働き方の変化にも注目せよ
消費行動の変化はもちろんですが、私は働き方の変化にも目を向けるべきだと考えています。たとえば、在宅勤務などによるテレワークの普及が進むことで、これまで出産や育児をきっかけに退職していた女性が働き続けやすくなり、介護離職といった問題も多少緩和されていくはずです。
現在、年間10万人ほどの介護離職者がいます。介護離職は、50代くらいの会社における主力戦力層で多い問題ですが、テレワークなどをうまく活用することで、1日数時間でも仕事をすることで会社に貢献できる働き方も生まれてくるでしょう。そうすると、様々な人材を活かせるようになり、働き方の価値観も変化するはずです。
その他、男性の育休取得も進むのではないでしょうか。新入社員男性の約8割が育休を取りたいという意向を示していますが、民間企業の男性の育休取得率は7.5%であり、希望と現実には大きな乖離がある状況です。これらの働き方の変化にもマーケターは目を向けると、新たなヒントが得られるのではないでしょうか。
2021年以降、変わらず残る消費者行動は?
では、2020年に関してひととおり振り返ったところで、2021年の予測や今後取るべき対応について解説します。まず、結論として2021年は現在の消費行動から大きな変化は起きにくいと考えています。というのも、ワクチンや特効薬が開発されて広く一般に行き渡り、季節性のインフルエンザ並みの対応ができる環境にならないと、巣ごもり消費をベースとした消費行動は変わらないと考えるためです。私はポストコロナをワクチンや特効薬が行き渡り、行動制限が緩和された状態と捉えていますが、現時点では、2021年でそこまでいく可能性は低いと見ています。

また、2020年はデジタルシフトが大きく進んだ1年でしたが、2021年も一層進むでしょう。たとえば、スーパーやコンビニエンスストアなどの利用は減少している一方、ネットショッピングやキャッシュレス決済サービスの利用は増加しました。この傾向は新型コロナウイルスに対する不安が強い層ほど顕著に起きています。
飲食で見ても、テイクアウトやデリバリーの利用が伸びている一方、店内飲食の利用は減少が目立ちます。また、病院の診療なども、現在のところ少数派ですが、少しずつオンライン利用が増えています。
その他、興味深い傾向として見えたのは、メディアの利用です。新型コロナウイルスに関する情報への感度が高まり、テレビなどのマスメディアやインターネットメディアなど、すべてのメディアにおいて利用が軒並み上昇しました。また、外出が増えつつある現在もその数字は落ちていません。
働き方に関しても、テレワークやオンライン会議などは増加したままの水準を保っており、今後はその他の部分でもデジタル化が進んでいくと考えています。もちろん、すべてがデジタルだと不便な部分も出てくるので、リアルとのバランスを模索しているのが現在の状況です。