※本記事は、2021年1月25日刊行の定期誌『MarkeZine』61号に掲載したものです。
薄利多売のフードデリバリー 特需期でも赤字解消できず
巣ごもり特需で盛り上がる「フードデリバリー(宅配)」市場。米ニューヨークに勤務する若手なら誰しもが使っている「DoorDash」、ドイツ発の「foodpanda」、フィンランド発の「Wolt」など、多数のサービスが登場している。外出自粛が続く日本でも、「UberEats」「出前館」「LINEデリマ」といったサービスが競う。
生活者側の利用が広がるフードデリバリー市場だが、既に過当競争に突入し、バブル前兆の気配さえ感じる。米国市場に2020年12月に上場を果たした「DoorDash」が公開している数字から、その未来を紐解く。
「DoorDash」がIPO時に公開した2020年1月〜9月の合計受注額は約1.6兆円(164.9億ドル)に達し、2020年末には2兆円台が予想され、昨年比で3倍の成長が見込まれている。しかし営業利益を見るとこの特需でも赤字が解消できず、創業以来キャッシュの赤字が継続している(本年9月末までで約130億円の赤字)。フードデリバリーは「その事業の向こう側」が見えないまま、トンネルの中で顧客を拡大している状態だ。
米国の「DoorDash」だけでなく、日本でのフードデリバリー産業や宅配チャネルの請負事業にも共通しているのが「スケール化させれば、いつか回収できるだろう」という期待を軸にしたモデルである。この特需期でさえ黒字転換できない事業の未来はどこにあるだろうか。