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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

Facebook Japanが目指す、ニューノーマル時代のプラットフォーマーの姿

コミュニティは関係性があってこそ生まれる

――中小企業や地方自治体を支える取り組みも、相次いで発表されています。先ほど紹介いただいた各種の新機能も中小企業支援策として打ち出されていますが、スモールビジネスや自治体でもコミュニティづくりに取り組みたい意向が高まっているのでしょうか。また、それを支援することでプラットフォーム全体を活性化させる意図もあるのでしょうか。

 まず、コミュニティづくりに取り組む意向は高まっていると捉えています。前述のように、FacebookとInstagramではコミュニティのでき方や期待値は違いますが、人が集まり、交流することで長期的な関係を構築することを、多くの企業や自治体の方々が目指されていると思います。

 その支援は、我々のプラットフォームを活性化させたいというよりも、先ほどの柱のうち「社会・経済への貢献」として注力しています。特に中小企業はコロナ禍の打撃を大きく受けているので、無料で使える支援機能の開発も前倒しで進めました。また、地方経済を支えているのは地場の中小企業であり、ビジネス領域でも自治体でも、各地域のコミュニティ形成を意識しています。

 とはいえ、コミュニティとは、あくまで人とのつながりや興味関心軸があった上で人が集まって生まれるものです。機能がいくらあっても、利用者がついてきてくれなければ意味がありません。

――なるほど。利用者あってのプラットフォームだから、ということですね。

 そうですね。特に近年、生活者が直接企業やブランドを知り、直接商品を購入できるD2Cの潮流が強まっているので、コミュニティ形成にはロイヤルティの要素が少なからず必要になると思います。皆が持っているからといった理由ではなく、そのブランドの世界観に惹かれるかどうかにファン化が左右されますし、気に入ったらさらに掘り下げて調べてみて、結果的にコミュニティに加わるという流れがあります。

 前述の「Facebookショップ」も、元々ブランドのページを訪れた利用者がLPを介して購入するという動向があったので、それならFacebook上で一元管理し完結するといいのでは、と具現化したものです。中小企業や自治体に限らず、コミュニティづくりに取り組むなら、生活者の動きをよく把握する必要がありますね。我々としても、機能を提供して終わりにはしないつもりです。

マーケティング活用には利用者の心理をまず大切に

――3つ目として、マーケティングの観点でうかがわせてください。先ほど「安心安全」の柱としても触れられましたが、アドテク全盛期を経て、今はGDPRや個人情報保護法の改正などによって個人情報の扱いに利用者も敏感になっています。御社はオーディエンスターゲティングなどのアドテクの精度もとても高く、かつコミュニティを育む土壌もお持ちです。新規獲得からコミュニティによる関係構築へ、マーケターの興味関心がシフトしている今、どのようにプラットフォームを使ってほしいとお考えですか?

 Facebookの広告プロダクトは、ご指摘のようにデータを活用した人ベースのクロスターゲティングが非常に強力です。一方で、Instagram上の行動を見ても、他国よりかなり多く検索サーチが使われているなど、日本はエンゲージメントが非常に高いという特徴があります。その意味では、まさにコミュニティを活用したマーケティングに効果を発揮すると思っていますし、それが我々の提供価値でもあります。

 ただ、そこでも前提は、利用者がブランドの世界観を体験し、好きになり、絆が生まれて購買につながる……という利用者の主体性があることですね。利用者が購買行動に至るまでのブランドとの心の結びつきこそ見るべきだという考えは、ブランディングに携わっていたオグルヴィ在籍時から変わっていません。それが現代はプラットフォーム上で可能になり、購買のジャーニーが変わってきている、だから重要性が増している、と捉えています。ですのでマーケターの皆さんにも、そのようなInstagramの提供価値をご理解いただけたらと思っています。

 ひとつ近年で変化しているのは、ひと昔前のように、新規はアドテクで刈り取り、既存顧客とのロイヤルティ醸成をコミュニティで、という切り分けが無効になりつつあることです。新規でも、興味関心軸でコミュニティを発見し、流入していますね。それが、本来のソーシャルの在り方でもあると思っています。

――ビジネスのデジタルシフトが進む中では、果たしてデジタルオンリーでブランディングはできるのか、という議論も生まれています。お話をうかがっていると、それは不可能ではないだろうと感じるのですが、どうお考えですか?

 私自身は、デジタルですべて完結すべきとはまったく思っていませんが、これだけD2Cも伸びていますし、今の生活者にとってはデジタルでブランドを発見して選好度を高めていくのは自然なことになりつつあります。

 つまり、デジタルでのブランディングはもう成り立っているのだと思います。無理にデジタルで完結させる必要はないでしょうが、デジタル上でのブランディングには以前よりも優先度を上げて取り組むべきではと思います。

 実際、リアルで接点を持つのが難しくなっている今、デジタルシフトは多くの事業で喫緊の課題です。その際、予算の分配を含めて、マーケティングはデジタルに移るべきだとなってきます。今がいいタイミングですね。

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多様なステークホルダーを3つの軸で支援していく

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/09/25 13:00 https://markezine.jp/article/detail/34295

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