※本記事は、2021年1月25日刊行の定期誌『MarkeZine』61号に掲載したものです。
BtoBの“出会いの場”をテクノロジーの力でリッチに
(左)Sansan株式会社 代表取締役社長 寺田親弘(てらだ・ちかひろ)氏
三井物産に入社。情報産業部門に配属された後、米国・シリコンバレーでベンチャー企業の日本向けビジネス展開支援に従事する。帰国後、社内ベンチャーの立ち上げや関連会社への出向を経て、2007年にSansanを創業。(右)Sansan株式会社 執行役員 新規事業開発室 室長 林 佑樹(はやし・ゆうき)氏
金融システム開発会社を経て、2011年にSansanに参画。入社後はビジネス開発に携わり、「Sansan」や「Eight」などのプロダクト事業開発を推進。2019年より新規事業開発室で新規のプロダクト開発を統括。
――御社は2020年10月の事業戦略説明会で、今後“イベントテック”に注力していくと掲げられました。この言葉自体、新しいかと思います。まず、御社が考えるイベントテックの定義をうかがえますか?
寺田:イベントテックとは、イベントの主催者や運営者が、イベント開催時の関連業務に用いるデジタルソリューションサービスの総称だと捉えています。少なくとも我々が2020年10月の事業戦略説明会で発表した段階では、検索しても言葉として出てこないので、我々が定義して、パートナー企業と協業しながら市場を切り拓いていくつもりです。
――「Sansan」および「Eight」の快進撃の傍ら、第三の事業としてイベントテックに踏み込んだ背景は?
寺田:快進撃と言われるのはありがたい反面、我々としてはまだまだチャレンジする立場だと思っているんです。両サービスとも、活用し得る潜在顧客数を考えると、成長の余地はまだ十分にあると考えています。
その中でイベントテックへの注力は、まず会社のミッション「出会いからイノベーションを生み出す」に合致していることが背景にあります。名刺管理は、そのミッションを実現する一つの入り口として捉えていました。イベントやカンファレンス、展示会の類は、ビジネスをする人なら関わらないことはない、極めて重要な“出会いの場”です。そこで交換される名刺を管理するサービスを、先んじて展開してきたという流れがあります。
他方、イベントそのものに対する課題感もありました。我々も2016年からビジネスイベントを主催し、また出展社として様々なイベントに参加する中で、ビジネスイベントはこの10年20年、何も変わっていないのではという感覚を強く持っていました。もっと変われるのでは、変わるべきなのではないか、と。その思いが、前述のミッションに重なり、イベント領域でイノベーションを起こそうと2019年から本格的に取り組みを始めました。効率的な運用を実現し、出会いをよりリッチにしていくことを志向しています。その中でコロナ禍に突入し、BtoBイベントのオンライン化が一気に進んだという経緯です。