コンテンツ制作力×デジタル・アナログで事業を創造
――はじめに、Project8(集英社子会社)の中谷さん、集英社の石塚さんにおうかがいします。まずは手掛けられている事業について教えてください。
中谷:集英社のブランド事業部とProject8では、女性誌ブランドの事業領域を広げるべく、デジタル・アナログ横断で、これまで培ってきたコンテンツ制作力を活かしたビジネスを展開しています。
石塚:たとえば2007年にオープンした公式通販サイト「HAPPY PLUS STORE」は、集英社のファッション誌発の商品をネットで購入できます。目指しているのは「雑誌で紹介されている商品が、そのまま買える」という世界観。ファッション誌と連動したECサイトとして、リッチなコンテンツで商品の魅力を伝えることを大切にしてきました。
中谷:近年では、これまで展開してきた圧着式はがきやカタログに加え、メルマガの企画にも力を入れています。雑誌クオリティのデジタルコンテンツ企画や、MAツールを使ったメルマガのパーソナライズ配信にも挑戦しているところです。
――続いて、今回の実証実験の目的をお聞かせください。
中谷:紙とデジタル、それぞれのチャネルにおいて、コンテンツがどのように作用しているのかを知ることが目的です。私たちは単に多チャネルでコンテンツを展開すればそれで良い、ということではなく「お客さまの目線で意味のある体験を設計するには、どうすれば良いのか」「私たちの強みである編集力をどのように活かすか」に関心をもってきました。
また、雑誌制作における“暗黙知”について解明したいと考えていました。当社には雑誌制作のノウハウとして、たとえば「1ページあたりの掲載商品点数は何点までにすべき」といった経験に基づくルールがありますが、こうしたルールは果たして本当に正しいのか、根拠を知りたいと思っていたのです。
4つのパターンを用意し調査
――ここからは、今回の実験を設計・実施された上智大学の外川先生、東京国際大学の平木先生にも加わっていただきます。実験の概要について、ご説明いただけますでしょうか。
外川:今回の実験では「HAPPY PLUS STORE」の会員に、紙もしくはEメールのカタログどちらかを送付し、ランディングページ(以下、LP)へのアクセス、そして購買の2つのプロセスに至る行動と意識を調べました。
中谷:使用したのは「NAIL BOOK」というカタログです。人気のネイルブランド「NAILS INC」の様々なカラーを紹介するもので、豊富なカラーバリエーションを伝え、実際に塗ったときのイメージが浮かぶようなクリエイティブにしています。紙のものは冊子状になっています。
また今回は掲載する商品数による違いも確認したかったため、ネイルカラーを8色掲載したバージョンと、16色掲載したバージョンの2種類を用意しました。
外川:会員にはこの4種類のカタログのうち、いずれかが届く仕組みになっています。
送付するカタログのパターン
8色バージョン × 紙のカタログ
8色バージョン × デジタルのカタログ
16色バージョン × 紙のカタログ
16色バージョン × デジタルのカタログ
外川:続いて、会員の行動を追跡調査するにあたっては、(1)カタログを受け取ってから(2)LPへアクセスし、(3)購買に至るまでの3段階のプロセスを、Google Analyticsでウォッチしました。一方、意識データについては、購買者、非購買者の両方を含む1,047名にアンケートを実施しました。