ゼロからデータ分析をはじめ、2年連続顧客満足度第1位に
では、具体的な取り組みを見ていこう。まず手がけたのは、顧客に推奨サービスを提案する施策の高度化だ。「データ整備・基礎分析」「モデル構築」「施策適用/効果見極め」のステップで進められた。
だが、データは点在し、はじめて分析業務に関わるメンバーばかり。どのようにして、業務と組織を作っていったのだろうか。
はじめに、ARISE analyticsも含めたチームメンバーらは、業務担当者たちからヒアリングし、仮説を立て、手作業で集めてきたデータでクイックに機械学習モデルを構築。そして、目的変数への寄与度を見ながら、優先すべきデータに目星をつけていった。そして、プロファイル整備とモデルチューニングを並行しながら、顧客スコアを作成して施策につなげた。
そうして、フィードバックループを回していくうちに、重要因子が浮かび上がる。すると、顧客に合った料金プランの提案など施策の精度が向上し、顧客満足度の高まりが数値で見えてきたという。
「やみくもにデータを集めればよいわけではありません。ARISE analyticsのノウハウによって、短期間でお客様の理解、施策の高度化、効果の見極めを実施できたことが、最初のステップでの成功要因でした」(水谷氏)
次に取り組んだのは、ダイレクトメール(DM)やWeb広告、テレマーケティングといった顧客接点の最適化。「どのタイミングで、どの方法でお客様とコミュニケーションをとるのが適切か?」を、施策高度化の手法と同じように数値化し、改善を繰り返している。「お客様センターの担当者や営業など、社内のあらゆる人たちと協力してきた」と水谷氏。
この2年の取り組みの結果、UQモバイルの累計契約数は200万件を突破し、格安SIMカードサービスの顧客満足度調査(J.D.パワー調べ)で、2年連続総合満足度第1位を受賞した。また、継続利用の顧客が増え、マーケティングの各指標も向上しているという。
組織全体をレベルアップするAI人材の育成方法
続いては、水谷氏が「非常に有効だった」と語ったAI人材の育成について。UQコミュニケーションズは、ARISE analytics支援のもと、データアナリティクス業務の内製化をゴールとした、分析スキルの習得と分析環境の整備を両立する体制を構築。現状のビジネス課題や、リアルな顧客データを教材にした実践的な研修が特徴で、現役のデータサイエンティストが指導する。
さらに、AI人材をエントリーレベルとアドバンスドレベルにわけ、それぞれに必要なスキルを定義した。エントリーレベルは、マーケターや営業を対象とし、データ分析を施策に活かす力を得ることが目標。アドバンスドレベルは、2ヵ月の研修で、自らプログラムを書いて分析を行う“データサイエンティスト”を目指す。また、外部の専門家と社内をつなぐ人材としても期待されている。
すべてのメンバーが、データサイエンティストである必要はない。一方で、プロフェッショナルにすべてお任せでは、組織が自立できない。「ARISE analyticsと一緒に構築した研修体制で、業務に適した分析スキルを持った人材を短期間で育成でき、組織全体がレベルアップした」と、水谷氏は自信を見せた。
そして現在は、データ分析の内製化を目指したソリューション開発が進んでいる。分析担当者と業務担当者がともに活用できる設計が特徴で、分析のブラックボックス化を防ぐ。スピーディーで質の高い分析と、業務担当者の施策実行、そしてシームレスなフィードバックグループの実現に向けて、UQとARISE analyticsの協力体制は続いている。