「デジタルによる習慣化マップ」で効果的な手法を見極める
ここまでデジタルを活用して顧客の習慣を作るための5つの手法をご紹介しましたが、どんな業界にもすべての手法が有効なわけではありません。「商品の利用頻度」と「検討モチベーション」の掛け合わせで、以下のマップのように大きく4つに業界を区分すると、各象限に効果的な習慣化手法を整理することができます。

それぞれの象限の特徴をご説明します。
まず、左上の象限では、検討モチベーションは高いものの、利用頻度が低いため、少ない利用機会の間に顧客をつなぎとめるような「利用ログ管理」「コミュニティ運営」「情報コンテンツ」などの手法が有効です。特にイベントや旅行などの趣味性の高い業界が該当します。
一方、左下の象限では、左上の象限よりも検討モチベーションが高くなく、熱量のあるファンが少ないため「コミュニティ運営」が機能しづらくなります。金融や保険などのライフプランに関わるような実利性の高い業界が区分されるため、商品に関する知識を得られる「情報コンテンツ」や日々の利用をサポートする「利用ログ管理」が有効です。
次に、右上の象限に移ると、左下とは真逆で、自動車やファッションブランドなどの利用頻度も検討モチベーションも高い業界が区分されます。ファンの熱量も高く、利用回数も十分に期待できるため、購入検討のフェーズからコミュニティでの情報共有までいずれの手法も取り入れる余地があり、様々な習慣化の切り口が考えられる業界になります。
最後に、右下の象限には、飲料やトイレタリーなどの消費財メーカーが該当します。利用頻度は高いものの、検討モチベーションは低く、価格競争になりやすい業界といえます。商品自体の付加価値での明示的な差を作りづらい中で、「購入インセンティブ」などを工夫することで、習慣的に購入する理由を作ることが重要となります。
デジタルとリアルの連動が、コロナ禍の習慣化のカギ
本稿では、デジタルによる顧客の習慣化というテーマで5つの手法をご説明してきました。ここまでの解説でお気づきかと思いますが、デジタルを活用するといっても、デジタル上ですべての顧客体験を完結させるということを指しているわけではありません。重要なことは、デジタルとリアルを融合させることで、顧客体験をアップデートすることだと考えています。
たとえば、アパレルブランドの運営するECと店舗の連動を考えると、ECで購入を検討中の商品があるときに店舗に行くと、アプリやスマートミラーで実物の置いてある棚の場所を案内され、試着をして購入判断ができるといった体験がデジタルとリアルがシームレスに連動している状態といえます。もし、デジタルでの検討状況を逐一、店員に説明してとなると、デジタルもリアルも同じブランドで検討しているメリットを享受しきれません。
人の行動が習慣化する理由の一つは「特定の行動をパターン化することで、脳が楽をしながら効率的に機能するため」と捉えられます。デジタルもリアルも両方使いこなす顧客が増えるこれからの時代には、いかにデジタルとリアルを横断したときに、顧客の手間を減らした体験を提供できるかが習慣化においても重要となるといえるのです。