これからの契約のあり方を問うPRを
――御社は、PR活動も積極的だと聞いています。その背景を教えてください。
渡邊:まず、新型コロナウイルスの影響でリモートワークの方が増えてきたことで、契約書に関するアナログな業務の課題が浮き彫りとなり、クラウドサインに対する引き合いが多くなってきました。それと同時に、新しい競合サービスの登場、既存競合サービスによる様々なマーケティング施策の実行が目立つようになりました。
また、これまでは我々からメディアに企画提案することが多かったのですが、コロナ禍に入って以降メディア様からのお問い合わせが増加しました。マスメディアの取材も半分以上がインバウンドで実現し、中にはこれまで取り上げられたことのない朝の情報番組で特集が組まれるなど、電子契約に対する社会的関心が非常に高いことが明らかになりました。このような背景から、積極的な仕掛けが必要だと思い、取り組みを強化しました。
――これだけ社会的に電子契約に対する関心が集まる中、PR活動をしていく上で気を付けていたことはありますか。
渡邊:竹本直一IT政策担当大臣の発言でハンコ文化に対する疑問・批判が集まりましたが、我々としては「ハンコをなくしたいのではなく、ハンコと共存する契約の新しい選択肢として電子契約がある」ことを訴求しようと決めていました。
たとえば、クラウドサインを利用いただいている企業様からも、「相手の企業の都合で電子契約を断られる」と話を聞くことがありました。しかし、それを真っ向から否定するのではなく、様々な意見がある中で「これからの契約がどうあるべきか」の答えを考えられるヒントをPRで伝えていくことが今は重要だと考えています。
クラウドサインならではの医療機関への支援を
――では、実際に行ってきたPR施策について教えてください。
渡邊:まず行ったのは、CSR的な活動ですね。具体的には、医療機関を対象にクラウドサインを無償提供するプレスリリースを4月に発信しました。当時多くの企業が現在苦しんでいる業種への支援に関するプレスリリースを発行している中で、我々も現在苦しい状況下にある方たちに何かできないかを考えました。

その結果、医療機関の方に雇用契約や売買契約を電子化いただくとで、より本業である医療活動に集中できる環境を提供しようと、このようなプレスリリースを発信するに至りました。実際にこれをきっかけに医療機関からのお問い合わせも一定数いただきました。
――その他にはいかがでしょうか。
渡邊:その他には、クラウドサインの電子契約送信件数を6月1日から6月30日で集計して、契約送信1件につき10円を日本赤十字社に寄付する取り組みを行い、その結果をプレスリリースにて報告いたしました。金額として、180万円を超える結果となりました。
――これらの結果を通じて、リード獲得数が増加したなど、ビジネス的な成果はありましたか。
渡邊:お伝えできる具体的なビジネス成果は、今回のPR活動では現状まだ得られていません。ただ、長期的な目線でこれらの取り組みは行っており、将来振り返ったとき、弁護士ドットコムやクラウドサインならではの社史になることを期待しています。