキーワードを中心に対応していました。

 しかし今回、原田さんを通じて媒体社の担当者から指名キーワードへの出稿事例も含めて提案いただき、出稿によって面が増え、“ジャンププラス”で検索した人からのインストール率が上がる実績に納得ができたので出稿を決めました。

認知度が高いアプリでも指名キーワード強化が必要な理由

――指名キーワードでの広告出稿の提案には、どういった狙いがあったのでしょうか。

原田:ASAでは他社のアプリ名などのキーワードにも出稿することができるため、“ジャンプ”や“ジャンププラス”で検索したユーザーが、他のアプリへ流出してしまうのを防ぐ必要がありました。

 木根渕さんのお話にあったように、2月末は漫画アプリのニーズが高まっており、他社が集英社のコミック雑誌名や、作品名などのキーワードに多く入稿していました。つまり、App Storeで、“ジャンプ”と検索すると、オーガニック検索枠のさらに上の広告枠に、少年ジャンプ+ではないアプリが表示されている状況になっていたんです。

――なるほど。認知が取れているアプリにおいても、指名キーワードの対策は重要なのですね。

原田:はい。ASAは2018年8月に日本でリリースされたばかりですが、漫画アプリに限らず、他社のアプリ名などのキーワード獲得に広告費用を活用している企業は増えています。

PDCAを回しやすい運用体制

――ASAのような検索連動型の広告は、一度設定したら終わりではなく、配信を最適化するために細かな調整が必要かと思います。日々の運用はどのように行っているのでしょうか。

安立:指名キーワードについては、今回はインプレッションシェア(以下、インプシェア)を重視して運用を行いました。先々の運用方針は、媒体社と連携し決定しており、たとえば、CPIを重視したインプシェア強化などの施策を実施しています。

 また一般キーワードなどについては、各キーワード単位のCPIやCPD、継続単価を重視して運用を行っています。その調整のためには、ASAの管理画面やSDKのデータと紐づけてレポーティングする必要がありますが、時間や工数がかかるので、あまり現実的ではありません。そこで、セプテーニではTableauというツールを用いてキャンペーン、キーワード、獲得推移や配信進捗などを可視化し、レポーティングしています。これにより、LTVや継続率が高いキーワードの分析や、インプシェアなどを高頻度に確認できるため、タイミングを逃さずに最適なPDCAを回すことができる運用体制を整えています。

時流に合わせた施策で他のアプリへの流入を防ぐ

――今回の取り組みでは、どのような結果が得られましたか。

原田:2月末の指名キーワード配信開始時から好調な推移を見せ、1週間でインストール数が2倍に向上、CPIは20%改善し、CPD7も53%抑制できました。

 また広告予算のアロケーションを行い、配信開始時点で全体シェアが3%だったASAを、翌月には27%まで引き上げました。その結果、取り組み開始前と比べてASA経由のインストール数が30倍向上、CPIは48%低下、CPD7は66%低下しました。

 さらに各キーワードの母数が増え、インプシェアが拡大。これにより、他のアプリへの流出を低減できました。

 2月末頃から自宅で過ごす時間が増えたことで、漫画アプリの指名キーワード検索が伸びていることをお話しましたが、その時流に合わせた施策を展開できたことで、早い段階で結果を出すことができたのではないかと思っています。

木根渕:アプリ単位でも作品単位でも指名検索が伸びたことで、ストアの占有率を上げることができました。過去にはなかった伸び率で、ランキングでも常に上位をキープできたことは驚きでした。

コントロール性やLTVの高さが魅力的なASA

――インストール数が大きく向上したんですね。ASAを経由したユーザーと他媒体を経由したユーザーにはどのような違いがありますか。

安立:ASAは、他媒体と比較し、ダウンロードから継続期間が経過するほど(7日、14日、30日と期間が伸びるほど)継続率が高い傾向にあり、獲得したユーザーが多く残存してくれるという特徴があります。MAUベースで30日後までの継続率を見ていますが、他の媒体だと残存率が約2割。それに対し、ASA残存ユーザーは約3割ほどなので、LTVの高い媒体といえるのではないでしょうか。

――木根渕さんは今回の取り組みから、何か気づきはありましたか。また今後、ASAをどのように活用していきたいか教えてください。

木根渕:今回、時期を見て指名キーワードの追加ができたことで、コントロール性の高い媒体だと感じました。他媒体とは異なり、時流やキャンペーンタイミングに合わせて自分たちから仕掛けられる可能性が見えてきました。

 少年ジャンプ+は提供開始から今年9月で6年になります。紙媒体でお届けしていたコンテンツをアプリで楽しんでいただく体験が定着しつつあるだけでなく、『SPY×FAMILY(スパイファミリー)』(遠藤達哉・著)のようなアプリ発のヒット作品も増えています。こうした強みをさらに打ち出すとともに、ASAのようなLTVの高い媒体も有効に活用し、エンゲージメントの高いユーザーを増やしていきたいです。

――最後に、セプテーニさんから感想をお願いいたします。

原田:今回、世の中の漫画アプリのニーズの高まりに合わせた施策ができたと思っています。今後も、周年、年末企画やCM出稿時など、シーズナリティに沿った施策をご提案していければと思います。

安立:LTVの高いASAは、アプリを手掛ける企業においては、重要度の高いマーケティング施策だと思います。セプテーニでは単純にCPIだけを見るのではなく、LTVや継続率など、長期的なサービス拡大を視野に入れた設計や調整を日々細かく行っています。もちろんそれだけでなく、顧客企業のプロモーションの目的に合わせ、獲得したいユーザーにどう段階を踏んでアプローチするのが最適なのかを含め、今後もご支援させていただければと思います。

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この記事の著者

丸山 真希枝(マルヤマ マキエ)

フリーライター。IT・Web業界を中心に100社以上のボードメンバーへの取材を行う。起業・マーケティング・クリエイティブなど幅広いトピックスを担当。趣味はヨガと瞑想。体幹と柔軟性を強化中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/07/30 10:00 https://markezine.jp/article/detail/33710